第33話 ハム議員①
シュームの中心地に立っている塔。名はビシャス塔という。
この国一高い建物であり、国が総力をかけて作り上げた代物だ。総事業費はこの国の年間予算の半分にも達したのではないかと言われるぐらいだ。さて、金の話はどうでもいいとして俺達がここに来たのには実は理由がある。それは、
「これはこれはギン二級魔術師殿。久しぶりでございます」
「いや、久しぶりだな。ハム議員」
「あなたはいつもため口を聞いて………。まあ、いいです。あなたにいくら言ったところで変えることはないと思うので諦めますが一応の警告です」
俺が毎度のようにため口で話すのでハム議員は一応は警告というか注意をしてくるのだが半ばあきらめている。
さて、俺達がここに来たのは偶然でもあったがこの塔に来ることになったのはこのハム議員の呼び出しが関わっている。
ハム=レンル議員。
年は30代半ばというか35でありなかなかのイケメンともいえる外見を持つ。身長は高くはなくむしろ小さいと言われる部類である。痩せていることがその印象をさらにデカくする。
さてこの人ではあるがこれでも一応は、この国ユニバール魔法王国の国王に続く最高意志決定機関通称『魔法大議会』を構成する47人の議員の1人だ。この『魔法大議会』は結構大きな組織であり、時には国王や7人の大臣といった政府の最高行政機関以上の力を持つことがある。ちなみに大臣などは国王が直接任命するが『魔法大議会』の議員は一応は各都市の有力者による選挙で選ばれている。
ハム議員は俺の家がある町エイジア選出の議員であり父のキンとは同い年で元同級生などといった関係から俺とも結構古い交友関係がある。議員は力が絶大なので征伐局などといった政府機関に対する影響力も絶大だ。俺の依頼の中には明らかに議員の力によって意図的に選ばれたというものも交じっている。さてこの絶大な影響力が今回俺が呼ばれた原因である。
「それで、ハム議員は何の用ですか?」
俺は、どうせいつも通り政治に関するいざこざだと思って質問した。
「今回は政治とは関係ないですよ。私としても政敵を倒すためだけに魔術師を使いたくはない。それでは今回の依頼といきたいところだが、その前に1つこちらからも質問があります」
質問? 俺には質問されるようなことなどはない。俺は黙って何を質問してくるか待っていた。そして、ハム議員は重い口を開いた。
「ギンの後ろにいる2人の女の子は誰なのか教えてくれますか?」
ガタッ。俺は転びそうになった。重い口を開いたところまでは良かったが質問してきたことはピーチェとレイのことだった。しかも、ただ正体不明の女の子の身分が気になっただけならいいがハムはエロい顔をしている。ただのエロ親父だ。35という年なのに残念なことだ。ちなみにセリフのようにまだ独身で女子に飢えている。だから女子を見かけるとすぐに話しかけてしまうとか何とか言われる。
ゴツン。つい、お偉いさんだっていうことを忘れて殴ってしまった。まあ、知り合いなのだが。
「痛いですよ! これでも私は議員なんですから」
35の人が言うには説得力のない口調であった。本当に残念だ。俺は一応、旅の途中で出会ったことを簡潔に伝えておいた。ハム議員はそれを聞くとセクハラまがいのことをしたが2人に完全に殴る叩かれるなど拒絶されてしまった。
そんなことはどうでもいい。早く依頼の内容が聞きたかった。
「早く、今回の依頼は何なのか言ってくれないか?」
俺は尋ねる。いい加減に早くしないとこの町を探索することができな──じゃなくて時間を無駄にしてしまう。
「わかりましたよ。ちなみに2人のことを聞いたのも案外関わりがありますので」
その言葉を聞くとピーチェとレイの2人は反応した。
「これからする依頼が危険だったときはきちんと2人を守ってくださいね」
ハム議員は俺に対して言う。俺はこくんと頷いておく。俺の肯定にたいして満足が行ったのかどうかは分からないがようやく本題に入ってくれた。
「この町シュームの地下には商人たちの利益すらも奪おうとする闇商人たちによる秘密の基地があると言われているのです。ギン殿にはこの秘密の基地を壊して、闇商人を全員捕えてもらいたいのです。なかには危険な人もいるとのことなので十分に気をつけてください」
ようは闇商人を捕えろということか。しかも、アジトを壊していいとのこと。俺にとって満足のいくものだった。最近、物を壊していなかったので衝動を抑えていたところだ。物を壊すのが俺の悪い意味での欲なのかもしれない。最悪だとわかって求められないものだ。それに、ハム議員は俺を理解しているからあえてこの依頼を持ち込んだに違いない。
俺は、すんなり受け入れた。
ハム議員は長居をできないということなので会話が終わるとすぐさま帰りの支度をして帰って行った。
「さて、ピーチェとレイはどうする?」
俺の依頼だ。迷惑をかけるわけにはいかない。なるべく危険な目に合わせないようにすることが一番大切なことだ。
「私はギンさんについていきます」
ピーチェは恐れずにそう言ってくる。
「わ、私もです」
レイも同意してきた。俺にはどんなにとめても無駄だと思ったので了承しておく。ただし、自分の身を守ることだけを考えてくれと俺からのお願いも告げておいた。
さあ、闇商人を逮捕するためには情報でも集めないと。
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