第139話本丸政務殿突入

 アレクサンダー王子は、パトリック、マーティン、ロジャーを伴って、本丸内にある政務殿に突入した。

 本丸内に入っても敵はいなかったが、最重要拠点と言える政務殿にも、最初は敵の姿はなかった。

 だがそこには、ターンアンデットのよって無力化されたアンデットが、死屍累々と転がっていた。

 その為、政務殿の中は見るも無残な状況で、悪臭も酷かった。

 アレクサンダー王子達は独自空間を創り上げているので、何の問題もなかった。

「敵がいる」

「「「は」」」

 普段ならパトリック達が気付くまで放っているのだが、今回は非常時なので、遠くにいる敵の反応を教えた。

 相手は過去最強と思われる魔族だ。

 アレクサンダー王子が気付いていて、パトリック達が気付かないケースも考えられるが、パトリック達が気付くことを、アレクサンダー王子が気付かないこともある。

「業火圧縮連弾」

「警戒」

 アレクサンダー王子は、戦略級の大規模火炎魔法を小石位に圧縮強化した魔法を、百創りだして放った。

 普通なら、敵に魔法の内容や魔法を使う事自体を悟られないように、無詠唱で魔法を使う。

 だが今回は、敵に悟られる心配がないくらい遠方の攻撃だ。

 それに、パトリック達に何の魔法を使うかと、何時攻撃をするかを知らせなければいけない。

 同士討ちなど絶対起こすわけにはいかない。

「反応消失」

「警戒継続」

 百創り出した業火圧縮連弾の内、二十三が敵を捉えた。

 普通の魔法なら、敵を斃すと同時に消失する事が多い。

 だが戦略級の魔力を圧縮した火炎弾は、今回の敵程度を焼いたくらいでは消失しなかった。

 元の魔力を完全に残したままの七十七の魔力弾と、ほんの少し魔力を消費した魔力弾が、アレクサンダー王子達の前方を警戒するように進んでいた。

 それでもパトリックは警戒を緩めることなく、いざと成ったらアレクサンダー王子の盾になるべく、マーティンとロジャーに厳しく指示を飛ばす。

「敵発見」

「警戒」

「敵は王都騎士を操っている」

「「「は」」」

 国王陛下がいるであろう、玉座の間と王の私室に向かうアレクサンダー王子は、またしても敵を遠方にいる状態で発見し、パトリック達にその事実を伝えた。

 伝えると同時に、百の業火圧縮連弾を敵に向かわせた。

 更に今度は、敵の詳しい状況も伝えた。

 自分達が斃さなければいけない相手が、魔族に憑依されているか操られている、本来は味方であるはずの王都騎士だと言う事を。

 パトリック、マーティン、ロジャーの三人は、動揺することなくその事を受け止めた。

 その時には、五十三人の王都騎士がアレクサンダー王子の業火圧縮連弾で焼失させられていた。

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