第62話出発
「しかし爺、人員はどうするのだ?」
「没落した貴族家士族家から、多くの卒族や家人が召し放たれます」
「しかしあのような家に仕えていた者など、心から信頼する事は出来ないぞ」
「その通りではございますが、今回は目をつぶって陣借りさせましょう」
「なるほど、陣借りなら正式に召し抱えたわけではないから、万が一の時にも余が処分される恐れはないな」
「はい。主家に忠義を尽くそうと、殿下の足を引っ張るために、わざと罪を犯す者が出てくるかもしれません」
「そのような卑劣な手段をとらず、正々堂々と決闘を申し込んでくれたら、何時でも受けるのだが」
「皆が皆、殿下のような武勇の達人ではございません。武ではなく、知略で戦おうとする者も出てくるかもしれません」
「だが爺の言う方法は、知略と言うより謀略であろう」
「確かに」
「殿下、ウィンギス男爵、アンドルー王子に付けられていた者はどうなるのでしょうか?」
「賄賂を受け取っていなかった者の事を言っているのだな?」
「はい」
「友人でもいるのか?」
「遠縁の部屋住みが、ようやく仕官が叶って喜んでおりましたので」
ロジャーが親戚を心配している。
「当人が望むなら、余が団長に任命され新たに創設するボニオン騎士団や、ドラゴン騎士団の一部を基幹に新設される、サウスボニオン騎士団に配属されるだろう」
「当人が望むならと言う事ですね」
「そうだ。今回のような状況では、なかなか余の新設する騎士団の応募出来ないだろう」
「確かにその通りですね」
そうなのだ。
正妃殿下が望んでおられた、アンドルー王子のボニオン公爵継承は不可能になった。
それどころか、アンドルー王子は大きな汚点を残して謹慎することになった。
同時に新たなボニオン公爵家を形成する為に集められた家臣団は、召し放ちと言う事になった。
これは仕方がないだろう。
新生公爵家の重臣を務めるはずだった者が、全員賄賂を受け取り処刑になったのだから。
「だが父王陛下も正妃殿下も、一度アンドルー王子の家臣となったものが、召し放たれて路頭に迷い、罪を犯すことは望んでおられないだろう」
「そうだぞ。その者達が貧に耐えかねて罪を犯せば、アンドルー王子の評判は更に悪くなるからな」
「では、当人が望んだらサウスボニオン騎士団に仕官できると?」
「厳しい試験になるだろうが」
「厳しくなりますか?」
「ドラゴン騎士団の基準だからな」
「そうですね」
「何なら余の騎士団に応募すればいい」
「宜しいのですか?」
「当人がよければ構わん。爺が言うように、今は一騎一兵でも多くの戦力が欲しい」
「はい」
余は父王陛下から任じられた、ボニオン騎士団長としての責任を果たすべき、再びボニオン領へ出発した。
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