第41話ボニオン公爵家騎士団1

「今度の騎士達は多少ましなようだな」

「はい。魔境の外に領民兵を残しましたから、魔境の怖さを理解しているのでしょう」

 早朝から魔境の外縁部で見張りをしていると、ボニオン公爵家の騎士団と思われる軍勢がやってきた。

 正式な騎士の装備を整えている者が十騎に、見習いの装備を整えている者が十騎。

 それとそれぞれの騎士が指揮する領民軍が五十前後の総計五百前後の軍勢だった。

 最初は五百人で魔境の中に入って来るのかと思ったのだが、騎士長らしい指揮官の命令を受けて、騎士一人と見習い騎士十人が残り、破壊され放置されていた代官所と冒険者ギルドの再建を行おうとしていた。

 確かにろくに戦えない領民兵などを魔境に入れれば、魔獣に襲撃されたときにパニックになるのは必定で、そうなれば騎士の実力を発揮できない。

 騎士長はフルフェイスの兜を装備しているので、顔を確認出来ないから年齢も想像するしかないが、アーマープレートから放たれる気配からは、歴戦の戦士だと思われる。

 恐らく魔獣との戦闘も考慮した威力偵察なのだろう。

 騎士長を先頭に、威風堂々と表現できるほどの武威を放ちながら、ゆっくりと馬を歩ませ、魔境の中に入ってきた。

「魔獣をけしかけないのですか?」

「公爵家騎士団の実力が知りたいので、奥まで引きずり込む」

「分かりましたが、準備だけはさせて下さい」

「分かった。準備はパトリックとロジャーに任せる」

「「は!」」

 余の返事を聞いて、パトリックとロジャーが魔境の奥に消えていった。

 やれやれ、昨日と同じ規模の魔獣を集めてきたら、どれほど鍛え上げた騎士であろうと、ろくな抵抗も出来ずに喰い殺されてしまうだろう。

 先頭を進みボニオン公爵家の騎士長には、時折魔獣や魔蟲が襲い掛かるものの、見事な槍裁きで斃している。

 二番目三番目を進む騎士が、無言で騎士長が斃した魔獣や魔蟲を回収しているから、この一連の行動は普段から行われている基本行動なのだろう。

 今も全長一メートルを超える銀級のポイズンスパイダーが樹上から襲い掛かったが、素早く槍を振り回して一刀両断している。

だが、そろそろ彼らのレベルを超える魔獣が狙い始めている。

騎士長ならば互角以上に戦えるのだろうが、後方の騎士だと少々厳しい。

気配を消して樹上に待機した白金級のブラッディポイズンスパイダーが、最後方九番目の騎士に狙いを定めているようだ。

 気配を消すのが得意な魔蟲の中でも、特に隠密性に優れた蜘蛛種の魔蟲が、騎士の隊列の中で一番弱い所を狙って襲い掛かってきた!

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