第35話領主館2

 次の領主館にたどり着くまでに、三つの村を通過することになった。

 村人に死傷者を出さないようにしたが、一番大きな家は完全に破壊した。

 村全体の非常食を備蓄していたら可哀想だが、余も公爵家に脅威や恐怖を与えなければならないので、仕方なくやってのけた。

 三つの村の三つの家を破壊し、全ての村人に十分恐怖を与えた後で、領主館を完膚なきまで破壊した。

 この領主館も一つ目の領主館と同じ構造なのだが、少しは領主が健全なのか、それとも日が暮れたからなのか、濠と土塁に設けられた門が堅く閉められていた。

 だがこの門も魔境から切り出してきた材木で造られているので、ブラッディベアーの強烈な前脚の攻撃に耐えられる強度はなかった。

 一撃で轟音と共に周囲の石材ごと門は粉砕された!

 その音を聞いて、領主館二階の門の番をしていた下僕が目を覚ましたのだろう。

 覗き窓を少し押し上げて外の様子を探っている。

 このままブラッディベアーに攻撃させたら、下僕が門と一緒に粉砕されるかもしれない。

 一瞬躊躇したものの、そのまま攻撃させることにした。

 直ぐにブラッディベアーの一撃で二階の門が周りの木材ごと粉砕され、血しぶきをあげながら下僕が飛ばされるのが目に入ってきた。

 飛ばされる下僕の顔が粉砕され、絶命している事が一目瞭然だった。

 余の決断が一人の人間を殺すことになった。

 あの下僕は善良な人間だったかもしれない。

 今更取り返すことなどできないが、これほどあっけなく命が失われてしまう。

 本当にこれでよかったのだろうか?

 だがもう後戻りできない。

 公爵家の謀叛を抑え、国内外の被害を最小にすると決断した以上、多少の犠牲は仕方がない。

 余は全知全能ではないのだ。

 姿も気配も匂いさえ隠し、爺と共にブラッディベアーの後に続くと、村娘達だろう若い女達を嬲る若い男達がホールにいた。

 ホールには娘が八人に卒族風の男が六人。

 ダイスの上には領主だろう中年男一人に娘が二人。

 都合十人の娘は、全裸の身体に幾筋もの鞭の痕が残っている!

 下僕を殺したことを反省する必要などない。

 このような所業に加担しているなど、例えどのような訳があっても許されることではない。

 ブラッディベアーの攻撃に娘達が巻き込まれないように、防御魔法で護るとともに風魔法でブラッディベアーの進路からどかせる。

 ブラッディベアーの前脚が振るわれるたびに、卒族風の男が一人二人と真っ赤な襤褸雑巾のように切り刻まれ死んでいく。

 悪行を行った領主に報いを与えるために、先に六人の卒族風の男を殺し尽くす。

 十分な恐怖を与え罰すると同時に、領主が剣を抜く時間を与える心算だったのだが、情けなくも大小便を漏らした領主はただただ震えているだけだった。

 何の抵抗もせず、腰が抜けて逃げる事も出来なかった領主は、ブラッディベアーの一撃で家臣達と同じように肉片と成り果てた。

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