第2話 招かざるお客様。

コンコンコン。


来客を告げる音がし、はいはーい、と小走りに玄関へと向かったリリアは、勢いよく開けた扉を、勢いよく閉めた。


いや、閉めたつもりだったが、閉めるより先にするりと滑り込んだ人物がいた。



「いやあ、探しましたよ、カロリーナさん! 突然いなくなっちゃうんですもん。カロリーナさんに限ってと思いつつも心配したんですよー」

おじゃましまーす、なんて言いながら勝手に上がり込もうとする元同僚に、慌てて待ったをかける。

「ちょ、何勝手に上がろうとしてんのよ! というか、なんでここが…!?」

「だからー探したって言ったじゃないですかー。もう人海戦術ですよー。仲間内はもちろん使い魔やら魔物達まで総動員です」

それでも10年も見つからなかったんですから、正直諦めかけてたんですけどねー、と続ける来訪者に諦めてくれたらよかったのに、と内心毒づきながら改めて来訪者に向き直った。これだけは、これだけは言っておかないといけない。

「私が元勇者だって事は、旦那も子どもも知らないから! ぜーーーーーーったい言うなよ? 内緒にすると約束するなら、入れてやる」

「イエス、サー!」

わかってるんだかわかってないんだかよくわからない適当な返事を返してきた来訪者はさっさと家の中に上がり込んだ。リリアも慌てて後を追う。


「ママ、このおじちゃん誰?」

突然入って来た見知らぬ男性に子どもは驚いて母親を見た。

「おじちゃんじゃないですよーお兄さんですよー、こんにちわー」

「あ、あのね! ママが昔一緒に働いてた人なんだー。ちょっとママこのおじちゃんとお話あるから、いい子で遊んで待っててねー?」

「はーい!」

こどものおもちゃとおやつや飲み物、ついでに自分と招かざる客の分の飲み物を手早く用意し、おやつここ置いとくねー、子どもに声をかけると、来訪者を促し客間へと足を向けた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る