ボクはキタキツネ
もう
月が半分海から上がっている。
そこにたどり着くまで時間はそうかからなかった。
雪は、崖を境にして降っている。
エリアの境だった。
崖の下の砂浜では、カサカサと船虫が動き回る音が聞こえてくる。
部屋には何も残してこなかった。
すうっと空気を吸い込むと、少しベタついたような潮の香りが鼻をつく。
空の雲を見やった。
やけに今日は低い空だった。
雲はまばらに散っていって、2度と同じ形に戻ることはないのだろう。
目を閉じて思い浮かべた。
ボクが壊しちゃったんだ。
もっとしゃんとしていれば…
少なくともみんなが傷つくことはなかった––
崖に立ち、風を感じる。
気持ちの良い冷たい空気が体の輪郭を知らせてくれている。
このまま跳べば、自由になれるはず。
「はぁ、はぁ、きっつ…キタキツネ…?」
キタキツネがゆっくりと崖で手を広げる。
「キタキツ…えっ?嘘だろ?」
キタキツネはゆっくり深呼吸する。
バクンと心臓が泡立ち、全身の毛穴がビリビリと逆立っていく。
とっさに走り出した。
「おい!キタキツネ!キタ…キタキツネぇっ!!」
彼女は足をスッと前に出して…
ふっ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます