第5話 上司からお見合いの話があった!

奈菜とのお見合いから1か月ほど経っていた。また、お見合いの話があった。こんなことは続くものなのかもしれない。そういう年齢に達していることなのか? めぐり合わせだとしたら、もう成り行きに任せてみようという気になった。


上司の小山部長からの話だった。会議室に呼ばれた。何の話だろうと行ってみると、始めに付き合っている人がいないか尋ねられた。今はいないと答えると、お見合いの話を始めた。


奥さんの付き合いがあって、会社に適当な人物がいれば紹介してほしいと頼まれているそうだ。ここに写真と履歴書があるので、見るだけでもいいから見てもらって、良ければお見合いをしてみないかと言われた。


部長からの話なので、お見合いをすると断るのが面倒だと思って、写真や履歴書も見ないで、今は結婚する気がないと丁寧にお断りした。


「家内から私の顔を立ててほしいと頼まれている。植田君も結婚してもおかしくない歳だろう。付き合っている人がいないならどうかな、なんとか見合いだけでもしてくれないか? むろん私や家内に義理立てする必要は全くないから、断ってもかまわない。どうかな」


そこまで言われると、これ以上断り続けて部長の機嫌を損ねるのもどうかと思った。


「分かりました。お受けします。ご期待に沿えるかどうか分かりませんが」


「結婚は本人同士の気持ち次第だから」


「そう言っていただけると気が楽です」


「それで、ご両親のどちらかにでも同席してもらえると格好がつくのだが」


「ちょっと実家とは距離があるので無理です。兄なら近くに住んでいるので兄でもよろしいですか?」


「お兄さんは結婚していられるのか?」


「3年前に結婚して子供もいます」


「それなら、お願いできないかな。その方が良いから」


確かに兄貴に同席してもらえば、部長の奥様の顔も立つだろう。僕一人で見合いに臨むよりもよっぽど体裁が良い。


兄に見合いの同席の可否を聞いてみると、僕が結婚もしないで独身でいるので心配していたとのことで、喜んで同席を承諾してくれた。


相手の履歴書と写真を渡された。プロが撮った見合い写真だった。目を見張るほどの美人ではなかったが、清楚で気品のある顔立ちだ。人によってはすごい美人だと思うに違いない。


名前は飯塚いいづか奈緒なお、28歳。東京の有名女子大を卒業している。勤務先は金融機関。趣味は料理、読書、旅行といたってありきたりだ。両親と弟の4人家族。


部長から履歴書と写真がほしいと言われたので、すぐにパソコンに作ってあった履歴書をプリントアウトして渡した。それから写真を探した。同窓会の時の写真がメールで送られてきていたのを思い出して、その中からトリミングして作った。なんとか見られる写真はできたが、実際の僕とは相当かけ離れている。実物の方がずっと良いと思う。


お見合いの日時は来週の土曜日の午後2時から、部長のご自宅でということになった。

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