第130話 話しは飛ぶが、齢九二歳の昭和の昔話……。(32)

「そうか?」


「そうだ」


「ふぅ~ん、そうなんだな……」


「ああ~。そうだ……。だから儂等の若い頃は、自分達の女を守らんといかん! いかんのだ! だから自分の彼女や妻、子供達が買い物。売り場で商品を見定め、触り、触れながら選んでいる時も常に離れず。守るように付き添っていたものだ。でも今の若い者達は直ぐに己の大事な女性(もの)や大事な妻、子(もの)達を直ぐに放置して先々行ってしまう。何か起きる。起きたら大変な事になるのに……」


 まあ、隣の御老体はこんな様子だよ。自分自身の若い頃。大東亜戦争時と戦後直ぐの頃の昔話しを家のおじさんへと、己の愚痴でも漏らすように激闘の時代と呼ばれた昭和の昔話しを聞かせてくれる。


 それを家のおじさんが『うんうん』と頷きながら、隣の御老体の愚痴のような話しを聞いてやるといった様子だった。


「う~ん、確かにおじさんの言う通りかも知れんが。今の令和の時代が、本当に世が平和で安定をしているから致し方がない。特に今の日本は大変に治安が良いからな。家族も各自が好きな売り場にいって商品を見定め購入するのは致し方がない。ないと思うぞ。儂は……。それに? その方が『早くしろ~』と、夫婦間で不快感を募らせ口論、言い争いにならんでいいしな……」と。


 家のおじさんは、苦笑いをしながら隣の御老体へと今の令和の時代が平和だから致し方がない。


 だから他人のことを気にする必要もないと告げる。

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