第206話 魔道具店にて
──それは、二日前の出来事。
本来、
……その
そして店の扉を開いた先にて、いかにも凶暴そうな魔獣や魔蟲の素材を弄っていた……鮮やかな紺の色打掛を着こなし、同じ色のもふもふの九本の尻尾が特徴的な
「──私に、
換気の為か開かれた窓から聞こえてくる住民たちの賑やかな声が気にならなくなる程、集中してリエナの話を聞いていたアドライトが、おずおずと尋ねるも。
「あぁ、あんたに受けてほしいんだ。 大した実力も無い癖に威張ってる様な奴らには任せられないしねぇ」
当のリエナは
尤も、仮にこの場に彼女の言う連中がいたとしてもリエナは特に言い憚る様な事はしないだろう。
……それが許されるだけの力を持っているからだ。
アドライト自身も充分に彼女の力の強大さは理解しているし、そうでなくとも彼女の事を心から尊敬してはいるのだが……まぁ、それはそれとして。
「……そう言わないであげてほしいな。 貴女から見れば私も含め有象無象にしか映らないのだろうけど、あれでも皆……自分たちなりに頑張って──」
リエナという強者を尊敬する一人の
「──あの時の二人も?」
「あの時? ……あぁ、いやあれは……違うだろう」
しかし、そんな彼女の言葉はリエナの一言で遮られてしまい、『何の事やら』と首をかしげたアドライトはだったが、一瞬でリエナが言いたい事を察し、痛いところを突かれた……とはならず、それを否定する。
それもその筈、彼女たちの共通認識である『あの時の二人』とは……かつてドルーカを訪れ、召喚勇者一行、特に望子に対して因縁をつけた事で返り討ちに遭っただけでは飽き足らず決闘まで申し込み、無様に敗北を喫した男女一組の冒険者の事だったからだ。
ちなみに、二人は既に冒険者の
だが瞬間的にとはいえ、その二人がドルーカで活動せんとしていたのは揺るぎない事実であり、若干だが狼狽する様子を見せていたアドライトに対してリエナが『冗談だよ』と口にしながら、くつくつと喉を鳴らして笑ってみせた事によりアドライトはホッと安堵の息をついたが……それも無理はないだろう。
彼女の目の前にいる扇情的な風体の、一見すると長年その道に身を置いている娼婦の様にも思える
……この世界にて最初に発生した魔族との戦いの時から唯一、この時まで生き残っていると聞いた──。
──
紛れもない、最強の冒険者の一人だったのだから。
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