第26話*レーザービーム

 王が言葉を発すると王を中心に大量の黒煙が発生し外行達を包み込む。



「うわっ」



 外行は黒煙を浴び瞳を閉じる。そして、ゆっくりとその瞳を開けると、そこは闇の世界とかしていた。先ほどまで煌々と輝いていた太陽は黒煙に遮られ、草と土の大地は黒く染まっている。



「これは」


「スキルか?」



 状況を理解しようとしている外行と真のもとに、恵たちがも合流する。



「どういう状況?」


「突然ゾンビどもが消えたが」


「あそこに立っている王様がすべてを吸収したようだ」



 真が自身が把握している状況を知らせて骸骨の鎧を身に纏う王を見た。



「うわぁ、まさに屍の王って感じね」



 愛が顔を引きつらせながら言う。



「真。どう?」


「まるで感情がないのか、心が読めない」


「それは手ごわそうね」



 真と恵が会話していると、王が動きを見せる。


 王はその手を外行達のいる方向へと向ける。そして、その手に黒煙が集まる。それに危険を感じた全員は言葉を交わすことなく回避行動をとる。



死の風デスウィンド



 外行達が交わした直ぐ後に黒煙が風と共に先ほどまでたっていた場所を襲う。そして、そこには死が訪れていた。


 草は枯れ落ち、大地には水分が消え砂漠化している。



「あいつの攻撃は喰らったら終わりだな」



 雹が王の攻撃を見て言葉を発した。



「なら、出す暇を与えずに倒すしかないんじゃないの」



 雹の言葉を受け、愛が提案を出す。



「おーけー、それのった。氷弾乱射アイス・ガトリング



 愛の提案を受け、雹は魔法で無数の氷でできた弾を作り出し、王に向かって打ち始める。そして、それを合図とするかのように、愛も続く。



幾千本矢インフィニティ・アロー



 魔法の弓からは、次々と無数の矢が放たれ王へと向かう。



死の球体デスバリア



 氷の弾と、無数の矢は王が言葉を発すると、黒い球体が出現し、その球体の中に二人の魔法が入ると、氷は一瞬にしてその姿を無くし、矢は灰となって消える。


 その様子を見た外行は真に質問する。



「どうすればいい?」


「そうだな。正直この状況を打開できるとすれば、遠距離であの球体の中にいる王を狙うしかないだろう。近づく賭けに出るのはバカのすることだ」


「真さんはできる?」


「俺の魔法は精神魔法だ。心がない敵にはお手上げさ。君の光魔法は遠距離は無理なのかい?」


「残念ながら、まだ飛ばせたことはないんだ」


「さっきの闇魔法は?」


「えっ?」


「さっき、王に放ったやつだ。あれならきっとあの球体内でも消滅しない」


「わかった。やって見る」



 外行はそういうと、魔法を発動しようとする。



「......。はぁ、ごめんなさい。出ない」


「そうか。雹と愛の魔力が尽きることはないと思いたいが、この空間がどういう場所なのかが気がかりだ」



 真、恵、透、雹、愛。この先輩転移者パーティは皆が、職業に勇者を与えられている。そして、勇者の使う魔法は本来の魔法行使とは違う。


 本来の魔法行使には体内にある魔力を消費して魔法を発動する。そのため、魔力の蓄積量により魔法の威力や持続性が変わっていく。


 一方、勇者の魔法は体内から魔力を使うこともできるが、基本的にはこの世界の空気に混ざっている魔力。通称魔素を用いて、魔法を発動するため、時間さえかければ無限に威力を増すことも、永久に魔法を使い続けることもできるが、そう簡単にもいかず、精神力によるものなのか、他の影響なのかはわからないが、同じ勇者であっても、力の差が存在している。


 話がそれたが、真がこの場において懸念しているのは、王が作り上げた暗闇の中で果たして空気中に含まれる魔素を永久に使うことができるのか、ということであった。



「おい、少年」



 真と外行が悩んでいると、後ろから声を掛けられ、振り向くと透と恵が立っていた。



「どれくらい強い光を出せる?」


「?」


「光だけでいけるのか?」


「やって見る価値はある」



 真と透の会話を外行が理解できないでいると、真が説明をする。



「少年。透の魔法は光と熱を操る魔法だ」


「つまり?」


「やろうとしてるのは、言うなればソーラービームだ。イメージできるか?ソーラービーム」


「うん。できるよ。太陽くらいの光なら出せるとは思うけど」


「よしならやろうか」



 作戦が決まると、外行は強烈な光を作り出す。



発光ライト


集束フォーカス



 透は外行の作り出す光を集め始める。



「恵。この空間内の魔素は問題なさそうか?」


「緊張させたくないから、あの二人には言ってないけど、ものすごい勢いで薄まってる。正直、あの魔法を一発撃ったら魔素が切れるかも」


「因みにもう魔法は試したんだよな?」


「当たり前でしょ。でもだめ、酸素を消したはずだけど、苦しむ様子はなし。そもそも、魔法なのかも怪しいわね。あの力」


「そうか」



 真は恵の言葉を受け、作戦の成功をただ願った。





「光?」



 王は無数の矢と氷の銃弾を防いぎ、空間内の魔素が切れるのをただ待っていると、光を発生させている外行を見つける。



「何をするつもりかは知らないが、あれを防げば私の勝ちだな」



 王は外行達の行動を見て不敵に笑った。





「オーケー。これだけ溜まれば行けるはず。よく頑張った少年」



 透がそういうと、先ほどまで光を出していた外行は倒れこむ。



「お願いします」


「任せとけ。いくぜ。破壊光線レーザービーム



 透が魔法を唱え、集束された光を一気に王に対して放つ。その光は一瞬にして王の元まで達すると一瞬の間が起きる。


 次の瞬間、巨大な爆発が巻き起こる。







【勇者である天道恵のスキルは以下です】


 ・大気の勇者

  大気を操る特殊魔法を習得し、使用の際に詠唱が入らず、周囲の魔素を用いて魔法を無限の魔力で行使できる。



【勇者である大空透のスキルは以下です】


 ・太陽の勇者

  光と熱を操る特殊魔法を習得し、使用の際に詠唱が入らず、周囲の魔素を用いて魔法を無限の魔力で行使できる。

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