其の漆 「気を付けろ」{怖}

今年の7月に体験した話。

僕は家から高校まで距離があるので電車で通っている。


その日は部活の大会が近く、帰りが少し遅かった。

親子連れやサラリーマン、高校生などのいる車内に

「次はー00ー、00ー……」

とお馴染みのアナウンス。


減速感を感じつつ、扉に近づき、開くと同時に降りる。

ホームの階段に向かって歩いているとドンッと誰かにぶつかり、ゴトンッと重い物が床に落ちた音がした。


「あ、すいません」

思わず振り向き、謝る。


すると、中年の男性に鬼のような形相で睨まれ、

「夜道に気を付けろよ、てめえ」

と憎々しげに言うと、ぶつかった時に落としたであろう木の箱を拾い、大事そうに抱えて電車に乗っていった。


去っていく一瞬の間に男性とは違うとても高い声で

「気を付けろよ」 と言うのが聞こえた。


何時の間にか周りには誰も居なくなっていた。

その日は親に車で迎えに来てもらい、

今も帰りは、毎日迎えに来てもらっている。

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