第28話

 学生生活を終えた終えた俺は、その後なにも起きない平凡な生活を送っていた。

 同窓会。

 クラス会。

 その日が来るまでは……

 俺は同窓会に向かうと見知らぬ男女たちに囲われていた。

 いや知っている人なんだけど、もうすっかり他人だ。

 見知った顔が、あんまりいない。

 こうなると同窓会って言ってもなんだか寂しいものだね。

 俺は、そう思ってコーラーを口に運ぶ。


「お前は、酒が飲めないのか?」


 聞き覚えのある声が、俺の耳に届く。

 それと同時に女の子の黄色い声援も響く。


「この声、恋次君?」


 俺が振り向くとそこには、すっかり大人になった恋次君がいた。


「ああ。

 久しぶりだな」


「うん。

 恋次君、すっかり大人だね」


「一、お前は少し太ったな」


「すっかりおじさんだよ」


「まだまだ若いだろう?

 俺たち」


「そっかな?」


「そうよぉー

 はじめぇー、貴方まだ童貞なんじゃないのぉ?」


 そう言ってきれいな女の人が現れる。

 でも、残念ながら泥酔している。


「もしかしてコレ、遥ちゃん?」


「ああ、そうだ。

 相変わらず微妙に残念な女だ」


「ちょっと恋次?それはないんじゃない?

 久しぶりに幼馴染みに会ったというのに……」


 ろれつの回らない口調で遥ちゃんが恋次君に絡む。


「……本当に残念だ。

 酔わなければ美人なのに……」


 俺は思わず本音が声に出る。


「あら、美人だってー

 嬉しいこといってくれるじゃない。

 お姉さんが、一の童貞奪っちゃうぞ!」


 遥ちゃんが楽しそうに笑う。

 童貞、童貞、あまり言われると少しヘコむ。

 俺は、27歳。

 彼女1人いたことがない。

 寂しい寂しい独身生活だ。


「遥……

 お前飲み過ぎだ」


 恋次君が、遥ちゃんの体を支える。


「いいのよー

 女は少し飲み過ぎたほうが魅力的になるんだからぁー」


「誰の持論だ……

 少なくても俺は、酔いつぶれた女よりしゃんとした女のほうが好きだぞ?」


 恋次君がそう言うと俺もそれに賛同した。


「そうだよ。

 酔ったお姉さんよりメガネ女子の方が俺は好きだな」


「あら?一は、メガネ女子がお好き?

 なら、私もメガネをかけようかしら……」


「俺に好かれたいの?」


 遥ちゃんの表情が一瞬固まり悲しそうな表情になる。

 だけどすぐに笑顔に変わる。


「なに言っているのよー

 私は、全ての人に愛されたいの!

 この世のすべての人は私のものなのよー」


 この辺は、あんま変わってないな……

 名前の呼び方はいつの間にか呼び捨てになったけど……

 まぁ、その辺はいっか。

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