ちりぢりの心思い

人を好きになるとはこうも人をおかしくさせるものだったか。確か先日会った友人は、心穏やかになれる人に出会ったと嬉しそうに恋をしていた。私はというと生活がぶち壊れる音をさせながら非日常の迷路に迷い込んでいく恋をしている。しかもそれには終着点がないのだから馬鹿らしい。馬鹿らしいことは重々承知で自らそのルーレットに乗っかってコマを進めている。本気の阿呆とはきっとこういうことをする人のことをいうのだ、私のことだが。

好きだった漫画を読んでみようとして手に取ったが結局はあの人のことで頭が崩壊していき、娯楽とはこんなに詰まらぬものだったかと驚く。どうやって生きてきたのか、人生の全てが変わってしまいそうで恐ろしい。


朝焼けの中でのむコーヒーを思い出した。眠くて仕方ない時にのむコーヒーの火薬感。万能的な作用が私の中で起こる錯覚。これに似ている。恋に欲していた自分を知るや迷路からは抜け出せないまま、他人のソファに腰をかけて居座る労力をものともしない人を目指す私の滑稽さ。


星が見えたからはしゃいだ。それで済めばよかったのに、くだらない話を始めてしまったものだから、幻覚を見ている彼に「私にも見える」などという卑劣な言葉をかけるようになってしまうんだろう。

父親が片手間で始めたよくわからない年賀状を隙間なく埋めているキリストの教え。眺めていると具合が悪くなりそうなのはあの時聖書を読んでいた自分の思い出が原因だろうか。


母は死んだ。彼女の死によって思い出は美化されることと死んだらもう会えないことを心底知って好き勝手に彼女の幸福をもてあそぶ行為が、誰かれもすることである、と決めつけることで意地汚い心に救いを求めようと必死。


酔いが回らないという理由に客観性の強さが挙げられる。酒に酔えないなら麻薬でも打てばいいんじゃない、と言いかけた私は主観的。


猫があくびをしたので口に指を突っ込んでみたい願望があらわれ実行。猫はなんの気もなし、人を癒す役目を全う。


愛とは......ため息と共に出てくるそんな言葉の裏側にちらつくのは忘れてしまいそうな想いとそれからあの人のことだろう、だからどうしても恋に負ける。

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