第5話:アルフォーツ病
「大丈夫!?しっかりして!!?」
倒れる女性にそう声をかけるカレン。自分の顔は先程の子供達よりも青白かったが、その表情だけはどこか満足しているようにカレンにはそう見えた。
「いいの……もう……これで……あの子達の……アルフォーツ病は……治ったはず……だから……」
「アルフォーツ病……!?」
その病名を聞いたカレンは驚愕で表情を歪める。その病名は、かつて自分の母親と同じ病だったからである。
「でも……!アルフォーツ病は不治の病のはずじゃ……!?」
「……ハイエリクサー……」
「ハイエリクサー……!!?」
ハイエリクサー。その名前もカレンは聞いた事があった。どんな傷や病もすぐに治してしまう伝説の万能薬。それがハイエリクサー。それならば、母親も治せるのでは?と冒険者の情報網を駆使して探したのだが、薬の材料の場所の情報が掴めずに終わってしまったのである。
「私の……父も……母も……愛する夫でさえ……アルフォーツ病で……だから……せめて……あの人との忘れ形見だけは……どうしても……救いたくて……」
どうやら、彼女はカレンよりも多くの親しい人を同じ病気で亡くしていたようである。だから、どうしても自分の産んだ子らだけは救いたい一心で、この「死の森」と呼ばれる場所にハイエリクサーの材料があるのを掴んだのだろう。
「だから……もう……これで……私は……」
「ダメよ!?しっかりしなさい!?この子達はどうするのよ!?あなたは母親なんでしょ!?母親なら最後まで子供の側にいてよ!!?」
自分の母親が亡くなった時を思い返し、必死で泣きじゃくりながら懇願するカレン。無茶なお願いだと分かっていながらも、そう叫ばずにはいられなかった。
が、そこでふとカレンは気づく。ハイエリクサーなら、彼女の今の傷だってすぐに治せるのではないのか?と。しかし……
「なっ!?空ッ!!?」
薬の中身は空っぽだった。どうやら、2人が飲む分の量しか調合出来なかったようである。
「アイラ……キリカ……どうか……私達の分まで……」
最後に愛しい我が子の名前を呼び、女性はゆっくりと目を閉じて……息を引き取った……
「うわあぁぁぁぁぁ〜ーーーーーーーーーー!!!!?」
「死の森」の一角で、カレンの慟哭が響き渡った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます