6 天の噂

 天の噂


「にやにやしてどうかしたの? 気持ち悪いな。なにかいいことでもあったわけ?」

 斎藤幸はレストランのテーブルのところで、三船晴と向かい合った場所でチョコレートパフェを食べながら、そういった。

「別ににやにやなんてしてないよ」ホットコーヒーを飲みながら、晴は言う。(でも、明らかに晴の顔はにやにやしていた)


「ふーん」幸は言う。

「なんだよ」

「どうせ、雨野さんのことでしょ? 雨野さんとなにかあったの?」幸は言う。(幸は相変わらず、なぜかとても晴と天のことに対して勘が鋭かった)


「……あたりでしょ?」

 黙っている晴を見て、幸はいった。


「ねえ、あのさ……。晴はさ、あの噂、知ってるの?」珍しく顔を曇らせて、幸が言った。(そんな幸はすごく珍しかった)


「あの噂って?」晴は言う。

「……だから、……雨野さんの、噂」幸は言った。

 天の噂……?


「いや知らないけど」晴は言った。

「まあ、やっぱりね。晴はこういうこと、知らないよね」幸は言った。

「その噂ってさ、……」晴はそこで言葉を止める。

「うん」

「……その、あんまりよくない感じの噂なのかよ?」晴は言う。

「うん。……まあ」

 そっぽを向いて幸は言う。(今日の幸の髪型である、ポニーテールの髪が揺れた)

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