ぼっちな俺が何故か猫JKと付き合うことになった件について

神崎夜一

第1話 猫JK


一つ言えることがある今のこの状況は俺が望んでいたものではない。もう一度言おう決して望んではない。


夕日が沈む、夕暮れ時。空はオレンジ色に染まっていき、ひぐらしの鳴き声が耳に響くのを感じる。

帰宅の人や部活の人らが本格的に活動する時間帯、窓際にすわっている俺は窓を開け、涼やかな風が当たる。机に肘をおき、頬杖をついて窓を眺めている俺のその視線の先にはテニス部の女子がテニスをしていて、つい目がいってしまう。いつまでも見ていられるので、ずっと眺めていようと決めた時、俺の前に座っている女子から声がかけられた。



「ねぇ、ちょっとハルくーん、私にこの問題教えてよー」



甘い感じを醸し出しているがどこか鋭い声の主は机の上にある宿題に翻弄されていた。


シャツを第三ボタンまで開けてるせいか胸の谷間がはっきりと見え、汗が首から流れ落ち谷間に着地すると、より艶っぽく輝き、目のやりどころに困ってしまう。なんともエロすぎる。夏最高!夏休みが終わった憂鬱も無くなりそうだ。9月1日、夏休みが終わり、また学校が始まる月だ、そして自殺者が最も多くて電車の遅延がよく起きる月だ。実際に俺も夏休みを一人謳歌して夏休みが終わったら自殺しようかと考えたほどつまんない人生を送っていた。まぁ死ななかったんだけど。だって、親や電車に乗っている人が迷惑するじゃん。決して俺が勇気ないから死ねないんじゃないんだからね!本当だからね!

それで俺が何を言いたいかというと学校始めマジ辛い。


突然だか一つ聞いていいだろうか?9月って夏なのか?それとも秋?俺はよくわからないがこの気温や最近の快晴ぶりからして夏と決める。


俺たちが今いる学校の図書館には周りを見渡しても誰もいない。俺と明日香の二人きり、こればっかりは人付き合いの苦手な俺は緊張を隠せない。だから緊張を紛らわすために窓の外を見ていたのに!と心の中でつっこみを入れつつ明日香からの問いに答える。



「えーと、これはまずxを求めてからyにこれを代入すれば解けるよ」



俺が丁寧に答えると明日香は満足そうにして喜んでいた。

明日香は黒髪ショートで愛らしくて可愛らしさを兼ね備えている美少女だ。左の目の下にホクロがあることによりエロさが増しているように思える。本人は自分が美少女だって言うことを分かっているのかいないのか分からないが、どこか気の抜けた性格でマイペースだ。

近くにいくと鼻腔をくすぐる花の甘い香りが漂ってくる。ここは花畑なのだろうか?そう思わせるかのような感覚に陥ってしまいそうだ。

本当に俺には勿体なくて俺とじゃ吊り合わない存在なのだ。なのになぜこの俺が美少女とこうして宿題を一緒にやる仲になったかというと...

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俺は人と話すのが苦手だ。

なんでみんなそんなに楽しく話しているの?話をするなんて苦痛でしかない。

だから俺は孤独を生きる。

友達なんかいなくても良い、欲しくない、欲しいとも思わない。だけど俺だって孤独感で押しつぶされそうになることもあるんだよ。かといって家で引きニート生活するわけにもいかない、本当はしたくてしょうがないだが。

高校というものは行かないと俺の将来が真っ暗、引きニートしてるなんて逃げたと同然、負け組確定。

だから俺は自分からは話さないし人に合わせることしか出来ない。人の顔色を伺って作り笑い、マジ辛い。

いわゆる世間で言うあれだコミュニケーションの低い奴。

コミュニケーションはなぜ取らないといけないのか、社会に必要だから、わかりあいたいからなどということをよく言う奴がいるだがそんなのは違う、俺からみればそんなのただの自己満にすぎない。人は誰かと協力しないと生きていけないと誰かが言った。だが、俺は一人で生きていけると思う、そう言う奴は世間からは痛い目で見られがちだが、そんなの気にしない、見られて結構。要はこの世界一人になったものが勝ちなんだ。


東が丘高校2年名前は 龍ヶ峰晴彦 名前はいたって普通だが顔が残念なほどにブサイクだ。本当に両親恨んでる、後神様、なんで俺イケメンにしてくれなかったの、そしたら彼女の2、3人出来てただろうが。せめて1人は彼女が欲しい。

鋭い目、誰かを見たら避けられるような。

身長は162センチ。身長低すぎだろブサイクなんだからせめて身長は180センチは欲しかった。

毎日牛乳欠かさず飲んでいるのに全然伸びないのはなぜなのか、牛乳で身長伸びたとか言ってる奴多分嘘だな、まぁ一応一応ね牛乳は毎日飲んどこう。

学校指定のワイシャツその上にブレザーを見に纏い、ネクタイ、ズボン着て教室の椅子に座っている。

もう6月というのに梅雨を感じない快晴ぶりだ。

気温が高く少し蒸し暑い。ちょっと最近雨降ってなさすぎない?帰宅部として懸命に活動している俺でもさすがに干からびてしまうよ?だから雨降ってくれ。それか季節外れの雪。

ちょっと汗かいてきたな。俺はワイシャツの袖で汗を拭う。



「ねぇ、なんかアニメとか見てる?」



手で仰いでいたら唐突に話しかけられた。

なに急にこいつ、アニメそんなに好きなの?っていうか誰だよ知らないぞこんな奴。普通話しかける話題でアニメの話は驚きだぞ。驚きを通り越して尊敬できる。

てか、俺は超アニメ大好きですけど。



「アニメの話以前にお前誰だよ」



見た目も普通、何もかも普通、ただ身長だけは180センチはあるんじゃないか、イラつくはー。

そのイラつきを睨みに変え表情に出す。



「ひ...ひっどいなー同じクラスなのに名前も覚えてもらってないとは」



あ、今思い出したそういえば異常に背が高いのが同じクラスにいたなーいた。だが名前が思い出せない。長...長なんだっけ。

いつも1人でスマホいじったり寝たりしてるだけの俺みたいな奴が。

多分俺に話しかけたのもぼっちだからだろう。

お互いがぼっちだからこそ話しかけて来たんだろう。

俺だってぼっちの方が話しやすい。

友達がいる人に声をかけられたらちょっと気を使っちゃう。

それとなぜ、なぜ今声をかけたのか凄い疑問なんですが、4月のクラス替えで友達になりたいから声をかけるのはまだしも6月というクラスの関係が出来上がってるこの時期に。



「長...長し...長島だ」



曖昧の記憶を探り出してやっとの思いで思い出せた。



「いや、全然違うから長峰、長峰楓、ちゃんと覚えといてよ」



そうだ違う、長島は俺の隣の人だった。

長島に反応してか凄い冷めた目でこちらを凝視している。

マジ怖い、お願いだからその目やめて、慣れてるとはいえキモいんですけど早く死んで下さいみたいな目やめて。



「あっそ、君ぼっち?」



「そ...うだよ、君もだよね?」



だよねって決めつけるのやめてくれない?俺だって好きでぼっちやってるんじゃないよ、友達だって一人や二人いるんだよ?本当に本当だよ?ネットの中にだけど。



「あぁ、それで、長島君はなんのよう?」



これまた、長島に反応して鋭い視線が隣から向けられる。だからぼっちが名前だして悪かったって、本当に間違えただけなんですよ。殺意みなぎらせないで下さい。



「あのー、、、長島じゃないんですけど、長峰なんですけど、、、僕はアニメの話がしたいんですよ」



たどたどしく話す長島はあまり人とのコミュニケーションが得意ではなさそうだ。まぁ俺もそうなのだが。なぜ急に話しかけてきたのかは本当に謎。謎迷宮でずっと彷徨っているかのように謎。



「俺、アニメ嫌いだから話し合わないよ。それじゃ長島君」



人と必要以上に関わるとロクなことがないそれは中学の頃に実証済みだ。だから話しかけられても大体同じような対応をして相手に俺、お前に興味ないんだよと思わせるようにしている。これ俺の得意技。そのあとはキモいと言われて去っていくのがオチなんだけど。それはもう慣れている。なんで黙って人にも迷惑をかけてないのにただ椅子に座っているだけでキモい、インキャ、あいつ優奈のこと変な目で見てるよーなどと言われるのだろうか、まぁインキャは否定できないが。


それで気になるのだが、今前の黒板付近で騒ぎ立てているカースト上位グループの人が俺のことを指差して



「まだ優奈のこと変な目で見てるよーマジキモっ!」



さっき思ったことは本当に言われていた言葉だったらしい。そんなに俺はキモいのだろうか。皆外見で見過ぎ。イケメン最強!そうかイケメンだったらなんでも許されるのだろうか?俺がブサイクだから、ブサイクだからーー!まぁどうでもいいかそれも自己満でしかない。ブサイク最強、ブサイクの俺マジカッケー、一人孤独で一人狼マジカッケー。そんなことを思っていると少し胸が痛い。


後、さっきからずっと固まって俺を見つめている長島はなんなんだ。早くどっか行って落ち込んでろよ。俺の存在にふれ伏しておけよ。最下位の存在の俺に。最下位もの同士仲良くして手を繋ぎながら高校生活を送るなんて真っ平御免だ。

だが、な、なんだと、まだ長島の目が死んでない。

落ち込んでいるがまだ純粋な目で俺を見つめている。長島は他の奴らとは違うって言うのか?



「なんでまだいるの?」



俺の純粋な問いに長島はどう答えるか見ものだったが、少し困った様子でこちらを伺っている。

だから、なんで答えないんだよ、質問したら答えるのが普通だろ?それとも俺が話さなすぎて周りの常識が変わってしまった可能性も捨てきれないのか?

俺はそのままいつもの寝たふりをしようと諦めた時、長島の口から微かに声が漏れ、俺は顔を上げる。



「あ、あの?し、趣味とかはないんでしか?」



緊張しているのか最後の語尾がすかがしかに変わっている。少し笑ってしまった。それはいつぶりのことだっただろうか、覚えていない。それ程に俺は笑っていない。表情筋がないのかと毎日心配していたがあったことにホッとする。



「趣味か、えーと、アニメ見ることかな?」



さっきは嘘をついて、もう関わりたくなかったが、長島は俺が蒔いた境界線を越えてきてくれたので俺は本当のことを話すことにする。長島はいい人らしいと俺の中で自己解決する。警戒はするよ?だって子供の時知らない人から声をかけられたら警戒しろって教えられたんだもん、それは従うしかないじゃん。親や教師の言葉を裏切れないよ。約束を守るってのが俺の唯一のプライド。唯一のポリシーこれ絶対。

でも長島は俺の言葉にめげずにこの場に立っている。だから、俺も長島と向き合うことにする。



「ほ、本当に?僕は今季だったらストリアが好きなんだけど、えーと...えーと君名前なんだっけ」



俺が少し長島をいい人と思ったことを返してくれ。なんで話しかけた人の名前を覚えてないの?バカなの?アホなの?不思議すぎて、不思議の森があっても不思議ではないくらい不思議。


ストリアは知っているよ?ストライクリアリティーでしょ。あれね、あれはね馬鹿みたいにエロすぎるんだよ。もしかして長島ってムッツリすけべだったのか...もう俺の中ではムッツリすけべの称号を授けよう。ムッツリすけべ長島君。



「話しかける前に確認するのが普通だよね?まぁ俺は龍が峰晴彦だ」



俺が鋭いツッコミを入れると長島は少し驚いた表情を浮かべたが笑顔に変わり

「よろしく晴彦」

と手を差し出してきた。

俺はその手を握り

「よろしく長島」

と答えた。

え、何これ?なんで慣れやってるんだよ!さっき話したばっかの相手じゃないか!こんなにも俺って甘いかったの?飴もらったらすぐに知らない人でもついて行ってしまうみたいに。

ってかなんか早くない?名前呼びって、苗字呼びの俺が壁を敷いてるみたいじゃないか。

それにしても積極的すぎない?今日会ったばかりだよ、いや今日初めて話したばかりだよ、なのに名前呼びとは長島、こいつはなかなか見くびれない。



「だから俺は長峰だー、晴彦は何か今期見てる?」



そうだったこいつは長島ではなく、長峰だった。素直に忘れてしまっていた。

今よく考えてみたらアニメの話を教室でするとキモがられるよな?その証拠に隣の長島がこちらを気持ち悪い近寄らないでと思わす目つきで見ていた。だから怖いんだってー、そんな顔していたら綺麗な顔が崩れちゃうよ。これ俺のアドバイスだからちゃんと参考にしてね。


それと、後ろの方の席のオタク集団がワイワイとアニメやゲームの話をしている。その周りからの視線は流石の俺でも耐え難いものになっている。

オタクへの偏見が凄い!この教室はなんでこうも人を見下すのか!時期に俺もそうゆうのになってしまうのだろうか?この教室でのアニメの話はやめておこう。身の危険を感じる。決して俺が弱いわけではない、強いからこそ手加減しているのだ。


後さっきからねぇ?ねぇ?と長島が問うてくるのがうるさい!やかましいんだよ!

前に聞いたことがある。人は他人を見下すことによって自分の存在や価値を高めているって。俺はそいつらとは違う、自分がいつも下で気遣って、それでも必死に生きてるんだ。だからこういう奴らを見ているとヘドが出る。今まさにオタクをみて嘲笑っている奴らが!カースト上位?リア充?イケメン?そんなの知ったこった。オタク集団を助けてもなんの利益にならないのは分かっている。接点や話したことさえない。だけど俺は、俺は何もない、何もないからこそ言える、だから俺は椅子から立ち上がり口を開こうと心に決意した、心臓ばくばくて呼吸困難に陥りそうだけど歯を食いしばり声を出すその刹那。突然ドアが開かれた。



「皆ー、先生から次移動教室だってー」



クラスの委員長だったような少女はみんなに呼びかけた。



「マジか、やっべ後2分でチャイム鳴っちゃうじゃん。皆急げー授業に間に合わないぞー。授業に遅れるとあの先生、マジこえーからな」



カースト上位グループの一人が言うとたちまち生徒らは準備をし、教室から颯爽と出て行った。今の役がもし俺だったら絶対一人足りとも動かないんだろうなー。これだからカースト上位は許せない。取り残された俺は椅子に座りなおした。俺の勇気を返してくれ!かなり勇気を振り絞ったんだぞ!もう嫌だ帰りたい死にたいー。

俺の心を察してか長島が気遣ってきた。



「とりあえず、移動しよ?」



「あぁ、そうだな」



俺は長島の気遣いに甘え教室を後にした。




「へー、結構面白い人もこのクラスにいたんだ...今日の授業疲れたから次は保健室でサボろーと」



誰も居なくなりシンと静まり返った教室で窓際の一番後ろの席に座る彼女は俺が去った後の机を眺めながらそう呟いたのだった。

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