Retrace:16 ネルファ乱入
浴場でリッカと二人でお湯に浸かっていたところ、ネルファが乱入してきた。
そして、彼女はリッカに勝負を申し出た。
勝者はなんと私の背中を流す権利が得られるらしい。
別にネルファに許可した覚えはないんだけど……。
ただ、どんな勝負するのかはまだ決まっていない。
「というか、ネルファ。何で許可も無く入ってきたのよ」
私がそう言うと、彼女は悪びれることなく答えた。
「私はノルン様の護衛です。お部屋の外に出られるなら、私も付いていくのが当然です。それと……」
「それと?」
「そこに全裸のノルン様がいるからです」
「そんな事だろうと思ったわ」
聞いて損した。
それに護衛と言ったって、リッカとセレンが傍にいれば特に問題は無い筈だ。
ネルファには私の研究成果が詰まったあの部屋を守って欲しいんだけど……。
そんな私の思いとは裏腹に、ネルファは告げる。
「さあリッカ、勝負を受けるのだ。さもないとノルン様がどうなっても知らぬぞ?」
「なんで護衛のネルファが私を人質にしてるのよ……」
どうなってもって、背中を流す行為以上に一体何をするつもりなの?
「……姫さん、私はどうすればいいんすか?」
困り顔のリッカに、私は泰然と答えた。
「面倒だろうけど、勝負を受けてあげなさい。リッカが勝ちさえすれば、ネルファは大人しくなる筈よ」
勝負ごとで決着をつければ、彼女はそれなりに従順になる。
セレンとの勝負でもそうだったし、今回もきっとそうだろう。
ネルファの暴走を穏便に止めるには、この方法が一番だと思う。
それに多分だけど、ネルファって単に私に構って欲しいだけなのよね。
そう考えると、ちょっと可愛い。
「そういうことなら……。ネルファ姉、その勝負受けさせて貰うっす!」
私の言葉に納得してくれたリッカは、威勢良く言い放った。
すると、ネルファは不敵に笑う。
「フフッ、リッカよ。どうやら覚悟は決まったようだな」
「バッチリっす。ネルファ姉には負けないっすよ!」
「そうか。だがこの勝負、最後に勝つのはこの私だ。そして、ノルン様のおっぱいを堪能するのもこの私だッ!」
ネルファ、
発言だけを無かったことにすれば、格好いい表情をしてるだけに、彼女の残念感がより際立つ。
ネルファは言った。
「ノルン様も期待してくれて構いません。私が勝ったあかつきには、あんなところやこんなところの毛穴まで隅々洗って差し上げます」
「普通に貞操の危機を感じる!?」
あんなところって一体どこの毛穴なのよ……。
「リッカ、絶対勝ちなさい! そして私をネルファから守るのよ!」
「姫さんの為なら、全力で頑張るっす!」
私の発破に、リッカは気合い十分といった感じだ。
これは期待して良さそう。
彼女には頑張って欲しい。
「そう言えば、結局何で勝負するの? まだ決まってないなら、さっさと決めちゃいましょ?」
私はそう口にした。
すると、ネルファが提案する。
「この床に敷き詰められた石畳の隙間で、あみだくじってのはどうです?」
「地味過ぎるわ!」
流石に却下だ。
なんで浴場の床でそんな事をしないといけないのよ。
「それじゃあ、ノルン様の体をどちらが綺麗に洗えるかというのはどうですか?」
「後攻が有利過ぎる! というか、それって背中流すのと実質変わらないじゃない!」
勝者報酬と変わらないことをしたら、そもそも勝負する意味が無くなるじゃない!
馬鹿なの!?
「ネルファの案は全部ボツよ。リッカ、貴方は何か無いかしら?」
「んーそうっすねぇ……。息継ぎ無しでどれだけ湯の中に顔を浸けられるかって勝負、どうっすか?」
「それってどうせ『
「えへへ、バレちゃいましたか……。でも、姫さんって私を応援してるんじゃないんすか?」
「確かに貴方の方を応援してるけど、何も不正してまで勝って欲しくないわ」
勝負は勝負でも、ズルして勝っても素直に喜べないし。
それにつまらないからね。
「でも、困ったわね……。勝負するにもまともな案が一つも出ないわ」
私がそう呟くと、ネルファが尋ねた。
「ノルン様は何か思い浮かばないんですか?」
「私もさっきから考えてるけど、今のところさっぱりね。というか思い浮かばないのなら、そもそも勝負なんてせず、風呂から出てしまうってのもアリかも」
なんだがグダってきたし、この際勝負自体を無効にするのも一つの手だ。
しかしそんな私の発言に、ネルファが涙目で言った。
「ノルン様! 勝負は無しでいいですから、せめてお体だけでも私に洗わせて下さい!」
「そんなこと言って、どうせ私の身体が目当て何でしょ?」
「そうです」
そうですじゃねーよ。
なに素直に本音を漏らしてるのよ!
せめて駆け引きくらいしなさいよ!
「ノルン様、後生です! 後で私の胸も好きにしてくれて構いませんからぁ!」
「それって貴方しか得しないわよね!? 寧ろ貴方側しかメリットないわよね!?」
思わず大声をあげてしまった私に、涙ながらにすがり付くネルファ。
彼女はその豊満な胸を押し付けるように、私の腰のあたりをホールドした。
全裸の私の腰に密着する、全裸のネルファ。
どんな状況なのよこれ……。
「ちょっとリッカ、そこで突っ立ってないで、ネルファを引き剥がすのを手伝いなさい!」
「は、はいっす!」
リッカは頷き、私に加勢してくれる。
しかし、ネルファの抵抗は激しい。
やはり私の護衛だけあって、一筋縄じゃいかないようね。
私とリッカが苦戦を強いられていたその時、入り口の方から声がした。
「遅れて申し訳ありません、姫様。今、お助けに参りました」
「その声はセレン!」
この混沌とした空間に現れた、我らが救世主セレン。
だが、そんな彼女の姿を目にし、私は頭を金槌で殴られたような衝撃を覚えた。
なんと浴場に入ってきたセレンの格好は、裸+エプロン姿だったのだ。
ど、どーゆうことなの!?
あのセレンが裸エプロン……?
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