生け垣のある家 縁側 よくなるセミ

 うちには生け垣があって、縁側もついているんだ。

「縁側に座ってスイカ食べると美味しいよー。生け垣があるから周りからもみえないし」

 そういって誘った幼なじみの彼。

 今日こそ――。

 誘ったはいいけど何を喋ればいいかわからず固まる空間。

 冷えているスイカのように冷えてくる。

 まずいな、まずいまずい。

「す、スイカ美味しいよね!」

「そうだな、美味しい」

 だめだー! 空気が溶けない!

 どうしよう、どどどどうしよう。


 ここはいっそ私のほうから!!


「あのさ、実は幼なじみ以上のこころをき――」

 勢いよく言おうと立ち上がったわたしを、ドンっと縁側に押しつける彼。


 時が止まる空間。

 息をのむ私。


「俺実は――」


 ――よくなるセミのせいで喋りが聞こえず、生け垣のせいでにはみえないね――

 ――でも、まあ、そういうことだよ。

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