第7話 ~ さらにモフ ~ 円広志 - 夢想花
連れが出来た。
犬5匹と鳥、犬は犬だが、狼のようでもあるし断言しにくい。それに妙に賢い。
犬という生き物は賢いが、よほど専門的なしつけ方をしないと言う通りには動かない。それが、身振り手振りや簡単な命令語をすぐに覚えてしまった。名前を仮につけた。アカ、イチ、ウル、エメ、オノ。微妙に柄や濃淡が違うので、見分けがつく。
ムツゴロウさんのように目を細めながらまとめてワッシワッシャしていると、いわゆる犬の眉毛というのが明確なのと顔の柄に混じっているもの、明確な足袋を履いているのとそうでないの、などという見分けがつく。名前は適当だが、音を重ねるようにした。多分そのほうが混乱が少ない。
あいうえお順にアから活発度が高い。全部メスだった。小型犬サイズだが、成犬かどうかはわからない。とりあえずタマタマは付いていない。姉妹のような気がするが、一度に5頭以上も仔犬が生まれた日本犬を知らないので、やはり何らか遊星衝突の影響を受けているのかと思われる。
鳥はケルン。鳴き声がそんな感じだ。雌雄はわからない。漢字は「健」にするか「謙」にするか迷っている。キリッとした感じが、時代劇役者のようだから。2:1で前者が有力だが。これも人懐っこい。というか餌付けのせいだろう。猛禽といえば鷲鷹及び梟のたぐいだが、知る限り嘴が鈎に近い形をしている。こいつはそこまででもない。但し目が前の方を向いていて、肉食であることを主張している。
ケルンは、付かず離れずで付いてくるだけだが、口笛を吹くと寄ってくる。
みんな可愛いので、そのまま進むことにした。各々自立しているので、特に定期的に餌をやる必要はない。というか、犬は蛇とか蛙とか虫とか大ミミズとかそういうのを捕らえるととりあえず持ってくる。頭をなでたり背中を擦ったりして褒める。満足すると一匹でで食べる。鳥も多分自分で獲っている。
鳶なら肉食だが雉なら雑食、でも雉はほとんど飛べないはず。こいつはゆうゆうと空を舞っている。ソピアの検索例でも、ぴったんこなのはいないらしい。
私は釣り竿を作って魚を釣ったり、貝を掘ったり、浅瀬で海胆を獲ったり。もちろん蛇も食べる。たまによもぎっぽいもの、セリっぽいもの、筍を採っている。上手くアクが抜けないので、できるだけ小さいもの、それも穂先ばかり食べる。竹は素晴らしい。柑橘も見つけたので、一応採ってあるが無茶苦茶酸っぱい。口を変えるにはいいが、デザートとかではない。やっぱり春かな?
福井県への経路について、事前及び道中相談はしていて、できるだけ海沿い及び川沿い、琵琶湖沿いに行くつもりである。近道できれば良し、だめなら多少遠回りでも海沿いに進む。そこで問題は紀伊半島だ。名古屋から福井に行くのに、本来は名神高速や東海道新幹線のように岐阜周りが良いであろうと。もし道なり線路やトンネルなりが残っていれば目っけもんである。大垣の辺りまで川が残っていれば、20km程度、余裕で1日で琵琶湖だ。これが紀伊半島外側をめぐるとなると、数百km。別に急ぐ必要はないが、ちょっと迷ってしまう。
まあ、今まで歩いた道に関しては、アスファルトは欠片も見ていないのでなんとも言えない。
海進ではなく海退とでも言うのか、おそらく氷河期的な期間の間に海岸線が後退しており、ちょっと大回りになっている。おそらく水位が20m近く下がっている。(サピアμ調べ)それでも伊勢湾には海が残っている。伊良湖水道は深く、流れが早い。しかし、海月がほとんどいなかったので、海に潜ってみた。
そこはパラダイスだった。
そう、シーフードパラダイス!
伊勢海老みたいなもの、ザガミのような大きい蟹、食べられそうな海藻に美味しそうな魚の群れ。
鯵や鯖っぽいのは釣り竿を落としただけで何匹も釣れる。クエみたいな大きなのは、メスを着けた竹槍で突く。で、なんだ、イグアナがいる。イグアナがいる。
ウミイグアナか。ここに来て、やっぱりおかしなことになっている。
氷河期のような寒冷期が来たから、爬虫類や両生類が死に絶えたかと言うとそんなこともない。蛙や蛇はいる。蜥蜴はまだ見たこと無いが、いてもおかしくないのか。
ていうか、ウミイグアナって、ガラパゴスの固有種のはずだし、あんな姿で海藻を食べて生きているはずだが。甲殻類とか食べているのか?鮎みたいに岩についた海藻を刮げいるイメージがあったのだが。
やつらは襲ってくることもなく、逃げもしない。ほっておく。
釣り針は、医療用の針を上手く整形して作っている。返しがないから外れやすいが、そこは腕だ。糸はテグスのような、カーテンに使われていたものだ。合成繊維は劣化が激しいのに、テグスみたいな糸はしっかりしている。綿もそれなりに使えるものがあった。ウールは全く大丈夫だった。絹もだ。祇園祭の山鉾に、大昔の織物が使われているという話だが、保つものは保つということか。
餌は陸地の岩の下にいる蟲。ミミズとか、ダンゴムシのようなもの。それで、ものすごく釣れる。道糸もないし、浮きは竹を削ったものだし、磯で適当にしているだけで、これだ。ガシラのようないかにも毒のありそうなやつは、竿を上手く返して投げ捨てる。私が注意しても犬に刺さったら嫌だしね。
釣果を5匹と1羽と1人で貪る。
寝るときは5匹がくっついてくるので暖かい、暑い。が癒やされる。
このまま死ぬまでこんな生活は飽きるだろうが、とりあえず今は楽しい。ひとりキャンプでサバイバル、仔犬5匹と鳥を連れて……いいね。
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
知多半島と渥美半島は繋がり、三河湾は干潟のようになっていた。湿地帯で、踏み込むのが躊躇われた。また伊良湖水道を泳いで渡るのも厳しそうだ。いずれにせよ、旧名古屋から抜けて、岐阜羽島の方に川が流れているかを確認せねばならない。
伊勢湾に沿って北上する。魚を獲って食べる。何か穀物を食べたい。米とは言わないが、稗とか粟とかでいいから。後、根菜食べたい。葱とか玉葱食べたい。結構切実に思う。栗とか木の実でもいいが、そういうものがない。何かありそうだが、調べるのもめんどくさい。葛を晒して挽いて団子にでも出来たらいいんだろうが、用事が済んでからだね。
砂の上は歩きにくいから、多少は陸側を歩いている。その辺りは元は海の中だったんだろうと思われる。すると、元から陸地だったと思われるところまでなだらかな斜面を描いている場合と、崖のように切り立っているところがある。
ちょうど崖下のような、侵食跡のような付近に差し掛かったところだった。
バラバラと何かが降ってくる。砂か小石か?崖崩れ?いや、あれ、うわ、雨?
ザザーッ。でピタッと止む。
上からキラリと光る眼。人影が見える。人影って、人がいるのか?逆光気味でよく見えない。
バッと少し離れたところに飛び降りてくる。5m以上の高さだよ、おい。
同時に犬が俺を囲むように前に出て吠えかかる。
モ「 アラートです。危険性の高い動物です。俊敏性が高い身体能力です。」
「見ればわかる」
逃げようにも近すぎる。
2本足で立っている。身長は1.2mくらい。もふもふ。顔が赤い。猿やん。
でかいやん。怖えぇ。
両手を前に突き出している。手になにか乗っている。砂?小石?
「……NNNG。……NNNG。Ottこ。wえ。……NNNG。」
猿が唸る。
モ「 言語翻訳します。『ねんぐ。ねんぐ。男。自分。年貢。」
「年貢かよ!」
猿が嬉しそうに跳ねる。手の何かが振りまかれる。よく見ると、籾のような。
『年貢。男。家。はっぴ。はっぴ。』
よく見ると、上から降ってきたのは籾だ。つまり米だ。こいつが撒いていたのか。なんで米を。年貢だから。いや猿がなんで年貢を。いやその前になんで話せる?いや、なんで翻訳できるんだ?
モ「 フィーリングです」
「フィーリングって!」
いや落ち着け。落ち着け。スーッと落ち着いてしまった。猿は目の前でまだ踊っている。はっぴはっぴ言ってるが、これってHappyか?なんでこんな言語を知っている。
モ「『はっぴばーDAYーちゅーちゅー』と歌っています。」
「これって著作権切れだよな。」
μ「2016年以降はパブリックドメインになっているよー!」
M「日本語歌詞の2番は英語歌詞を日本語に訳したもので、これは2079年に切れています。よって26世紀現在、世界中でパブリックドメインです。」
まあ、いいか。猿が歌っているのは
激しく吠えるアカとイチを抑えると猿が寄ってきて、手を持つ。籾をくれる。
「いーーーくぃ」
崖の上から更に数匹の猿が降りてくる。いーいーきゃーきゃー言いながら纏わりついてくる。犬がぐるぐる唸りながらその周りをぐるぐる回る。鳥はけーーるるるーーんと啼きながらずじょうをぐるぐる回っている。
「カオスだ」
猿をモフる。毛がやや硬いが、サラッとしている。
モ「 敵意は感じられません」
「わかる」
おそらく母猿の背に乗っている赤ん坊のような猿が指をチュウチュウと吸う。なにこのかわいいのん。
モ「 日本猿の近縁種と推測されますが、チンパンジーの成獣を超える大きさであり、膂力は強いと思われます。充分注意してください。成獣4匹子供2匹います。」
「ん」
明らかに表情がある。嬉しそうなのだ。素直に自分も嬉しくなる。
モ「 崖下だと電波状況が悪いのでその位置から移動してください」
「んー」
しかしこいつら、なんでこんなに人馴れしてるんだろうね?もしかしたら生き残った人間がいるのかも。それはドキドキするね。
モ「 位置が悪いため移動をお願いします」
「んー」
私一人でこの世界に生き残ってどう生きていくのか、考えることはできるだけ先送りにしてきた。幸いサピアという話相手がいて、バッテリー交換すれば、多分死ぬまで話し相手になってくれるし、小説やゲームなんかでも楽しませてくれるだろうことは間違いない。でもそれだけでは、ね。せっかく生き残った甲斐がない。
モ「 私に対する返答が雑になっております。その動物に人間に対する危険なVirus・病原菌反応がないことが判明しました」
「……ああ、悪かったね」
なんというか、こいつもめんどくさい。
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あれね、本当はどう考えても、谷山浩子「穀物の雨が降る」ですよねーわかります。そのための話だったんですが。
円広志といえば関西ではお笑いのおっさんと思われていますが、歌、うまいですね。先日ラジオで夢想花を生で歌うのを聞いたのですが、衰えていません、びっくりしました。小田和正の最近のコンサートにもビビりましたが。この歌結構しんどいんですカラオケで歌うと。
さあ、さっさと出揃っちゃいました、犬猿雉。きびだんごはありません。なぜならこのオハナシは決して桃太郎ではないからです。Journey to the Westなのです。とりあえず尊さんが調子に乗って大暴れするまでは行かないと、他キャラが出てきません。
それにしても、とりあえず誰かに見てもらおうと思ったらどうしたらいいんでしょうかね?カクヨム、ヨクワカラナイデス
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