俄雨[無季]

 俄雨

 君の差し出す

 傘の柄に

 残りし温度

 冷たくなる


 これは、一体季語は…?となりますが無季でも構わないか、と思っています。(歳時記を引きなさい)季語あった方がいいのは分かるのですがめんど…いえ、なんでもないです。

 俄雨は急に降ってくる雨なので、傘がない状況が多くて大変ですね。まあ、通り雨やら夕立だったら直ぐに止むのでそう大した問題では無いのですが、それでも急いでいると嫌ですね。雨宿りするにしても濡れて行くにしても嫌な気分になってしまいます。

 そんな時に傘を差し出されるの、嬉しいですね。恋に落ちそう。(小並感)まあ、全く見知らぬ人に傘を貸すという状況は中々無いと思いますので、多分傘を貸してくれた人とこの視点人物は顔見知り以上ではあると思います。話した事が無い場合も傘を貸すのはハードルが高いので話した事くらいはありそうですね。学生でいうとクラスメイトくらいの関係性は築いているのではないでしょうか。

 視点人物が傘を受け取った時、その柄には温もりが残っていました。その温もりが「君が傘を貸してくれた」という喜びで視点人物の心が温かくなるという事に繋がっていたらいいな、と思っています。いや、流石にちょっと無理があるか。読み解けなくても何となく無意識でイメージして貰えたら嬉しいんですが、求めすぎですね。

 でも最後の段でこの傘の柄の温もりは冷たくなってしまっています。勿論、時間が経てば冷たくなるものなのですが、自分で差している間は柄を持っているはずなので多分もう差していない状態なのではないでしょうか。雨が上がったのか、それともこの後半の段は別の日なのか。最後を「冷たくなる」と現在形にしているので、傘を借りてからそう時間は経っていないのでは無いかと思います。つまり雨が上がって傘を差す必要が無い状態になった、と。

 さて、この「傘が要らない状況」は勿論そのまま雨が上がったという話でいいのですが、一応深読みをすると「君の優しさの象徴である傘が要らない」とも言えます。つまり「君の優しさは要らない」という事です。この世の中には優しくされて困る状況なんてごまんとあるので好きに想像してください。

 最後の段の「冷たくなる」は意図的に字足らずにしています。字足らずにする事で物足りなさというか、寂しさが出ていればいいなと思っています。

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