第六章 龍と解放と中年冒険者

第82話 黒スーツと中年冒険者


 ダンジョンが出来てから半年、チュートリアルから数えると一年経ったな。



 大阪ダンジョン以外を攻略してから、年も越して、もう春になろうとしてる。


 世界は落ち着いていて、ダンジョンは増えていない。


 ダンジョン組も上手いことやってるので、日本の死者は激減し、レベルが上がった冒険者もチラホラ出てきて、テレビでその姿を見ることが多くなった。


 海外は、汚染されたダンジョンが、そろそろ抑えきれなくなってきてるらしく、毎日放送している。他は人気の冒険者が活躍しているらしく、ランキング番組が人気になってる。


 と、俺らはゆっくりマッタリしていた。


 町を広げて、町役場のような場所にお父さんなんかはいて、いつもいい町にしようと会議しているようだ。

 たまに覗くと、仕事を押しつけられるから行くのを控えている。まぁ、お父さんとは毎日会ってるし、いいか。


 ダンジョンには俺、モッチー、ナキ組と同級生組が二手に別れてレベル上げをしていたが、本当にたまにしかしていない。


 遊びに行く方が多かったな。


 あ、トレーニングダンジョンが出来た。


 コアにも身体を与え、身長は150cm位の茶髪ショートで褐色の肌をしている、元気そうな女の子だったので、チョコと名付けた。


 (和菓子で攻めるつもりだったのに、アンコに和菓子シリーズはもうやめてと泣かれてしまい、洋菓子にチェンジ。これからは洋菓子に切り替えていく)


 お父さん達、この町の住人が利用しているようで、チョコが受付し、チョコに魔力を与えると、その人に会ったプログラムでモンスターを誕生させるらしい。

 一度、試そうとしたら、俺のレベルだと魔力だけではダメらしく、ランクの高いモンスターは呼べないそうだ。


 そして、ナキのステータス。

 あいつは鬼人って種族らしく、職業もそれに合ったものがいくつかあった。もちろん基本職もあるが、戦鬼、妖鬼、金鬼、水鬼、風鬼、隠形鬼とあり、とりあえずナキに似合う戦鬼になった。


 これも上位があるのか?


 SPボールでそれなりに取らせたから、問題ないだろう。



 そして、俺らの日常は、


「ちょ! ナキさん! 今日は俺のオススメにいくって言ったっすよね!」

 ボブが怒ると、


『ボブ、お前のオススメはどーせ豚骨だろ? 俺は豚骨以外が食いたい!』

 ラーメンで揉めている。


 俺らはラーメンにハマっている。

 毎日だと美羽に怒られるので、かず行けないから、行く日はモメる。


「兄さん! 言ってやって下さいよ!」


 そう言われても、

「んじゃ、間をとって、元気ラーメンに」


「「「「『却下!」」」」』


 マジかよ。

『カズト! この前もなんだかんだで元気ラーメンだった!』


「兄ちゃんはハマるとそこばっかだからダメ!」

 しょうがないだろ、ハズレ引くより確実に満足するし。


「カズトさん、今日は諦めて」


「僕も、目を付けてるラーメン屋がありますよ!」


「うっせぇ! 俺のラーメンに行くって言ったじゃないっすかぁー!」


 なにも泣かんでいいやん。


 


 男六人で豚骨ラーメン。

「「「「「『美味っ!!」」」」」』

 ヤバイくらい当たりだった。


「でしょ! だからみんな連れて来たかったんですよ! ここやっぱ美味いっす!」


 ボブがオススメしたくなる気持ちも分かるな。


 替え玉して、腹一杯で外に出る。


「どうです? 美味いラーメン屋だったっすよね?」

 ドヤ顔で聞いてくるボブ。



「「「「『……」」」」』


 一人も答えず、歩く。


「ひ、ひきょうもの! お前ら、人間か! 認めろよ、俺がすすめたラーメンが美味かったって!」


 ジタバタするボブをみんなで羽交い締めにして、連行する。



「なんか言えー! 黙ってるなー!」


 うるさいな、

「っ兄ちゃん!」


 ほんと、うるさいな。

「誰だ? 結構な人数いるようだけど」


 ……最近、多いな。


 何故か、ここ一か月の間に襲われることが多い。聞いても雇われたとしか言わないんだよなぁ。


『またかよ。カズトはどんだけ恨み買ってんだ?』


「僕が知ってるところで、……十、二十、さブヘェッ!」


「いい加減なことは言わない! 殴るぞ?」

 ほんと、


「いや、カズトさん? 殴った後! てかやっちゃう?」

 モッチーがいこうとするので、


「いいよ、手加減して倒してくるわ」

 とりあえず寝かしておけばいいだろ。


 走って手加減デコピンをお見舞いしていく。


「ま、待て! なぁ、待ってくれ!」

 

 はぁ、なんか知ってんのか?


「手短に」


 他人の家の、屋根の上で長話をするつもりはない。


 見ると黒スーツ。なんで、こういうのってこの格好なんだ?


「あ、あんたに会いたいって人が」

「やだっ!」

 手加減デコピンをして、


「ただいまっと、帰るか」


「ちょ、さっきのは?」

 賢人が聞いてくるが、


「寝たよ? さて、帰るべ」


 モッチーが肩を掴んできて、

「いや、賢人の言う通り、なんでカズトさんを知ってるのかが問題だよね」


「でも、俺は知らないし、知る必要もないだろ?」


 ただただ面倒くさい。


「まぁ、そう言わずにちょっと調べようよ。探偵みたいで面白いかもよ?」


 ……くっ、モッチーは俺の好きなとこを攻めてくるな。


「少しだけな」


『ちょろいな』


「おい! いまなんて言った?」


「ドウドウ! ダメですって! 兄さんとナキさんが喧嘩したら、そこら中壊れるっす! 美羽さんに怒られますよ?」

 

 ボブよ、それは卑怯だ。


「『卑怯者」』


 ……なんでハモんだよ。


「ふ、フンッ! いいっすよ、美羽さんに報告」


 「『すいませんでしたー!」』


「分かってくれたならいいっす」


 くそっ、覚えとけよ。


「うい、さっきのヤツ連れて来たよ」

 と賢人の影が連れて来ている。





「……う……う、……知らないてんジョボホッ!」


「言わせねぇよ! アホか!」

 ボブが容赦なく殴る。


 俺らはカラオケボックスに来ている。

 流石に外にいるのは辛かった。


「う、うぅ、なんだよ、いてぇ」

 黒スーツヨレヨレ男は、けっこういい年齢だな。


「お前が知ってることを全部吐きな! ネタは上がってんだよ!」

 ノセ……なんのネタだ?


「知らないな。証拠はあるのか? 証拠は?」


“ご、ゴンッ!”


「「いだい」」


 なんでコイツまで。

「話が先に進まない。とりあえず俺のことを知ってんのか?」


「い、いや。一番強い奴にそう言って連れてこいって言われた」

 なんだよ、コイツも雇われてんのか。


「んで? 何処に?」


 はぁ、面倒くさいな。

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