第42話 兄貴な中年
あれから数日。
ボブ家族(父、母、兄2人)
ノセ家族(父、母、姉)
モッチー家族(父、母、妹)が無事ステータスを取り終わり、異次元ハウスにやってきたので説明をしないといけない、正直めんどくさいが大事なことだ。
「えー、
まず、これは絶対で、ここの事は他言無用でお願いします。
ここは国営などではなく管理は私が行なっていまして許可制です。
酷いようですが他人を助ける義理も義務もない一般市民ですので、他の人を呼ぶなどはしないようご理解願います。
次にモラルは一般的なものを逸脱しなければよろしいかと思います。
あと家についてですが、区分については此方の人に聞いてもらって。建てる時には、こっちのアンコとマロンにお願いします。
ではなにか質問はありますか?」
立ち上がったのは、たしかノセのお姉さんか。
「失礼ですが、貴方はこんな安全な所があるのに、苦しんでる人達を見捨てるのですか?」
「ねぇちゃ「そうです、世界の人口はお判りでしょうか?」
ノセを遮って答える。
「世界の話をしているつもりではありません」
「では日本人のみに絞った話でしょうか? それはおかしい、世界約70億に対して日本は約1.3億、残り68億以上の人々を、見殺しにすると貴女は言うのでしょうか?」
「そんな事はいってないでしょ!」
「ではどういう事でしょうか? 今の日本は、そこまで困っているようには見えないのですが? しかもダンジョンの危険性すら分からず、新しい資源の確保に浮かれているようにも見えますが、どうでしょう? 貴女の周りに、危険を訴えている人がいるでしょうか?」
唇を噛み震えている、が俺には関係ない。
「私は神ではないし、以前から仲間の、このメンバーを集めた。全員に危険を打ち明け、それをみんなが信用してくれ、ダンジョンを攻略しました。
だからここのメンバーの大事な人は、私も大事に思いますが、あとは知りません。
貴女が助けたい人がいるなら、貴女が助ければいい。それは私には関係がないです。
あとここは安全ですが、此処だけで生活が成り立つわけがない。ただの少し快適な避難場所です」
「兄さんすいません、もう少し説明していれば」
ノセが謝ってくるが、頭を撫でて、
「ノセのせいではないし、これは俺が最初から思っていたことだ。
他人は苦手だが、別に嫌いなわけではないし、一人で生きていけるなんて思っていない。
だが俺の助けられる人には限度がある、じゃあどうするか?
大事な人を助けることが、1番後悔しないと考えただけだ」
「……申し訳ありませんでした」
納得はしてないようだが、ノセのお姉さんが頭を下げる。
「いえ、真面目なのは疲れますね。まぁ皆さん、こんな馬鹿な中年ですが、これからよろしくお願いします」
頭を下げ、ノセ、ボブ、モッチーに案内を任せる。
「俺はそれでも、ダンジョンが氾濫しないように挑んでるお前は偉いと思うぞ」
「お金の為ですよ」
お父さんと笑い合う。
「ちょっと疲れたんで家に戻りますね」
自宅に戻り、1人ベッドの上考えるが、
「他人はやっぱり苦手だな……」
あれ? 寝てたか……白いな……寝よ。
「イタッ! なにすんだよ」
リンリンが腕を組んで上から見下ろす。
『せっかく呼んだのに、また寝ようとするからさ』
「勝手に呼んで、勝手に怒るなよ、で? どうしたの?」
胡座をかいて座る。
『君が一人でなかなか寝ないから呼べなかったんだよ』
「それはしょーがない、結婚して嫁がいるからなぁ」
目線を逸らして頬をポリポリ。
『スマホっての貸して!』
ん? 持ってこれるのか? ってポケットにあるな。
「勝手に消したりするなよ」
渡すと俺の膝に座ってきて、
『ふーん、こーなってるのかー! へー!』
スマホを見てなにやらしてるようだが頭で見えない。
「絶対壊すなよ? 機種変したばっかだし、毎日ログインしてるアプリもあんだからな」
『ほい、返すね!』
とリンリンはスマホを返してくれたが、
『これ使い方教えてよー!』
同じ型の、同じケースのスマホを、ヒラヒラさせながら聞いてくるリンリン。
「お前それどうしたん?」
『僕も欲しかったから、チョチョっとね!』
「つか電波はい……てるな、しかもWi-Fi! あぁ、お前サイトもやってたなぁ」
『気づいてくれてたんだ! やっぱ壱番君だね! てゆーか、これ教えてよぉー?』
仕方ないので、スマホの初期設定から、オススメアプリまで教えてあげて。
『いいねこれ! PCより楽だね! 楽しいし!』
「つかそろそろ降りてくれよ、足痺れてきたし」
ピョンッと立ち上がると、両手をパンッと鳴らし、椅子とテーブルを出す。
『座っていいよー! コーヒーでいいかな?』
「ミルク、砂糖ありでよろしく」
と言いながら座ると対面にリンリンが座りコーヒーが目の前に現れる。
『あとさぁ、僕も異次元ハウスに遊びに行きたいんだけど……ダメ?』
コーヒーを一口飲み、
「別にいいけど、仕事あんだろ? つか来れるのか?」
『やったー! 仕事の合間に遊びに行くよ! でね、憑代がいるんだけど、アンコちゃんに作ってもらってよ?』
「アンコも知ってんのか? まぁ頼んどくよ」
『でね、その中にこれを入れて欲しいんだ!』
とリンリンが取り出したのは巻物だった。
爺ちゃんの家にあった、巻物に似てるな。
「腹の中に、これが入るとこを作ればいいんだな? 背丈はお前くらいでいいのか?」
『そこはてきとーで大丈夫! 僕が入れば僕になるしね』
「了解、てか長居しすぎたな、そろそろ帰るぞ」
『そ〜だね! 行く時は連絡入れるね!』
「おう! ちゃんとアプリは毎日ログインしろよ? 今度は一緒にやろうな」
『うん! ありがとう! またね!』
手を振るリンリンを見ながら意識が薄れていった。
『えへへ、少しでも覚えててくれたんだ……』
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