ダンジョンID1番 中年の気ままな冒険
あに
第一章 中年の不思議な冒険
第1話 頭のおかしな中年
俺の頭はおかしくなったのか?
こんなことあるのだろうか?
目の前で死体が消えた?
やはり病気のせいで白昼夢でも見てるのかな……
とある工場で管理職についてた俺、
身長は170ほどでガタイが良く、多少の事では愛想笑いだった為か、上司からのパワハラ、モラハラもエスカレートし、愛想笑いも出来なくなった。
それから、外出は病院くらいで他人を見ると手先が震えてしまう。
仕事している頃はあれだけうるさかったスマホも今では静かなもんだ。
髪も髭も伸び放題、側から見れば世捨人だな。
今日は
美羽は身長160くらい、1つ年上だが目も大きく童顔で若く見える。
俺が休職することになってからそれまで勤めていた会社を辞め、こんな俺を支えてくれている。
子供はいないし仕事も順調だったのだから、寄って来る男もいただろうに……そんな嫁に甘えている自分が情け無い。
「いってきます……」
マンションの階段を下りながら停めてある自分の車をチラ見する。
平日の10時だから駐車場に車も少ない。
(はぁ……世間は仕事してるよな……)
エレベーターを使えばすぐなのだが出来るだけ人に会いたくなく、階段を下りていく。
一階の駐車場に続く扉が見えた所で、ふと立ち止まり、光が届かず薄暗い踊り場に目を凝らす。
「………子供?」
小学校高学年くらいの背丈のようだが、なんか唸ってるような声が聞こえてくる。
「大丈夫か?…」
上から声をかけるが、あれっ? ……裸? 腰にボロ布を巻き肌も緑っぽく見える。
『ギャッ グギャッッ』
こっちに気づいて振り向く、大きな目が血走っててなんかおかしい。
ゆっくり階段を上がってきたが、何も考えることができず、ただ目をそらす事が出来ない。
(……なんだ? え? てゆうか……)
「クサッ!!」
異臭でハッとし、顔を右腕で庇う、
「ーーッッ!」
気づいたら目の前に影が!
とっさに右腕を上にもっていきガードしたが、痛みで持っていた車の鍵を落とした。
「ッッタ!このガキなにしてんだらぁ!」
右腕を前に振り下ろし怒鳴り、睨みつける。
「あぁ!?」
相手の右腕をとっさに左手で掴み、右手で首を捕まえる。
『ゲギャッ』
こいつ右手に木? 棍棒か?
なに振り上げてもっかい殴ろうとしてんだ? よく見ると皺だらけのちっさいオッサン!? 涎垂らして……
「キモっッッ!!」
『ギッッ!?』
反射的に手を離し蹴り上げてしまった。右腕に痛みを感じながら、階段下に落ちたオッサン。
首が変な方に曲がってこっちを見ている
え! は? 休職中に人殺し? 美羽になんて説明しよう……
ヤバい、俺は何やってるんだろ…
身体が動かない。
(嘘だろ……)
急に黒い煙を上げてオッサンが消えた……
腰が抜けて尻餅をつき、
「……なんだ…………これ……」
俺はおかしくなったのか?
階段の踊り場にへたり込み、さっきまでの事を繰り返し思い出している……
気持ちが悪いが吐くまではない、死体がないから現実味がないな。
だが、右腕のシャツが破れていた……白昼夢ではないだろう。
「はぁ…」
とりあえず動こう、足が震えるがなんとか立ち上がって落とした車の鍵を拾う。
痛みを感じ右腕のシャツの袖を捲ると、赤黒く腫れていて引っ掻き傷もある。
「こら痛いわな…」
さっきアイツが落ちたとこに、なんか落ちてるみたいだから階段を下りていく。
「なんだこれ? 石とカード?」
小さな飴玉サイズのオニキスの様な黒い石と、白い免許証サイズのカードが一枚。
拾い上げると軽い眩暈を感じた…
いつもの立ち眩みだろう、カードを見ると文字が浮かんできた。
「………………はぁ?」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
ID 1
名前 :カズト センジャ
種族:人間 /男
年齢:35 レベル:1
HP:90/100
MP:100/100
力:120
器用:80
丈夫:100
敏捷:70
知力:100
精神的:100
運:30
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
(……なんかのゲーム? ステータスだよなぁ)
名前も年齢も俺のだけど、あとのはよくあるやつだな……訳がわからない。
馬鹿にされてるようでイライラする。
「まーいっか……」
カードと石をポケットに入れ、帰ろうと後ろを振り返る。
「うぉっ!!」
『ーーギッ!?』
階段の影からゴブリン? がこっちを見ていた、棍棒を振り上げたまま固まっている。
(こいつ、後ろから殴ろうとしてやがったな?
さっきの奴もこいつもなんで俺なんだよ!
もー疲れたんだよクソが!)
「おおぉぉぉらっ!」
『グべェ!!』
走って顔面に前蹴りを食らわすと後ろの壁にぶつかり動かなくなった。
「……勘弁してくれ、もーいないよな?」
階段下を見ると取っ手の付いた両開きの扉があり、半分くらい開いている。
「……こんなんあったか?」
さっきの奴は黒い煙を出し消えていった。
「カードはないんだな」
落ちていた石を拾い、ゆっくり近づいて扉の中を確認する。
「嘘だろ……」
扉の中は石のブロックで出来ていて、まるで……まるで、ゲームのダンジョンのようになっている……奥まで続いているのか……
何故かそんなに暗い訳ではなく、奥にある分かれ道も見える。
鼓動が早くなり、暑くもないのに汗が止まらない。
取っ手に手を掛け力を入れるが意外と軽く、ガチャンと音がして閉まった。
駐車場側の扉に歩いていきノブに手をかけ深呼吸する。
(あんな道があったら外までおかしくなってるよな……)
そっと扉を開けると。
「……外は普通かぁ……どーすっかなぁ」
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