14:4『尾を飲み込む蛇】開戦 白

 レーヴ・ダウンSide


「足元に撃ち込んでも意味がない! アイツの頭部付近に砲撃を集中し、態勢を崩させるんだ!」


 ノアがレーヴ・ダウンの兵士たちにそう命令を下せば、クラーケンの頭部目掛けて、戦艦からの集中砲火が始まる。砲撃音が響き渡る中で、彼は控えている七元徳にこう指示を出す。


「未穂、椿、瑞月、真冬の四人で海面の触手を始末し続けてくれ。この現場の指示は黒百合に任せるぞ」

「承知しましたわ」


 黒百合が四人に視線を送れば、彼女たちは小さく頷いた。


「零と楓は俺たちの――"四色の蓮"の後に続け」

「それは大変光栄なことだ」

「そうね。こうやって顔を合わせているのは、随分と久しぶりじゃない?」


 雨空霰・雨氷雫・月影村正・朧絢。最初期のレーヴ・ダウンで初代四色の蓮を務めていた四人。彼らが全員揃うのは何千年ぶりか。零と楓はその光景を目にして、微笑する。

 

「そうかもしれない。俺がレーヴ・ダウンを裏切ってから、こいつは四色の蓮から救世主になった。二度とこの四人が揃うことはないと思ってたぞ」

「…裏切ったことは認めるんだね。あの時は『姉さんの為』ってずっと言い訳してたのに」

「まぁまぁ、もう何千年も前の話だろ? きれいさっぱり水に流そうぜ!」


 隣に立っている村正に対して、雫がジト目を向けながら気に食わない様子を醸し出す。そんな二人の肩に手を回し、朧絢が明るい調子で仲を取り繕おうとした。


「…ノア、私たちはどうすれば?」


 そこで声を掛けてきたのはレインたち。彼女らもまた、赤の果実のメンバーとして力を尽くそうと覚悟をしていたのだが、 


「お前たちは戦わなくてもいい。ここで休んでいてくれ」

「で、でも――」

「レイン、ブライト、ステラ…。お前たちはエデンの園で、十分戦ってくれた。若いのに大したもんだよ」


 ブライトがそう言いかけても、ノアはそれを遮るようにして言葉を続ける。


「ここからは――"大人たち"に未来を任せてくれ」

「…ほんとうにいいの?」

「気にすんなステラ! "大人が子供たちの未来を守る"! それが当たり前のことなんだからさ!」


 不安そうな表情を浮かべるステラに、朧絢が親指を立てつつも明るい笑顔を向けた。レインたちは三人で顔を見合わせ、意を決したように戦艦内へと下がっていく。


「絶対に、生きて帰ってきて」

「あぁ分かってる」


 強い眼差しを送るレインへ一度だけ頷けば、ノアは身体の向きをクラーケンのいる方角へと変えた。


「私のレプリカ…にしてはちょっとクール過ぎるよね」

「どうだかな。昔のお前とそっくりだぞ」


 ノアと雫は二丁拳銃、村正は赤と白の二刀流、朧絢は紅の鞘に納められた刀をそれぞれ手元に召喚する。


「「――謀反化」」


 それを合図に神凪楓と神凪零が謀反化を発動し、自身の身体を黒色の衣装に身を包んだ。後方に立っている黒百合たちも、謀反化を発動して自身の姿を変化させる。


「どうしてその技が使えるんだ?」

「それは愚問ね」

 

 ゼルチュがクローンの為に開発した技を、何故オリジナルが使用できるのか。その答えを指し示すように、神凪楓はノアの顔を見つめ、簡潔にこう説明をした。


「"本物"が"偽物"の技を使えない…なんてことはないの」

「まるで答えになってないな」


 彼は苦笑いを浮かべ、雲を突き抜けるほどに巨大な身体を見上げる。壁のように立ちはだかるその巨体は、今までに見てきたどんな建造物よりも大きい。


「君たち、これを使え」


 そろそろ交戦を始めようかとノアたちが心の準備をしていれば、甲板にデコードが姿を現した。彼女は右手に握っていた片耳型のイヤホンを、一つずつ彼らに投げ渡す。


「これは?」

「小型の通信機だ。私やルナたちの方と連絡が取り合えるように設定をしてある。これで上手く連携を取り合え」 

「恩に着る」


 全員右耳にそれを装着し、ノアたちは改めてクラーケンを見据える。


「戦闘――」


 ノアがそう呟けば、黒百合たちは海面を蠢いている触手に自身の創造武器を向け、雫たちは若干片膝を曲げた。


「――開始だ!」


 宣言した瞬間、ノアは雫たちを率いてその場から飛び立つ。  


「そういえば言い忘れていたが、俺には眠っていた間のブランクがある。あまり過度な交戦は止してくれ」

「お前はいつからそんな弱音を吐くようになったんだ?」


 触手の上を伝いながら頭部まで駆け上がる最中に、忠告をする月影村正。ノアは彼を鼻で笑いつつ、小首を傾げる。


「前線を降りてからだ」


 その台詞を吐き捨てた村正は、背後から迫りくる触手を、振り向きざまに二刀流で両断した。


「どの口が言うんだか…」

「でも村正らしいよな!」


 彼の隙を狙おうと忍び寄る触手。それを雨氷雫が二丁拳銃で的確に処理していく。朧絢もまた、雫の足に巻き付こうとした触手を刀で細かく斬り刻んだ。


「これが打ち合わせなしの連携なのか…?」 

「ブランクなんて大嘘じゃない」


 楓と零は目の前で次々と触手を片付け、クラーケンの頭部へ向かう四色の蓮に、苦笑せざるを得なかった。何千年ぶりかの共闘だというのに、ブランクを感じさせない息の合った連携と、お互いの庇護。初代の四色の蓮は、まるで格が違った。


「私たちも負けてられないわ」

「当然だ」


 神凪楓は周りを取り囲んでいる触手を、能力の稲妻ライトニングによる雷撃で一網打尽にする。零も制裁サンクションで光のレーザーを上空から降り注がせ、触手の光の塵と変えてしまう。


「流石、やるね」

「…雫っ!」

  

 雫は二人に視線を向け、よそ見をしてしまう。その隙を狙った触手が、黄土色の液体を飛ばす光景を目にしたノアは、彼女を押し退けて自身が代わりに回避する。


「あれは"酸"か?」


 黄土色の液体がノアの背後に伸びていた触手に当たった瞬間、跡形もなく溶けてしまう。数秒どころか、一瞬の出来事。彼は通信機のスイッチを入れて、


「触手の中に酸を放ってくるヤツらがいる。直撃だけは極力避けるんだ」


 各員にその情報を伝えた。丈夫な触手ですら秒で溶かされるのならば、人間の肉体など溶かすことは容易い。再生が間に合わない可能性も十分にあり得ることだった。


『私からも連絡! 触手の内部に"寄生虫"みたいなのを忍び込ませたヤツもいる! ソイツの特徴は――"通常の触手"よりも"色が濃い"よ!』


 後に続くかのように、ルナから情報共有がされる。辺りを軽く見渡して、色が濃い触手を探してみるが、


(…一匹もいない?)


 それらしきものは見当たらなかった。ノアは不審に思いながらも、雫たちと上へ上へと触手を伝っていく。


「っ――!? 下がりなさい!」


 ノアたちの前に、両翼を羽ばたかせ飛び回っていた神凪楓が立ち入り、


「ぐぅ――っ!!?」


 触手から放たれた雷撃をその身体で受け止めた。威力は楓の能力を上回るほど。彼女は予想以上の痺れに顔を歪めてしまう。

  

衝撃操作ショックオペレーション


 村正は神凪楓の右肩を掴んで強引に下がらせると、二刀流から衝撃波の繰り出して、雷撃を放ってきた触手を消し飛ばす。


「楓、大丈夫か!?」

「…えぇ、何とかね」


 神凪零が楓の身を案じると、彼女は右手で頭を何度か叩いてしっかりと気を保とうとする。


「こいつら、俺たちの能力を"コピー"しているのか?」 

「そうとしか考えられない…。私たちの戦い方を学んで、それを利用しようとしている。ほんとうに厄介な能力だね」


 ノアと雫はクラーケンの巨体を見上げてみる。目的地である頭部まではまだ程遠い。ここで足を止めている場合ではなさそうだ。彼らはすぐに足を動かそうとしたのだが、


「……!」


 海上から爆発音が連鎖するように鳴り響き、触手の上から海面を見下ろした。


「戦艦が、次々と破壊されている…」


 レーヴ・ダウンの兵士たちが操縦している無数の戦艦が、触手たちの猛威によって瞬く間に破壊されていく。


『救世主、クラーケンの攻撃がより激しくなりましたわ! わたくしたちだけじゃ、抑えきれません!』

「黒百合! 砲撃の目標を海上の触手にだけ集中させるよう指示を出し、全戦艦を後退させろ!」

『承知しましたわ。それでは、ごめんあそばせ』


 ノアは現場指揮の黒百合にそう命令を下して、一旦戦艦を下がらせるようにする。


「俺たちが触手と戦えば戦うほど、クラーケンは学習をして、その力を真似するようになる。早く片付けないと俺たちの方が全滅するぞ」

「そんなこと言われなくたって理解している。だから――」

『ノア!』

 

 そう言いかけたと同時に、今度はルナが通信でノアへ呼びかけてくる。


「どうした?」

『今どこにいるの?!』 

「クラーケンのちょうど半分の高さの位置だ! それがどうした!?」


 用件を尋ねるのだが、そこからしばらくルナの応答が返ってこない。ノアは何かが迫ってくる気配を察知して、その方角へ顔を向けてみれば、


「私を受け止めて…!!」  


 ルナがクラーケンの巨体に身体を掠らせながら、風を切る勢いで吹き飛ばされてきた。


「何してんだあいつは…!」


 舌打ちをしつつも、ノアはクラーケンの身体の上を垂直に駆け出す。


衝撃操作ショックオペレーション!」

「ないすぅ!」


 そしてすれ違う寸前に、ルナの身体に加わる衝撃を和らげて、そのまま前進していく。


「役割交代だ! ルナ、そっちは任せたぞ!」

「おっけー」


 クラーケンの右半身を担当していたノアと、左半身を担当していたルナがどっちか片方に固まってしまえば、少しの間でも戦力の偏りが生まれる。それが致命傷となり得るため、ここで場所を交代することで、その偏りを失くそうとしていた。


「…ノア!」

「手を貸せ!」


 ノアが走り続けていれば、その先に"合理化"状態の西村駿と木村玄輝が触手と戦っている姿が目に入る。二人は彼を見つけると、すぐに援護を求めた。


「あれが寄生虫を持った触手か…!」


 クラーケンの身体を強く蹴って、勢いよく飛び上がれば、二丁拳銃を連射し、触手たちを一本ずつ粉微塵にしていく。撃ち抜かれた際に、細長いハリガネムシのような寄生虫が何百匹も飛び出すが、


「失せろ」


 片手に対戦車擲弾発射器を構えて、辺りに大爆発を巻き起こす。黒焦げとなった寄生虫の死骸を横目に、玄輝と駿の隣に着地をする。

 

「こっちの戦況は?」

「俺と玄輝の二人でルナの護衛を。智花や吹たちには下の触手たちを相手させている…」

「けどかなり劣勢だ。いきなり触手が強くなりやがった。この状況がいつまで持つのか分からねぇよ」


 ナイトメア側もレーヴ・ダウン側と変わらない戦況。ノアは足元から迫る触手を二丁拳銃で処理しつつも、こう判断を下した。


「…他の仲間たちを、全員こっちに集合させろ」

「集合させる?」

「俺が一気にこの身体を駆け上がる。お前たちは邪魔する触手を全力で始末してほしい」


 更に悪化するのは時間の問題。ノアは地道に登っていくよりも、一気にクラーケンの巨体を駆け上がることが最適だと判断したのだ。


「おい待てよ。おれたちがここに集まったら、下にいる兵士たちはどうなる?」


 しかし今まで下で戦っていた他のメンバーが、全員ノアのいる位置へ集まれば、海面をうろついている触手たちを野放しにすることになる。抑えられていた犠牲者の数も、より増えるばかり。


「犠牲になるかもな」

「犠牲って…」

「戦況は決して俺たちが優勢じゃない。今すぐにでも決定的な一撃を叩き込まなければ、どうせ犠牲者は増すだけだ。その未来が見えているのなら、今ここで賭けに出ることが賢明だと思う」


 玄輝と駿はお互いに視線を交わし、渋々頷きそれを了承する。ノアは右耳に付けた通信機でルナへと呼びかける。


「ルナ、お前のいる位置に七元徳を全員集合させろ! 俺とお前でクラーケンの身体を一気に駆け上がる!」

『え? でもそんなことしたら――』

「どうせこのまま粘ってもジリ貧だ! 捨てる覚悟を決めろ!」


 彼女はノアにそう言われ、数秒後に「分かった」と意を決した声で返事をした。


「デコード、レーヴ・ダウンとナイトメアの全戦艦を下がらせるんだ!」

『了解、しばらく時間を稼いでくれ』


 海面に浮かんでいた戦艦が、すべて後方へと下がり始める。その間にも三人は、絶え間なく襲い来る触手を対処していた。


『…全員下がらせた!』

「分かった! 七つの大罪、すぐに俺たちのところまで来てくれ!」


 ほんの数分で残りの大罪である、金田信之・鈴見優菜・波川吹・白澤来・内宮智花の五人がノアたち三人と合流する。


「ルナ、同時に駆け上がるぞ。準備はいいか?」

『こっちは大丈夫だよ!』


 ルナの返答を聞いた彼は玄輝たちを一望すると、ゆっくりと頷いて、


「行くぞ!」


 ノアを先頭に、七つの大罪が後に続いてクラーケンの左半身を一気に登り始める。

 

「…やっぱり来るよな!」


 当然だが、前方には待ち構えている無数の触手が、後方には追いかけてくるしつこい触手がノアたちの行く手を阻んだ。


「カースドグール」


 そこで内宮智花がノアより前方に飛び出して、能力で虫たちを器用に操り触手たちを喰らいつくす。


「進んで、ノアくん!」


 智花がそこで触手たちを引き受けて、ノアたちへ先に進むよう促す。


「エルガープロス…!」


 次に後方から迫りくる触手を、波川吹が能力で炎の塊を落として炎上させてしまう。


「行くんや、ノア!」


 吹は双剣を振るって、触手たちを押さえながらノアたちへそう叫んだ。


「フィストォォォー…ブロォォォーー!!」


 前方で束になって行く手を阻む触手たちを、白澤来は能力で自身の身体を最大まで強化をすれば、渾身の左拳を突き出して、それらを消し飛ばしてしまう。


「ガンガン進みな、ノア!」


 白澤は残りの触手たち殴り飛ばしつつ、ノアへ怖気づくことなく進むよう鼓舞をした。


「――明けの明星」


 西村駿は能力によって空に浮かばせた一つの星を隕石に変貌させ、ノアたちを取り囲んだ触手に攻撃を始める。高熱の隕石に直撃した触手は、次々と破裂する。


「頼んだぞ、ノア!」


 白銀の剣を構え、駿はノアへ後のことを託す。


「虚眼」


 能力で七色の瞳を操る鈴見優菜は、左右から挟み込んでくる触手を硬直させた。


「倒してきて、ノアくん!」


 青銅の槍を片手で巧みに扱いながら、ノアへエンディングを任せる。


水流ウォーターフロウ!」


 並列になって前方から詰め寄る無数の触手を、金田信之が能力で水の矢を一斉に撃ち出して、跡形もなく塵にしてしまう。


「頑張って、ノア!」


 それだけ伝えると信之は鍵盤に指を走らせ、背後からとてつもない速度で追いかけてくる触手たちと向かい合った。


「後少しなのに…!」

 

 目標である頭部までの距離が残り僅かとなったが、そこで先ほどよりも遥かに膨大な量の触手が出現する。しかも色が濃いタイプ。寄生虫を体内に潜めている厄介な触手だ。


「うおらぁ!!」


 木村玄輝は赤黒い剣を全力で触手たちに向けて投擲する。くるくると勢いよく回転をする剣は、触手たちを斬り裂いて、その向こう側まで貫通をした。


位置交換ポジショントレード!」


 玄輝は能力で剣と自分の位置を入れ替え、触手たちの向こう側まで辿り着くと、


「行ってこい、ノアッ!」

 

 もう一度能力を発動して、今度はノアと自分の位置を入れ替えた。


「任せておけ」

  

 玄輝はそのまま回転を続けていた赤黒い剣を掴み、触手たちを交戦を始める。ノアは振り向かず、立ち止まらず、クラーケンの巨体の上を走り続ける。

 

「…ノア!」

「ルナか!」


 クラーケンの頂点である頭部まで辿り着けば、ルナもほぼ同時にその場へ姿を見せた。 


「ここからどうするの!?」

「全力でこいつの頭をぶっ飛ばすだけだ!」


 クラーケンの頭部は他の箇所よりも皮膚が柔らかい。ノアとルナは全力の一撃を叩き込むための構えに入る。 


「全員聞け。俺とルナが三つ数えた後、持てる力のすべてをクラーケンにぶつけろ」


 彼はより確実性を上げるために、通信機で他の者たちへ連絡を入れた。返答はなかったものの、海上に浮かぶ戦艦の砲台がクラーケンへ狙いを定めている。 

   

「――スリー」


 ルナは左拳をクラーケンの頭部に密接させ、ノアは宙を舞った。


「――トゥー」


 彼は空中で何度か回転をして勢いをつけ、彼女は大きく深呼吸をする。


「――ワン」


 ノアによる全力の踵落としと、ルナによる密接させた左拳の一撃。戦艦の集中砲火と、七つの大罪に七元徳の連撃。


「「「「堕ちろぉぉぉぉーー!!!!」」」」


 その戦いに身を投じる者、誰もがそう叫んだ。空気が大きく震える中、クラーケンの頭部は潰れるどころか内部へとめり込んでいく。 


「グ"ギ"ャ"ァ"ァ"ァ"ア"ァ"ァ"ーー!!!」


 揺れることすらなかった巨体が、悲鳴を上げながら後方へとゆっくり倒れていく。触手たちの動きもそこで止まり、海底に潜めていた口元が、海面へと露になっていく。


「今が好機だ…!」

「そうだね! 早く乗り込もう!」


 二人はクラーケンの身体を一早く飛び降り、クラーケンの口元が浮かび出る場所に近い戦艦へ着地をする。そして通信機にこう連絡を入れた。


「よくやった、作戦は成功だ。後は俺とルナに任せてくれ」

『待て。君たちは二人だけでクラーケンの体内へ乗り込むつもりか?』

「うん、私とノアだけで十分だからね。他の皆はまたクラーケンが起き上がった時の準備をしておいて」

『ノア、ルナ。私はそれに同意しかね――』

 

 ノアとルナは通信機の電源を一旦切り、クラーケンの口元を見つめる。


「行こうか」

「…そうだね」


 二人は取り敢えず一呼吸入れると、クラーケンの粘液まみれの口の中へ飛び込んだ。

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