【アプローチ】

あんどうくん、おはよう」

「おはよう、あさくらさん」

「ウフフ♪」


(彼とあいさつするのも自然とできるようになってきたわね。そろそろ、私も次のステップに移ってもいいんじゃないかしら? そう例えば……一緒にお昼ご飯を食べるとか!

 安藤くんって、いつもお昼休みはか行くけど、考えたらお昼休みって一番長い休み時間なのよね。そこで、私は考えたわ! お昼休みに彼をご飯に誘えれば、今までより沢山ラノベの話が出来るんじゃないの!?

 でも、問題は彼が私の誘いに乗るか……よね。いやいや、弱気になったらダメよ! ここは強気にアプローチを仕掛けるのよ!)


「あ、安藤くん!」

「え、何? 朝倉さん」

「えーと……」


(はうぅ……しよぱなから、お昼を一緒にする約束を持ちかけるのは……流石さすがに急ぎすぎよね? まずは無難な話題を出して、相手のガードを切り崩すのよ!)


「あ、あんどうくんって……お昼休みはいつもで食べるのかしら?」

「アハハ、何だそんなことかぁ~……」


(や、めろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 ぼぼぼぼぼ、ぼっちにそれを聞くんじゃない!

 あさくらさん……それは全世界の『ぼっち』にとって絶対に聞いてはいけないこと第一位の質問だぞ! いいかい? ぼっちはいつもリア充が活発になる休み時間に安息の地を求め、毎日一人になれる場所を探しているんだ。まぁ……具体的に言えば休み時間は近所のコンビニで適当なおにぎりとか買ったら、ひとのない駐車場とかでラノベ読みながら、ご飯を食べているんだけど……。

 そんなこと、朝倉さんに言えるわけないだろぉおおおおお!)


「え、えっと……コンビニとか外に出てブラブラしてる──かな?」

「へぇ、そうなのね。でも、どうして教室で食べないの?」

「だ、だって……お昼休みになるとか俺の机消えるし……」

「なんか……ゴメンなさい」

「……うん」


(クッソォオオ──ッ! だから、この話題は嫌だったんだよ! 何でクラスのリア充は人の机を無許可で借りていくの!? レンタル料払えよな!)


「そうだわ! そ、それなら~」

「ん?」

「次に、安藤くんの机が無くなった時は……わ、私が安藤くんに机を貸してあげるわ!」

「……へ? そ、それは?」

「か、勘違いしないでよね! 私は安藤くんが本をくれたお礼をしたいだけで……べ、別に特別な理由とかはないんだからね!?」

「そ、そうだよね! あの朝倉さんが俺みたいなクラスの『ぼっち』にどうこうなんてありえないよね!」

「そ、そうよ! そうに決まっているでしょう!」


(キャァアアアアアアア! 私ったら、また何てテンプレなツンデレなセリフを言っているのよぉぉおおお! これじゃあ、私の気持ちがあんどうくんにバレちゃうでしょう!)

(あっぶねぇええええええ! 危うくあさくらさんが俺のことを『好き』なのかと思い込む所だったぜ……そ、そうだよな! 本を上げたお礼だよな!? いくらなんでも『学校一の美少女』の朝倉さんが俺のことを……あ、ありえないよな!)


「……え、えへへ」

「……あ、あはは」



「………………」


(二人のやり取りを見てたけど……何あれ? 爆発すればいいと思うわ)


「委員長、先生が次の授業で使うプリント配っておいてだって」

「ええ、ありがとう。今やるわ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る