「今日、朝（あさ）倉（くら）は風（か）邪（ぜ）で欠席だ」

「朝倉さん風邪だって」「そうなのー？」

「マジやばくない？」「かわいそう」「心配どすなぁ……」

（朝倉さん、風邪引いたのか……。朝倉さんは人気者だから、男子はガッカリしてるし、女子も皆（みんな）が心配してるな。男子だけでなく女子からも人気だなんて、朝倉さんは凄（すご）いや。もしこれが俺なら、きっと誰も俺のことを気には留（と）めないだろうからなぁ……）

「今日は静かだ……」

（俺が『ぼっち』なのはいつものことだけど、隣に彼女がいないだけで……何で俺は『寂（さび）しい』と思っているのだろう？　今までこんなことはなかった。しかし、それを『寂しい』と感じてしまうほど、俺はこの『休み時間』を気に入っていたのだろうか……）

「──っと、言うわけで、朝倉の家を知っている奴（やつ）はプリントを届けてやれ」

「はい！　俺、行きます！」「アホ！　抜け駆けさせるか！　俺、俺が行きます！」

「俺だ俺だ俺だ俺だぁあああああああ！」「ウェーイ！」「僕も！　僕も行きます！」

「まぁ、誰でもいいんだが……因（ちな）みにお前ら、朝倉の住所は当然知っているんだよな？」

「「「「「知りません！」」」」」

「却下だよ……。おーい？　誰か他に、朝倉の家を知っている奴はいないか……？」

（……だから、だろうか？）

「あ、えーと……先生、俺が届けます」

（──『彼女に会いたい』そう思った俺は……気づいたら、その手を上げていた）

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