国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~

ゆにろく

Ⅰ 研修編

Prologue

 深夜2時。

 埠頭にある大きな倉庫の入り口には男が三人いた。


「よぉ、兄ちゃん。中で何やってんの?」


 真っ黒なスーツに身を包んだ、目付きの鋭い長身の男──伊佐奈いざな 紅蓮ぐれん──は、倉庫の入口で番をしていた男二人に声をかけた。


「……おいおい、どうするよ」


「カタギじゃねぇか? 顔はイカついが」


 男二人はいかにもヤクザという風体だった。


「なぁ、中で何やってんのよ? いーじゃねぇかよ見せてくれても──」


 紅蓮がそう話しかけた次の瞬間、男の一人は拳銃を抜き、紅蓮に向けて撃った。紅蓮は頭から血を吹き、後ろに倒れこむ。


「あーあ、殺っちゃった」


「仕方ねぇだろうが。見た奴生きて帰せねぇし。海がそこにあんだ、コンクリ詰めして捨てちま──」


「いってぇなぁ……」


 紅蓮は、何事も無かったかのように立ち上がった。


「は?」


「このご時世に、そんな簡単に引き金引くなよ……」


 軽い口調とは裏腹に頭は真っ赤に染まっている。無論、自身の血である。


「死んじまうだろ?」


「う、うわぁぁぁぁ!!!」


 男二人は弾がきれるまで、紅蓮に向かい、発砲し続けた。


 ◆◆◆


「何事だ!!」


 倉庫から、ぞろぞろと顔に傷やらが入った、いかにも・・・・な男が出てきたとき、紅蓮の他に立っている人間は外にいなかった。


「な、なんだお前?!」


 紅蓮のスーツは弾痕によってボロボロになり、自身の血で赤黒く染められている。


 ──彼は死なない。


「『黒葬こくそう』執行部対人課、伊佐奈紅蓮。治安維持のため、お前ら全員葬らせてもらう」


 この一時間後、倉庫にいた人間は一人残らず・・・・・死に、立っていたのは紅蓮のただ一人だった。

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