溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
蝶野ともえ
プロローグ
プロローグ
花が好き。
どんな時も癒してくれ、見るだけで元気になれる。
道端や花壇で懸命に咲いている花も花屋でお客さんを待つ花も、幸せな人に持たれ誇らしげに咲くブーケの花も、そして少し枯れそうな花も………。
どんな花も魅力があり、枯れてしまっても「元気にしてくれてありがとう。」と思える。
そんな花が大好きだった。
けれど、今日は違った。
初めて、花を見ても何とも思わなかった。
まだ春になったばかりの冷たい雨が降る中も賑やかに咲くタンポポ。それを見ても笑顔になる事はなかった。
「これから………どうしよう。」
そんな風に思うだけだ。
どんなに花が好きでも、花を世話しても花は助けてくれない。
ただ「私を見て。」と言うだけだった。
そのタンポポに手を伸ばして、ブチッと茎を切りタンポポを掌に乗せた。
雨に濡れた手にタンポポの悲しげな緑の汁がついた。それも雨水によって流されていくが、鼻にはいつまでも青臭い香りが残っている。
感情のままにそのタンポポを握りつぶそうと指に力を入れる。
けれど、花びらに指が触れた瞬間、冷たいはずのタンポポが妙に暖かいのを感じた。
そこには、知らない人の手があった。
その温かさを知った時。
自分はもうこのぬくもりから離れられない。
そんな予感を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます