第52話11月14日 普通の人並みがどれほど大変かということ

11月14日

病室に 入る時はそれなりに楽しく 俺も前向きな気持ちで一緒にリハビリ改め 筋トレを頑張るのだけれど こうして家に帰って 夜を過ごし朝を迎えると とてつもなく気が滅入る

色々思い返すと 結局この気が滅入るっていうのは これからの 色々なことが大変だとかなんだとかということよりも 自分の不甲斐なさであるとか 醜悪さであるとか これまでの中身の ない 人生でやるとか そういったものを見てしまう それに気が滅入って いるんだ

ちょっと振り返ると 結局俺の とんでもない小心者なところが 問題なんだろうなーとか

昔から変に変わったことを してきたのだけれど それには二つの 道筋があって

一つは自然にこうしたい と思うことをすることで結果的に 変わった行動をとってしまう

人とずれてることが よく分からなくて 頭を抱えた部分もある もう一つが面倒くさくて 会えて変わったことをしたい 変わった人になりたい その意識で 岩がひねくれるように 違うことをする

ひねくれたわけではないのだけれど 他とは違うことをしようとした

これには多分理由があって 幼い時父が倒れ半身不随になった それから家は 結構な勢いで ぐちゃぐちゃで 土日祝祭日は大概 大喧嘩

大喧嘩というよりも 父親が暴れ弟が反応し母が泣き

また同居していた叔父がいるのだけれど ちょっとした物音を立てただけでうるさいと怒られたり 母の作る料理を上から否定したり それでいながら父はその叔父の 夕食などの予定を最優先する

結局俺はその伯父の隣だった部屋を捨て 応接間へと移動し 中学1年生の7月8月だったかと思うんだけど それからしばらくの間 その応接間で寝泊まり することになった

今そういうグダグダがあったわけだ

そこでちょっと言い訳がましくなるけれども俺は誰かのせいで 俺の人生がこうなった と、一生思い続けるのは嫌だったので 必死になって自分で何かを選択して自分の選択で生きようとしていた

それ自体は間違いではなかったと思うがその考えから発生してなのか

自分自身を何とか確立しようという気持ちからまた家がこんなだけど 俺はすごいよというの言いたいのか あえて変わったことをして 俺のアイデンティティを確立させようとしていた向きがある

そうでもしなければ 俺はどこにもいないような気がしていた

例えば 大学を卒業して会社員になって 家庭を持って と順風に行けばそれはそれで良かったのだと思うけれども

そしたら俺は何なんだろうかと

人並みの 青春が送りきれなかったのは間違いないことで

それなのに 行く道も ありふれた場所につながるならば

俺の人生の形は誰かと同じものでしかないのではないか

熱く青春時代の話ができるわけでもない

今となってはその普通の人並みがどれほど大変かということが身にしみるのだけれど

当時は、だから何か変わったことをやりたかったし

それが俺の人生だと胸を張りたかった

なんだろうね

自己顕示欲かもしれないし人生の自己補完なのかもしれないし

それが間違いだったというのは間違いないことで

困ったものだ


ここから 巻き返すことができるのかどうかと言うと できないでしょう

現実的に

俺一人ならまだしも

ほらそれがいいわけだよと叱られそうだけれども

一番の問題は 巻き返した先の絵が全然見えないことなんだな

もう俺にはどうなりたいのかがない

どうなりたいと言ったところでなれるものではないのだけれども

自虐だとかそういうことかもしれないし そうではないかもしれないし

今から1年後2年後3年後 どうなっているかなんてのは 本当に分からない

それが当り前だと言われたところで

母の半分がなくなったことが当たり前だと言われているようで


いよいよ俺の体力に限界がきそうです。

が、病院通いはやめたくないのでもうちょっとだけ無理をします

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