十四 大雁塔(二)
きみたち、
唐の偉いお坊さんで、十六年かけて
玄奘法師が持ち帰った経典を納めるために建てられたのが
え? 三蔵法師? 西遊記?
そうか、玄奘法師が書いた『
天を
わたしたちは壁に空けられた穴のような窓から眼下に遥かに広がる長安の街を見て息を飲んだ。
これが世界一の都!
世界の中心に、いまおれたちはいるのだ!
在唐留学生は仲麻呂に話しかけた。
「仲麻呂、きみは本当に科挙に挑戦するつもりか?」
「はい」
「きみの名を聞いたときは驚いたよ。
在唐留学生はふっ、と寂しそうに笑った。
「情けない話をしてしまったが、これが留学生の真の姿だ。知っておいてほしかった」
「教えてくださってありがとうございます」
「科挙か……考えたこともなかった。日本人にも受けられるものだなんて思っているのは、おそらく天下広しといえども
わたしたちは階段を下りていった。
塔の入り口から差し込む外の光が見えてきたところで、在唐留学生は壁を指差した。
「ご覧、科挙の中でも一番難しい
わたしたちは壁の文字群をじっと見つめた。
仲麻呂が静かに答えた。それはいままで聞いた中で一番低く男らしい声だった。
「
その瞬間、わたしの目には壁に刻まれた「朝衡」の二字がはっきりと見えたのだった。
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