No.094 現実はザンコクだ



 剣舞祭の3日目にして、僕の第2試合。

 相手は十二賢者にして、自称2冠に近い人らしい。


 ティアラは中々攻撃してくる気配がない。

 どちらか、と言うと様子を伺ってるって感じかな?


「そこだぁ、ウァワ」


 ズズズズー、と音を立てて僕の前に滑って来た。

 なにかに転けたようだ。

 一応、黒鬼を首元に軽く当てて、


『しょ、クックックッ。勝者、ほ、ホーズキッ』


 チェリーは笑いを我慢しながら勝者の合図を鳴らした。

 そのチェリーの我慢笑いが引き金となったのか、会場は笑いに包まれ、ティアラは林檎のように顔を紅く染めた。


「ドンマイです」

「く、屈辱!」


『ならティアラさん。魔法の勝負はいかがですか?』


 チェリーは昨日の事を相当根に持ってるみたいで、ティアラをけしかける。

 もちろん、負けたティアラはというと、


「いいですね、いいでしょう。十二賢者である私が本気でいきます!」

「ですよねー」


 断るわけないよな。


『それでは急遽、ホーズキ対ティアラの魔法試合を開始します。始め!』


「小手調べに、氷よ」

「宝玉の力よ」


 氷の杭が何本か飛んできたから、天気を晴れにし、一瞬にして気温を上げる。


「脆い」


 僕の所に来る頃には氷は払うだけで砕け散る。


「流石に暑いな。ティアラ、お前に合わせる」


 気温を下げて雪を降らせる。

 次にティアラの場所だけに雹を降らせてみるが、避けるは避ける。

 全然少しも当たりはしない。


「氷よ」


 ティアラは次に地面から氷の杭で体を貫かんと伸ばしてくるが、


「怠惰に」


 地面から出てきた世界樹により壊され砕かれる。

 そのまま、世界樹はティアラを捕らえんと伸びて、氷で抵抗するも効果が無く捕まった。


「僕の勝ちだよね?」

「ま、まだ負けてなん――――」

「――――なら死ね」


 端的にそう言う。

 そして、世界樹はティアラを引き裂こうと少しずつ少しずつ四肢を引っ張っていく。


「ぐ、ガァァァ」

「降参しないようだから実験させてもらうね」


 ティアラの腕に軽く切り傷を付けてそこに砂を塗る。

 そして、「憤怒」の力で砂を大きく大きくしていき、


 ――――グジョッ


 ティアラの右腕は荒々しく弾けとんだ。

 これは拷問に使えそうだな。


「あれ? 痛みで失神してる。世界樹 甘天の雫」


 ティアラの傷は一瞬にして癒えて、ただ眠っているだけになった。


『しょ、勝負、ホーズキ』


 勝ち方が勝ち方だっただけにブーイングの嵐になったのは言うまでもない。



 ※



 夜と呼ぶには早い時刻で18:00になった所だ。

 今日も今日とて開店前なのに屋台には凄い行列が出来ていた。


「ホーズキ、後手伝う事はー?」

「んー、とりあえず大丈夫。味見してくれ。シャルもチルもヤードもアイリスも、もう大丈夫だよ」


 なんだかんだ合ったが、ムウとヤードは屋台を手伝ってくれることになった。

 みんなに試食用を食べさせてみると「美味しい」と好評で安心した。


 それから途切れる事のないお客と、足りなくなってくるポップコーン。


 そして今日は本当に、


「ここで売り切れでーーーす」

「うがぁぁぁぁ、なんで! なんでなんですか! 昨日も私が来たときには売り切れって。酷いじゃないですか。今日こそは、って楽しみにしてたのに」

「申し訳ありません、お客様。また明日のご来店をお待ちしてます。シャルたち。5秒で支度して」


 チェリーが最後の後の客で、本当に運悪く貰えない状態。

 ここに居ても厄介事がくるだろうから急いで逃げるための準備をさせる。

 5人の協力があり、逃げるようにしてお祭りを後にした。

 


 ※



 剣舞祭4日目。

 今日の試合で決勝に進む人が決まる。

 

『ホーズキ対ルトリア・シャードルの試合、開始!』


 凄い酷いほどの適当っぷり。

 なんか相手も、ルトリアも適当に呼ばれてて可哀想だ。

 ルトリアは白い髪が特徴的で覇気のあるおじいさん。

 それなりに強そうで、結構な数の死線はくぐり抜けてきただろう。

 そんな強靭さが目から滲み出てる……睨まれてる?


「始めよう、小僧」

「黒鬼」

「神器エスクキャリバー」


 それは金に輝く剣で、尋常じゃないほどの力を秘めているのがわかる。

 それと、名前が「エクス・・キャリバー」じゃなくて「エスク・・キャリバー」なんだ。


「ふんぬ」

「チッ」


 一瞬にして距離をゼロにまで縮められ剣を叩き込んでくる。

 この人、ルトリアが使う剣は斬るというより、叩くや打つの方が正しい使い方だ。

 それを黒鬼にで防ぐが、神器として力を与えているのか膝を折って地面についてしまう。


「陽法 黒の太刀 断絶」


 その状態から無理矢理刀を振り切り距離をとる。

 流石と言うべきか、神器なだけあって壊せなかった。


「陽法 無の太刀 無刀真剣・投擲」


 遅い小手調べとして、見えない刀を何本か飛ばすが、気にする様子もなく突き刺さる……?

 避けもしないし、特に対処もしない様子。

 力を込めれば止血出来るんだ!と言わんばかりの覇気が放たれる。

 いや、


「実際、止まるんだ」


 浅く傷をつけたのに止血された。

 それも強引と呼ぶには弱いくらいの方法で。


「面白い技を使うんだな。が、まだまだ甘いと言えよう。元七聖剣が1人ルトリア、参る」

「えっ」


 その瞬間、僕の中でなにかが変わった。

 ルトリアの大振りな、それでいて音をも斬る剣が僕に迫るが、寸の所でかわす。

 それに合わせて、


「陽法 朱の太刀 乱舞」


 ズシャッという音でルトリアから血が吹き出る。


「面白い、面白いぞ、小僧」

「陽法 紫の太刀 冥灰道」


 ルトリアの言葉に技で答える。

 地面を抉るほどの斬撃がルトリアを捕らえた。

 なぜ避けない?

 ルトリアほどの力があれば勘で避けられるはずだ。

 なにか理由があるとでもいうのか?


「今のは強かったな」

「効いてる? けど足りない、か」

「ふんぬ」


 また一瞬にして距離を縮められた。

 それも、さっきより早いスピードで、だ。


 重い重い一撃を刀で流すように受ける。

 それを何回も何回も繰り返す。


 ――――ゴクリ


 そんな観客の息を飲む音さえも聞こえるほど静かな会場。

 剣と刀がぶつかり合うにも関わらず、音すらもしないという異様な光景。


「どうした、攻撃してこないのか?」


 とうとう静寂に耐えきれなくなったのか剣を打ち込みながら効いてくる。


「はい。攻撃しないで一撃で仕留める必要があるみたいなので」

「気がついた、か」

「えぇ」


 ルトリアは最初より格段に早さや力が増している。

 最初は力を抜いていた様子もなかったのだ。

 そして、冥灰道を受けてから嫌なくらい力が増したのだ。


「そこまで辿り着いたなら答えをやろう。四肢を斬れば流石に攻撃できん」


 ですよわねー。

 わかってましたよ、その答えに辿り着いていましたよ。

 それ以外におじさんを止めれそうにないのは戦っててわかるから。


「だからこれで仕留める。陽法 新・黒の太刀 絶壊」


 神器である「エスクキャリバー」を斬る。

 絶対に斬られないと思っていたのだろうな。

 ルトリアの顔が驚愕に染まっているんだから。


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