No.086 果てのクニ



 軍国ルベルト。

 軍国ルベルトの隣は魔法国家ベルトがあり、その他は海に囲まれた「最果ての国」と呼ばれている。

 紫の太陽時代、他国から輸入した軍具で飛躍的な成長を遂げたが、元の太陽に戻ると同時に他国との関係が途絶えた為、軍具を直す事も出来ず、古代遺産、古代兵器と名前を変えて使われるようになった。


 そんな、ルベルトは古代遺産がつきかけて、直す事も出来ず、国の存亡の危機に陥っていた。


 そんなルベルトには未来を見る事が出来る少女がいた。

 名をアイリスと呼ぶ。

 市民は彼女の事を『希望の神子みこ』と呼び、軍からは『破滅の神子みこ』と呼ばれている。


「なんで、なんで私が」

「黙れ! 未来が見えると言うから生かしていたのに、この国は破滅するだと?」

「そ、そうです。このままでは、紫の太陽時代のユリエーエの二の舞になってしまいます」


 ユリエーエの二の舞。

 それは、何を隠そう葛が起こした暴走だ。

 そして、今、葛は軍国ルベルトに向かっている最中。

 図らずとも、破滅には1歩ずつ近づいている。


「チッ。何が希望の神子だよ。やっぱり破滅の神子なんだ」


 そんな声が、アイリスが捕まる牢獄に響き渡る。



 ※



 所変わってユリエーエ城。


「お父さま、お願いがあります」

「聞かん!」

「き、聞いてください、お父さま」

「聞かん! 聞かん!」

「お願いです、お父さま。私のワガママを聞いてください」

「聞かん! 聞かん! 聞かーーん!」


 駄々を捏ねる王さまと、お願いを聞いてほしいシャル。


「本当に、聞いてくださらないのですね?」

「……わかった。聞くだけ聞こう」

「あ、ありがとうございます」


 満開の花のような笑顔を浮かべて喜ぶシャル。

 そんなシャルの願いを絶対のぜーーーーったいに聞きたくない王。


「で?」

「私、留学したいんです!」

「……どこに?」

「えっと、軍国ルベルトです」

「魔法国家ベルトじゃダメなのか?」

「はい! 軍国ルベルトがいいんです」


 力強く言い放つ。

 理由はもちろん剣術の修行の為だろう。


「理由を言ってくれ」

「はい! 理由はカズラと会う為です」


 シャルは本音と建前が逆になってる事に気がつかぬまま、5分。


「なので、私は軍国ルベルトに、カズラに、会いに……行きたいです」


 最後の方は、気がついたのか声が小さく王でも聞き取れなかった。

 王は親バカであったが為、渋々、本当にウルトラスーパー渋々承諾したのだった。


 また、軍国ルベルトの破滅へのピースが1つ揃った。



 ※



 魔法国家ベルト。

 その中心地となっている魔法大学校。

 魔法大学校とは名ばかりに、研究施設として使われていて、この国のトップは、魔法大学校の所長でもある人がしている。

 そんな所長室で、


「来たか」

「は!」

「ルベルトでは、今良からぬ噂が出ている。なんでも、人を兵器に変える実験をしているとか」

「それは残酷な」

「そこで、だ。魔法大学校の中でも特に優秀で、十二賢者でもあるお前には、ルベルトに潜入に、それが本当か確かめてもらいたいんだ」

「かしこまりました」


 魔法使いの女はそれを了承する。

 が、女の思ってる事はちょっと違い、


「(これってアレだよね。遠回しな休暇を与えるって事だよね? 素直にそう言ってくれればいいのに。まぁ、休暇なら、軍国ルベルトの観光を楽しもう。そうだ、所長へのお土産は何がいいだろう?)」


 そんな風に考えを巡らせているのを見て、


「ティアラ。真剣に考えてくれてるようでよかったよ」

「はい!」


 また、軍国ルベルトの破滅へのピースが1つ揃っていく?



 ※



 WonderLand.

 ヤシの木が1本しかない無人島にしか見えない国。

 またの名を「地下帝国」と呼ばれ、無人島の下には広大な地下帝国が広がっている。

 そこにある、1つの大きな城。

 名を「不思議の城」という。


「そろそろか?」

「そろそろでしょうね」

「そろそろなのか」

「そろそろ?」

「そろそろ、頃合い」


 ワンダーランドの5人のトップ。

 権力を5つに訳て、独裁的な事を出来なくしている。

 5人とも仲良く、そもそもの問題として意見が一致しがちなのであまり意味がなかったりするが。


「ねぇ、そろそろって何がそろそろなの?」

「そろそろ軍国を潰せるかなーってね」


 何がかを理解していない、マジシャンのような格好の男の子。

 それに答えるは、耳が尖っていて、人形を抱えた女の子。


「潰しちゃうの? なんで?」

「だって目障りじゃん。自分の国は強いんだ。だから従えって感じで」

「なるほど。じゃあー潰すぞーー!」

「行ってくれるの?」

「うん。楽しそうだから行ってくるよ」


 マジシャンな男の子は嬉しそうに部屋を出てった。


「じゃあ誰かついていって。ムウだけだと心配だから」

「じゃあ私が」

「ありがと、ミス ヤード」


 ミスリルの鎧に身を包んだ女性。

 腰にはいくつものレイピアがかけてあり、鎧の体部分は穴が4つほど空いているが、なんの為かは誰も知らない。


 また、軍国ルベルトの破滅へのピースが2つほど揃っていく。



 ※



 シャードル帝国。

 帝国王室。


「情報です」

「どうした?」

「ユリエーエ国のシャル・ユリエーエが軍国ルベルトに留学するそうです」

「ほう、それは本当か? と聞くのは野暮だな。よし。今すぐ準備をしろ。我が姫をお迎えに行かなくては」


 無精髭を生やした白髪のおじさん。

 元七聖剣の1人で、「破戒」の2つ名を持つ男。

 幼少のシャルに惚れ込んでいる。

 剣術の腕が衰えて七聖剣を引退後は、祖国であるシャードル帝国に王として戻ってきたのだ。


 また、軍国ルベルトの破滅へのピースが1つ揃った。



 ※



 船に揺られる事1週間。

 船には何もなくとてもとても暇だった。

 風魔法とかで早くはなってるらしいけど、機械には劣る、って風が弱いんだろうね。


「結界陰法 抵抗無効」


 この海賊船の空気抵抗と、水の抵抗を無くす。

 これで結構速度が上がったな。

 モーターボートぐらい早まったけど、まだまだ遅いよな。


「怒りに任せて」


 天候を操り追い風を作り出す。

 これにより、水切りの要領で海賊船は水の上を跳ねながら進んでいく。

 結構荒ぶってるせいで、船酔いする人が続出するが、問題ないでしょう。



 ※



 軍国ルベルト。

 

「到着ーーーー!」

「か、カズラ殿。あの船ってカズラ殿が?」

「うん。だって暇だったから早くついてほしくて」

「な、なるほォロロロロロロ」


 うわーー、ピエールは船酔いしてるのか。

 解毒で治せるかな?


 「回復陰法  状態完治」

 かけてみると、すぐに調子を取り戻したから、効いたようだ。

 よかった、よかった。


「んじゃ!」


 ピエールにこれ以上ついてこられるのは嫌だ。

 だって中年おじさんだよ?

 これが女の子だったらまだ良いけどさ。


 路地裏に入り、認識阻害の陰法をかけておく。

 これでピエールにバレるなんて事はないだろう。


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