No.064 形のないヤクソク
ドワーフの大陸、エクスターチ。
そこにある1つの国、エクスプアール。
「こちら石上ドーラです」
『ドーラちゃんか? よし、通行許可をすぐに出す』
マイク越しに会話する石上。
僕と喋る時よりハキハキしていてなんか悲しくなるな。
目の前に見える大きな鉄? の壁が大きな音をたてて船が通れるだけ開いていく。
その間を凄い操縦技術で通っていく石上。
そのまま停船場に止めてから石上を先頭にして船から降りる。
「おおー、ドーラちゃん。とお友達かな?」
「お久しぶりです、ルドルフさん」
「これは勝手に乗っていかれた船か。持って帰ってきてくれてありがとな」
「いえ。それでパパは?」
「お父さんなら色々な取材を受けてる所だよ」
「取材を?」
「ありゃ? ドーラちゃんは知らないのか? お父さんがレベルSダンジョンをクリアした事を」
「「「そ、そうなのーー!」」」
僕を含め全員が驚いた。
石上のお父さんはそれなりの実力者って事は知ってたけどそこまで凄いとは。
または難易度が簡単な場合か。
「じゃあ皆ついてきて」
石上が先を歩きエクスプアールに足を踏み入れる。
そこはまさに別世界。
数々の高層ビルがあったり、車は宙に浮きながら走ったり、歩道は自動となっていて文化の違い、文明の違いをマジマジと実感させられる。
石上はそれが然も当たり前かのように何も言ってこない。
いや、当たり前なのだろうけどね。
「凄いね、ほ、鬼灯くん」
「そうだね、宮野」
僕は結局と言うべきか、胸に開いた穴を埋めるかのように宮野を吸血鬼に変えてしまった。
いや、当然か。
何も間違っていない。
宮野は吸血鬼に興味があって、吸血鬼に成りたいと言ったのだから。
僕はその願いを叶えただけだ。
それだけだ。
「ここだ、よ?」
ついた場所で石上は疑問系になっている。
そこは豪華絢爛で高級ホテルか、と思えるくらいのきらびやかさ。
「こ、ここのはずなんだけどな」
「なにか違うの?」
「エリーちゃん覚えてない?」
「言われてみればこんな豪華じゃなかったよね」
エリーと石上は種族は違うけど幼馴染みでお互いの家には言った事があるようで仲良く話している。
「あら、ドーラ、なの?」
「ママー!」
石上のお母さんは人間で色々な食材を抱えていた。
「お友達も一緒なのね。けど学校はどうしたの?」
僕はその言葉を聞いて忘れていた物を、者を思い出した。
「ココナ先生忘れた!」
「「「「あーーーーー!」」」」
皆もココナ先生は記憶からは消されていなかったけど忘れていたようだ。
「誰も見てないんだよね?」
「うん。それに捕まってなかったよ」
僕の質問に宮野が食いぎみで答える。
「まぁ、なにか大変そうだけど立ち話はあれでしょ? 上がっていいわよ」
石上のお母さんの提案に従い石上家に上がらせてもらう。
タワーマンションの上5階が筒抜になっていて、そこが石上家の場所だった。
部屋は10以上あったから数えるのを止めた。
トイレも5個以上あるしどんだけお金持ちなんだよ、って思うわ。
「さて、先生だけどさ。僕が暴走しちゃったから生きてないとおもうんだよね」
僕が思っていた事を言う。
けど、それだと辻褄が合わないのはわかっている。
皆の記憶にあるのならそれは生きているか、僕が殺していないの証明になる。
まぁ、皆が助けたいと思ってるかはわからないけど。
「……」
それを聞いて皆は沈黙する。
それだけ納得しているって事だよね?
――――ピーンポーン。
そんな音が静寂に鳴り響く。
石上のお母さんが「はいはーい」と出ていった。
「その、可能性だから。もしかしたら死んでないかもだし」
僕はいたたまれなくなり、そんな望み薄な事を口にする。
「誰が死んでないかもしれないんですか?」
「ココナ先生が」
そんなここにいるはずの無い声に反応して答える……答える?
「ココナ先生!」
「「「えっ!」」」
「なんでココナ先生がここに? 幽霊ですか? 僕が殺してしまったから怨みを持って来たんですか?」
僕は慌ててしまってそんな事を言う。
が、
「私はこの通りピンピンしてます! 生きてますから問題ないですよ」
「じゃ、じゃあどうやってここまで?」
「それは簡単です。大広場で捕まっていたドワーフたちがいたじゃないですか」
いたな、
「その人たちをどさくさに紛れて助けてからここまでの船を造ってもらったんです!」
「なるほど、それはわかりましたがどうしてエクスターチだとわかったんですか?」
僕は次に行く場所なんて言ってなかったからわからないはずだ。
それなのにわかるってテレパシーか?
「それは鬼灯くんがドワーフたちに石上さんの助けを求められてたのを見たので次に来るのはここかと。家は石上という名前を出したら有名なのか教えてくれましたし」
なるほど、あそこで見ていたのか。
なら声をかければいいのに、って思わなくも無いけど、声かけたら仲間ってバレちゃうからしょうがないか。
「まぁ、先生が生きててよかったね。みんな!」
「「うん」」
少しして、
「ただいまー! ドーラ、帰ってるのかー」
「パパー!」
石上のお父さんが帰ってきたようだ。
「おう、友達も来ていたのか。ドーラ、この中にいるのか?」
「えっ! い、いないよ。もう、なに言ってるの、パパー」
「まぁいい。色々大変だったらしいな。聞かせてくれるか?」
僕たちは日本の状況と、ユリエーエで起きた事を軽く説明する。
日本の状況は出るまでしか知らないから今がどうなっているかわからない。
けど、碌な事になってないのは確かだろうな。
なんせ、憎い
「そうか。君がドーラを助けてくれたんだな!」
「でも、石上は、ドーラはここまで連れてきてくれたし」
「そんなのいいって。何かお礼をしてあげたいな」
「な、なら武器を造ってくれませんか?」
「なんだ、そんな事でいいのか? 材料は何がいい。ミスリルか? ルグルクか? アルミスか? 好きなのを言え。取ってきてやる」
「えっと、工房とかは?」
「あぁ、それがな。宝玉の力よ」
ドーラのお父さん、ドールさんの後ろには茶色い宝玉がフワフワと浮かんでいる。
「ならヨイショ」
僕は髪の毛を1本と血を1滴。
それとユリエーエのレベルSダンジョンで手に入れたミスリルと黒曜石を出す。
「これでお願いします」
「ほお、髪の毛と血を入れるのか。面白いな! どういう形状にすればいい?」
「えっと、刀で」
「了解した。錬金術 神器精製」
髪の毛と血とミスリルと黒曜石とが混ざりあっていき少しずつ、少しずつ刀へと姿を変えていく。
出来上がったソレは黒夜叉以上の力を秘めているのが肌で感じるほど、空気や、空気中の魔力を震わしている。
「ホラよ」
投げられたソレを上手くキャッチし見てみる。
黒色のガラスのような刀。
「あの、ドールさん。銘をつけてください」
「おう、いいぞ。そうだな……」
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