No.005 夜空がミエナイ



 体育館、そう呼ぶには小さく、野球場並の広さがある。

 そして、TVでよく映るダンジョンの入り口が……入り口が‼


「君も今日なのか」

「はい、面接に来ました鬼灯ほおずきかずらです」

「はい、鬼灯さんね。ちょっと待ってね……あったあった、鬼灯葛ね。なら受付終了だよ、もしその格好が嫌ならジャージを貸し出しするけどどうする?」

「ジャージの貸し出しですか?」


 制服のままなら危ない可能性があるな。

 もしかしなくてもダンジョンの入り口があるから実技なのだろう。


「お願いします」

「ならあそこの更衣室に行きな。係りの人がジャージをくれるから着替えておいで」

「ありがとうございます」


 更衣室に行きジャージを貰う。

 ジャージの横にラインの入ったシンプルなやつだ。

 色が選べたので、好きな色の赤を選んでおく。


 少しして、時間になったので、


「定刻となりました。ただいまより、ダンジョン専門国立高等学校の入試を始めたいと思います。皆様はこれからダンジョンへと潜って頂き、最下層まで行って頂きます。最下層は20階で、ダンジョンにしては一般的。難易度は国が指定したレベルのFに当たります」


 この国が指定したレベルにはFEDCBASとあり、Sが1番難しい最難関ダンジョンとして、各大陸に1つある。

 そのFだから1番簡単ということだろう。


「ただ、チームを作っても構いません。このダンジョンはルートが様々あるので頑張ってください。最後に、死んでも知りませんからね。webから応募頂いた皆様は利用規約にしっかりと書いてありましたので、ここでキャンセルなさいますとキャンセル料10万円お願いします」


 そんな……利用規約なんていいやって見ないでサインしちゃった。

 そもそもいきなりダンジョンに潜らせるの?

 危なくないのか?


「では、配って」


 その言葉で、在校生なのか、制服を着た人達が時計のようなブレスレットを配り始めた。


「そのブレスレットで敵をどのくらい倒したか、どのルートで進んだかなどがわかるようになっていて、採点対象にさせていただきます。また、そこから食料をお送りしますので、制限時間は1週間。スタートです」


 ――――ガチャリ


 とダンジョンの扉が開き、1人、また1人と入っていく。


 よし、吸血鬼がどのくらい通用するか試してみるか。



 ※



 ~~1階層~~


 中に入ると、後ろには扉が無くなっていた。

 スタート地点はランダムということか。

 なら、2階層に続く階段を早く見つけて1番乗りしたい。

 やるなら本気で全力で。


「初めてダンジョンに入ったけど……壁は岩でゴツゴツ。そしてピョンピョンと跳ねるスライムたち」


 刀に手を触れ具現化する。

 うーん、ここで名前とかあった方がかっこいいよな。

 刀の名前はなにがいいだろう?


「なんとか丸……うん、帰ったらローザスに決めてもらおう。作ったのはローザスだから」


 スライムを斬ってみるといとも容易く斬れてしまった。

 物語とかだと物理耐性が高かったような?

 これは吸血鬼の力か? 刀の力か? 



 スライムを見つけては1体、見つけては1体と着実に殺し回ってると、目の前に1つの階段が現れた。

 そう、急に現れたんだ。


「これってスライムを倒したからか?」


 僕はスライムを50体は倒した。

 スライムからは一切攻撃をしてこなかったから倒しやすかったが、階段は条件で出るって事か?



 ~~2階層~~


 2階層からスライムは自主的に攻撃をしてきて、楽しかった。

 スライムは顔にくっつき窒息死させるという、なんとも可愛いげのない攻撃方法だった。



 ~~10階層~~


 それから、3階層、4階層、と進んでいき、10階層まで来た。

 やっと半分といったところだ。

 今では、火を吹くスライムや、酸を飛ばしてくるスライムなど、多種多様なスライムに出くわした。


「てか、そもそもスライムしかいないの?」


 とか思って進むと、1つの大きな扉の前まで来た。

 うん、これはあれだ、『ボス部屋』ってやつだ。


 ボス部屋の扉には手を触れる所が2つ。

 右側に左手、左側に右手と、手を交差して触れてみるが、開かない。

 これは2人いないとダメなやつか。



 1時間経過したが、誰1人として来る気配がない。

 そもそも、この道であっているのか?

 1人で入れる場所があるかもしれない。


「そうと決まれば探しに――――」

「――――1ばーん?」


 おっ、運がいいようだ。

 可愛らしい女の子で大きなハンマーを持っている。

 そして……


「吸血鬼なのか?」

「な、な、な、なんの事かな?」


 冷や汗を沢山浮かべて明後日の方向を向いている。

 目は泳いでいるし、あからさまに心拍数が上がっている。

 それなら、


「これはこれは、申し遅れました。僕は第十始祖の鬼灯葛です」

「えっ、あなたも吸血鬼なの? あっ、そうじゃない。私は第五始祖の雨宮あまみや香鈴かりんです。ふーん、あなた、私よりも下なのね」


 何となく本当の事を言う気になれないし、吸血鬼と馴れ合いもしたくないから、咄嗟に嘘をついた。

 が、舐められたようだ。

 けど、うん。

 この人と協力してここのボス部屋を通るか。 


「僕はつい一昨日……うん。つい一昨日吸血鬼になったから」

「私もです。私も8月の最初の方に吸血鬼にさせられました。なんか車に轢かれたって思ったら、その車の運転手が吸血鬼だったみたいで」


 なんだろう、凄い僕の時と似ている気が。

 吸血鬼って長生きしてるから呆けていくのかな?


「なんか大変そうだね。よかったら一緒に進んでくれませんか? 僕1人じゃ開かなくて」

「いいよ、一緒に行ってあげる」


 嘘をついたのは僕だけど、こうも上から目線だとムカつくな。

 とりあえず、2人で扉に手を当てると、光輝き、自動的に開いてくれた。


「よし、じゃあ行こっか」

「ええ、そうね」


 流石に開けるのを手伝ってもらったから、先に行くなんて事は出来ないし。


「こ、こ、これは、ゴールデンスライム」

「知ってるの? このおっきいやつ」


 ボス部屋は広く、体育館くらいの広さ。

 そこにいる黄金色に輝く大きな、5mくらいのスライム。


「あら、知らないの? あれを倒すとお金に換金しやすい金が落ちるんです」

「あぁ、ドロップするんだ。でも、さっきの階層とかだとドロップしなかったよね」

「運ですよ、運。さっきの所だと10000回って1個魔石ませきが落ちればいい方です」


 そうなのか。

 なら、まぁこのゴールデンスライムは斬りますか。


陽法ようほう みどりの太刀 飛雲ひうん

「鬼灯さん? 物理攻撃は効きませんのよ」


 雨宮は嘲笑うかのようにこっちを見下してくる。

 翠色すいしょくに輝く刀を横に一振りすると、放射状にいたゴールデンスライムに斬撃が当たり砕け散った。


「効いたけど?」

「そ、そ、そんな。こんな第十始祖に負けるなんて」


 よし、金が落ちてるぞ。

 雨宮の言っていた通り本当にドロップした。

 僕の運が低すぎるのか心配になったんだよなー。


「なんで、こんなやつに。鬼灯、勝負なさい」


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