第8話 我が心、明鏡止水 ~されど羞恥は烈火の如く~⑤

 夜空に花火、地には剣劇の火花!

 私の意思に応え宙を駆ける黄金の魔剣たちと、悪魔ザフィーアヴォルフの鋼鉄の爪が、激しくぶつかり合う!


「はははっ、止まって見えるぜぇっ!!」


 上下左右、三次元の全てから襲う魔剣を、悪魔は避ける、避ける!


「こいつ、早い!?」


 なんて敏捷性、いいえ、それだけじゃない!

 狼の野生の勘なのか、まるで気配を感知しているかのように、見えないはずの背後からの魔剣をもかわしてみせる!?


「このぉぉっ!」


 私は無数の魔剣を飛ばす!


 しかし、それらは空しく地面に突き立ち、間近に迫る狼の牙!


「いただくぜぇっ!」


「させない!!」


 私は片膝立ち、手近に浮遊する魔剣を執り、悪魔の牙を防ぐ。

 交錯する刃!


「……くっ! こいつ、スピードだけでなくパワーも!?」


 私の魔剣を、強靭な牙で噛み、受け抑えたまま、体重を掛けてくる悪魔ザフィーアヴォルフ!


 お、押し切られる!?


「せめて、両腕が使えれば……!」


 そう、剣の柄を握っているのは右手だけ!


 では左手は?


「おいおい、お嬢ちゃん! 片腕で俺と戦ろうとは、舐めてくれるじゃねぇか!」


 横から飛来させた二振りの魔剣を飛び退いて避け、悪魔が嘲笑う!


「そうだよマジカル☆リリィ! ちゃんと両手で剣を握って、力を込めないとダメだよ!」


 くっ、ステファニーからも駄目出し!

 でも無理、だって私の左手は!?


「ほら、スカートから手を離しなよ!」


「じょ、冗談じゃないし! 手を離したら、見えちゃうじゃないのよぉぉっ!?」


 そう、そうなのです!

 今の私はノーパン!

 短すぎるスカートのせいで、前を抑えてないと、乙女の大事な処を隠せません!?


「な、なんで私が、こんな恥ずかしい目に!?」


 スカートを引っ張り前を隠している分、後ろはお尻が丸見えなんですけど!


 そこに喰い込むように突き刺さる、ビデオカメラ越しの早百合の視線!


「早百合、そんなトコ撮らないでぇぇー!?」


「ハァハァ、素敵よマジカル☆リリィ! 羞恥に耐えつつ戦う姿、可愛い♪」


 まさに孤立無援!

 そんな私の気も知らず、ステファニーの役に立たないアドバイスが飛ぶ!


「逆に考えるんだ、見せちゃってもいいさって! きっと敵は、君のスカートの中が気になって、戦いに集中できなくなるよ!」


「そうだ! 俺はノーパンを見たら油断するぞッ!!」


 自分で言ってるし、このエロ悪魔!


「いっそ脱げ! 全裸で戦え! 裸の美少女になら、俺は倒されても悔い無し!」


「ダメよ、全裸なんて!」


 悪魔の妄言を断ち切るのは早百合!?


「あなたは! チラリズムの美学をわかってない! 隠そうとして羞じらうのが、最高にエッチで興奮するんだから!!」


 残念、早百合も味方じゃありませんでした!?


「てか、女の子がチラリズムに興奮とか言うな!!」


 これはもう、一刻も早く決着をつけるべし!


「唸れ魔剣よ! 『絢爛たる魔剣舞踏会ソードダンス=フルバースト』!!」


 千の魔剣を全弾発射! 刃の雨で、四方から悪魔ザフィーアヴォルフを狙う!


 どうよ、これは避けられまい! 殺った!


「ウォォォーン、こ、これは!?」


 ズドズドズド、と悪魔に突き刺さる剣!


 ……しかし!?


「……なんてな、それは残像だ!」


 悪魔ザフィーアヴォルフ、超スピードで回避していた!


「ま、まだまだぁッ!」


 魔剣を飛ばす!

「残像だ!」


 魔剣を飛ばす!

「残像だ!」


 魔剣を飛ばす!

「残像だ!」


 魔剣を飛ばす!

「残像だ!」


 魔剣!

「残像だよ?」


 魔剣!

「だから残像だって!」


 魔剣!

「残像だって言ってるだろ!?」


 魔剣!

「あの、残像ですよ?」


 ああっ、当たらない!?


「ずるい! 残像とか言って避けたことになるのずるいし!?」


 ついに私、堪忍袋の緒が切れました!


「いやいや、超スピードが俺の能力なんだって!」


 て、手強い!

 これが「爵位持ち」悪魔の実力なの!?


「や、やるわね、エロ悪魔のくせに!」


「くくく、そうさ。この俺ザフィーアヴォルフは狼の悪魔! 大地を駆ける疾風の速さを誇る、愛の狩人さ!」


 そして悪魔ザフィーアヴォルフ、腰を前後にピストン運動!?


「あ、でも俺、こっちは早くないぜ! ちゃんとお嬢ちゃんを満足させてやるからな!?」


「おのれいちいちセクハラをォッ!?」


 もうイヤ帰りたいです!


「寄るな来るな触るなスケベ!!」


 私は千の魔剣を、自分の周囲に展開、ハリネズミのように刃を立てて身を護る!


「ほほう、これは確かに近寄ることも出来ないな?」


 しかし悪魔はニタニタ笑うのみ!


「だが甘いぜ、お嬢ちゃん!」


 悪魔は勢い良く大ジャンプ!

 飛び掛かってくる!?


 まさか、ダメージ覚悟で突っ込んでくるつもりなの!?


 とか思ったら!


「とにかく俺は女の子とセッ〇スしたい! まずは、こっちの巨乳の子をいただくぜ!!」


「きゃぁぁぁーっ!?」


 なんと悪魔は早百合の前に降り立ち!

 一息に彼女の浴衣を剥ぎ取ってしまった!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る