竹細工と光の精

下界の北の領に人が集まってきている。


人が集まると賑やかになり経済が活性化する。


しかし人が増えるとそれに比例してトラブルも増加する。


丁度俺が見ている画面でもそのトラブルが起きていて、街の外で今にも集団戦が始まりそうな雰囲気になっている。


片方は街の再建をしている石の職人集団。


対峙する相手方は武闘派ヒーラー率いる冒険者集団。


どちらもトップが女性で姐御肌なところが似ているな。


どうやらそれぞれの部下の男が街でぶつかったのが事の発端らしい。しょうもない。


しかし部下の始末は上が付けるのは何処でも同じらしく、今のような状況になってしまったようだ。


睨み合いの後、双方のトップが前に出てきたと思ったら殴り合いを始めた。


どちらも引かず激しい応酬。


程なくして勝負がつかない状態に部下達が見かねて止めに入り、勝敗は引き分けとなった。


その後、双方のきっかけとなった者同士が謝罪。和解となった。


その日の夜。街の一角の酒場。


日中殴り合った二人が酒を酌み交わして楽しそうに話している。


元々二人は知り合いだったようだ。


お互い面子や体裁を守るために今回のような事をしたみたいだ。なかなかトップというのも大変だな。


下界を見ているとこういう良い上官や上司という人が結構いる。勿論そうでない人もいるが。


折角沢山の人を見ることが出来るのだから参考にと思っていたのだが、文化的な違いが大きくてなかなか真似するのは難しい。


とりあえず気遣いと思いやりを忘れないでおけばいいのかな。




今日は雨なので家でゆったりする日。


多分大きな島を召喚したせいなんだろうな、これも。


先日救出した地の精の島が少し気になったが、サチによると大丈夫らしいとのこと。よかった。


そんなわけで、いつもの雨の日のように工作することにした。


魔法一覧を読むというのも考えたが、気分的に工作かな今日は。


折角竹が手に入ったし、ちょっと色々作ってみたいんだよね。


こっちの竹は六角形をしているが、切ると中が空洞なのは同じ。節もあるのも同じ。


平面の部分があるというのはいいな、加工がしやすい。


細く切ったのを互い違いに編んでみた。白と緑のコントラストが綺麗だ。


でもこのあとどうすりゃいいのかわからん。とりあえず放置。


太さが同じぐらいの竹を一定の長さに切って立てて繋げ、大きな六角形の椅子を作ってみた。上から見ると蜂の巣みたいだな。


座ってみる。うん、丈夫でいい感じ。


ただこれ座ってると尻が六角模様になるな。サチが俺の尻を指差して笑い転げている。うぬぅ。


あ、そうだ、さっき作った編んだ奴を乗せればいいか。


あー、これなら六角に編んだものの方がいいな。編み直すか。


うん、よし、なかなかいい感じ。


ただ椅子としては今使ってる方がいいな。背もたれあるし。これは屋外用にするかな。


他にも色々作ってみたが、ほぼガラクタに近いものばかりになった。やってる事が素人の図工だからしょうがないか。


その中でもサチが関心を示したのが手裏剣とクナイだ。


最初吹き矢を作り、そこから思考が派生して作ってみた。


投げるのはダメだぞ。やるなら晴れてる時に外でだ。うん。


くノ一の格好に着替えてポーズするのはいいけどさ、その格好扇情的だから襲いたくなるんだよね。


問題ない?問題あるよ、もうすぐ夕飯だろう。


うん。じゃあ夕飯の後にね。設定考えておいて。




夕飯後、サチと忍者ごっこ、にはならず、再び竹加工をする事になった。


理由は夕飯中に気付いた事だった。


家には光の精があちこちにいて、夜になると光を発してくれているのだが、今日はその光が少し偏っていた。


普段から偏ったりする時もあるのだが、今日は殊更偏ってたというか、一箇所に集中していた。


集中していた場所は俺が作った竹の一輪挿し。


サチが気を利かせて永久花というのを入れてくれたのでそのまま飾っておいたのだが、どうもそこに光の精が集まってきたようだ。


光の精については未だに未解明な部分が多いのでこの行動はサチも初めて見たとのこと。


そこで光の精がどうしてこのような行動を取ったのか確認を取るために今竹の加工中というわけだ。


とりあえず永久花には関心はないようだ。サチが少し落ち込んでる。俺は好きだぞこの花。機嫌が戻った。


水が入っていない竹にも興味が無いようだ。ふむふむ。


そして水を入れた竹でも上が開いているには興味なし。大きな穴が空いているのも興味なし。


色々試した結果、指が入るか入らないかぐらいの小さい穴が開いていて、中に水が入っているのだけ興味を示す事がわかった。


とりあえず一箇所に光が集中しすぎて眩しいぐらいなので、何個が用意してみたところ光が分散した。


ふむ、これを利用すれば不規則な光だったのを照明のように出来ないかな。難しいか。


他にも色々な木材で同じような形を作ってみたが、素材に好き嫌いがあるようだ。光の精はこだわり派だな。


一通り色々試した結果はサチがしっかりパネルにメモしている。また新しい発見に繋がったようだ。


しかしこうなんというか竹が光るのを見ると中に子供でも入ってそうな気分になるな。


ん?あぁ、前の世界にそういう話があったんだよ。


ちがうちがう、昔話。空想の話。そそ、前に話したようなやつ。


聞かせろ?いいけど忍者ごっこはいいのか?


すっごい悩んでる。とりあえず聞かせろと、わかった。うん、あ、聞いた上でごっこの設定に生かすと。なるほど。


サチの激しい突っ込みにあいながらもその昔話を話した。


その後のごっこ遊びは良く分からない設定になっていた。


黄金に輝く竹手裏剣を求めるくノ一がそれを守る人を篭絡させるみたいなそんな感じ。


勿論篭絡し返したけどな。ふふふ。

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