私もチュウするもん!
マラソン大会の翌日、M組の生徒は愛梨さんの家に招かれた。
「うわ‥‥‥やっと結菜の家に慣れてきたのに、結菜の家より広いとソワソワするね」
「そうですか? 芽衣さんのご自宅はどんな感じなんですか?」
「この家と比べたら、ハムスター小屋みたいな感じ」
「可愛くていいですね」
「うん(なんだ? 澄ました顔してバカにしてるのか?)」
「パーティーの準備が整うまで、私のお部屋でくつろいでいてください」
愛梨さんの部屋は、相変わらず植物が沢山ある。
瑠奈さんと菜々子さんは緊張しているのか、なにも喋らないな。
せっかくのパーティーだし、緊張解いてあげないと可哀想かも。
そう思い、美波さんに助けを求めた。
「ねぇ美波さん」
「なに?」
「二人の緊張を解いてあげてください」
「任せて!」
美波さんは立ち上がり、ドヤ顔で仁王立ちをした。
「豚をブッタらぶっ飛んだ!」
寒い‥‥‥寒すぎるよ美波さん‥‥‥。
植物達、急な温度変化で枯れかねないよ。
「先輩なに言ってんの?」
冷静に質問する菜々子さんの横で、瑠奈さんは笑いを堪えている。
瑠奈さんにはツボだったらしい。
そんなことをしていると、沙里さんが愛梨さんの部屋で、あるものを見つけた。
「あ! これまだ持ってたんだ!」
「ちゃんとしまっておいてください」
結菜さんは沙里さんが持っている物に食いついた。
「牛のストラップですか!?」
「そうそう! 愛梨が中学生の頃だっけ?」
「沙里!? それは内緒です!」
すると芽衣さんは不満そうな顔をして言った。
「そこまで言って言わないとか無しだよ! 気になっちゃうじゃん!」
愛梨さんは、ため息をついて、少し嫌そうな顔をしながら話しをしてくれた。
「中学生の頃に公園で泣いていたら、優しい男性がプレゼントしてくれたんです 」
それを聞いた僕は、ドキッとしてしまった。
え?それって‥‥‥。
「私も同じストラップを持っています! 私も同じシチュエーションで貰いました! これです、見てください」
「なんか、顔が変ですね」
「これはセンスの無い美波さんに書かれました」
「なるほど、美波先輩ならしかたないですね」
「おいこら」
芽衣さんは少し気まずそうに僕を見つめてきた。
「輝久‥‥‥輝久が牛のストラップを渡した相手ってさ‥‥‥本当に結菜だったの?」
「結菜さんだと思いますけど‥‥‥」
***
結菜は急に不安になってしまった。
確かに、どうして愛梨さんも同じ物を‥‥‥。
それに、同じシチュエーションで‥‥‥。
でも、あれは確かに輝久君だった‥‥‥はずです。
その時、部屋にノックの音が響いた。
「愛梨お嬢様、パーティーの準備が整いました」
「ありがとう、今行きます」
***
なんとも言えない空気の中、愛梨さんについていくと、まさかの家の中にエスカレーターがあり、紗里さん以外の全員が驚いた。
「家にエスカレーター!?」
「はい、地下に続いています」
驚きながら地下に向かうと、地下には一つの扉があり、そこを開けると広いにもほどがあるレベルの、パーティー会場があった。
高級レストラン、お寿司屋さん、スイーツ屋さんなど、いろんな高級店がお祭りの屋台のように並んでいる。
その光景にまた驚いていると、愛梨さんはニコッと笑みを浮かべた。
「全て無料ですので、好きに食べて楽しんでください」
沙里さんは愛梨さんの手を引いて、ケーキ屋さんを指差した。
「愛梨も一緒に食べよ!」
「私は大丈夫ですよ」
「いいから! お姉さん! ケーキ全種類ちょうだい!」
「かしこまりました!」
「沙里? そんなに沢山食べれるんですか?」
「結菜〜」
「なんですか?」
「ケーキ食べて」
「いいですけど」
***
愛梨は、結菜と沙里が並ぶ姿を見て思い出した。
沙里(パンツ)+結菜先輩(盗む)= ‥‥‥。
「結菜先輩!!」
「そんな顔を赤くして、どうしたんですか?」
「パンツ返してください」
「沙里さんが持ってます」
「沙里!!」
「一樹が履いてます」
それを聞いた愛梨が手を二回叩くと、二人のマッチョなガードマンが駆けつけた。
「どうなされましたか」
「あの男が私のパンツを盗みました。天井に吊るして、パーティーのオブジェにしてしまいなさい!!」
「なに!!」
「貴様!!」
「な、なんですか!?」
「許さんぞ!!」
「よくも愛梨お嬢様のパンツを!!」
「ふざけるなよ!! 何色だった!!」
「はい!? ちょ、ちょっと!? 俺はあのステーキを食べたいだけなんだー!!!!」
一樹は天井にミノムシの様に吊るされ、会場のオブジェにされてしまった。
***
それから皆んな食べたり飲んだりを楽しみ、しばらくすると、結菜さんは何故か僕に食べ物や飲み物を運び続けた。
「結菜さん、こんなに食べれないよ」
「なら、一緒に食べましょ♡」
「最初から一緒に食べたかっただけですよね」
「べ、別にあんたの為じゃないんだからね! 私の為なんだからね!」
「今の状況だと、それツンデレじゃなくて、ただ素直な人だよ? キャラ崩壊してるし」
「別にいいの! 輝久君も私と食べたいでしょ!」
「う、うん」
なんか様子が変じゃないか?
いつもみたいに敬語使わないし。
そう思った時、パーティー会場の電気が消えて、ステージがライトアップされ、一人の男性がマイクを握った。
「皆さんお待ちかね! ビンゴ大会!!」
すると、周りで僕達を見守っていた大人達が、全員にビンゴカードを配った。
「景品は最新ゲーム機二台! 高級レディース服十セットです! 景品が無くなり次第終了となります!」
あれ?景品が人数分ある。
必ず何かは貰えるってことか!さすがお金持ち!
※
僕が思っていた通り、景品は全員の手に渡り、皆んな大喜びしている。
「芽衣さんもゲーム機にしたんですか?」
「うん! 輝久と遊べるかなって!」
「いいですね! 今度遊ぼうね!」
「遊ぶ遊ぶ!」
芽衣さんとゲームの話をしていると、結菜さんが何故がフラフラになりながら近づいてきた。
「芽衣さん、私の服と交換してください」
「え、やだよ。私そんなヒラヒラな服着たくないもん」
「ダメ! 輝久君と遊ぶのは私だけ!」
「結菜? なんか変じゃない?」
「変とか失礼だよ! 私は普通だもん!」
「いや‥‥‥やっぱり変だよ!」
二人が話しているのを見つめていると、いきなり沙里さんが僕の腰に抱きついてきた。
「輝久〜♡ 好き♡」
「はい!?」
「あー、沙里さん! 輝久君から離れて!」
「輝久は私のだもん♡」
追い討ちをかける様に、美波さんが右頰に、真菜が左頬にキスをしてきた。
「ふぁー!?」
「輝久♡ こっちむいてよ♡」
「ダメ♡ 輝久君はこっちをむいてください♡」
「美波さんと真菜さんまで! 私怒っちゃうよ!」
「め、芽衣さん! これ、どうなってるんですか!?」
「わ、わらかないよ!」
「とにかく助けてください!」
「私にどうしろと!?」
鈴さんは真菜さんを押し退けて、僕の耳たぶをハムハムし始めた。
「ひっ!」
「輝久君♡ 可愛い声出してどうしたの?♡」
「鈴! 結菜の前でなにしてるの!?」
「うへへ♡」
「うへへって‥‥‥」
続くように柚木さんは、僕の耳を甘噛みし始めた。
「もう!! 皆んな私の輝久君に!!」
「芽衣さん!! 早くなんとかしてください!!」
「だからどうしろと‥‥‥」
「輝久先輩♡」
「ああっ、あ、あ、愛梨さん!?」
「なんで気づいてくれないんですか? 私、ずっと輝久先輩のことが好きだったんですよ♡」
「‥‥‥はい?」
「だーかーら! 好きなんです♡」
「えー!?」
***
瑠奈と菜々子は、ハーレム状態の輝久を遠目で見つめていた。
「ねぇ、瑠奈。先輩達なにしてるの?」
「なんだろ、求愛?」
「わぁお」
愛梨が輝久の手を引いて、ガッツリ腕を組んで引っ張り始めた。
「先輩♡ 私のお部屋に行きましょ♡」
「え、え!?」
「愛梨さん! 私の輝久君に触らないで!」
「ほ、本当になんとかしてよー!!」
芽衣は冷静に皆んなを見ていた。
「(皆んな行っちゃったよ。本当にどうしちゃったんだろ)あの、このチョコ貰っていいですか?」
「どうぞ! もう、パーティーも終わりみたいなので、好きなだけ食べてください!」
「ありがとうございます! 瑠奈と菜々子もいっぱい食べておきなよ!」
「菜々子はまだ食べたいものある?」
「太りたくないしなー」
「だよね、先輩達も行っちゃったし、私達は帰ろうか」
「うん、お礼は改めて明日言おうね」
「うん」
***
「ちょっと! 皆んなやめて! ちょっ、舐めないでください! 結菜さん! ちゃんと怒ってください!」
「怒ってる! さっきから怒ってるもん!」
「全然だよ! いつもの結菜さんなら、今頃血の海だよ!」
「こら! 皆んな輝久君にチュウしないで!」
「そんな可愛らしく怒る人は結菜さんじゃありません! 偽物です!」
「もう怒ったもん! 私もチュウするもん!」
「ちょっ、ちょっと!! あ、愛梨さんは見てないで皆んなを止めてください!」
「わ、私は血が繋がってるからキスはできません‥‥‥ですが、抱きつくだけなら♡」
「なーんーでー!!」
「輝久〜♡」
「あ、芽衣さん! 助け‥‥‥」
「ちゅ〜♡」
「なんで!? なんでなの!? ストップー!!」
何が起きてるんだ!?あれ?芽衣さんなにか持ってる?
ウイスキーボンボン‥‥‥。
「これだー!!!!」
これ、酔いがさめたらどうなるの!?
どうなっちゃうのー!?!?!?!?
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