仇も情けも我が身より出る

 少年はかつて、元気いっぱいの赤い髪の美少女と付き合っていた。しかし彼は非常に飽きっぽい性格で、恋愛に関してもそうだった。どんな我儘も許してもらえる環境で生きてきたので、今回も美少女を一方的に振って、別の女子と付き合いだした。それからだ、暮らしが傾きはじめたのは。

 親の仕事が上手く行かなくなった。嫁に行った姉が借金を作って離縁され、実家に引き籠るようになった。好きな時にいくらでも使えた小遣いがもらえなくなり、金の切れ目が縁の切れ目と、彼女も友人も離れていった。おかしい。こんなに悪いことが続くなんて。あの女を振ってからだ。

 とうとう学校をやめて働いて家に金を入れろと言われた夜の翌日。居場所のない学校をサボって街をうろついていると、赤毛の少女を見かけた。何だかは羽振りのよさそうな知らない男と仲睦まじく腕を組んで歩いていた。声をかけようとしたが、偶然転がってきたペットボトルを半端に踏んだり、飛んできたチラシが顔に張り付くなどして、どんどん距離は遠ざかっていく。

 少年は猶も追い縋ろうとするが、彼が得たものは周囲の冷たい好奇心だけ。

 ――三日経っても家に帰らなかったとある実業家の長男は、それから四日後、海岸で水死体で発見された。遺書はなかったが、荒んでいた家庭環境から自殺として処理された。






注釈:キムジナーの付き合いを怠ったり、一度恨まれると徹底的に祟られ続けるそうですよ。

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