第34話 知らん人のパーティー

「今日は美香の誕生日だから、みんなで誕生日パーティーするんだ」


「誕生日パーティー・・?」


 俺みたいのぼっち誘っていいんですかね。そんな陽キャの誕生日会。


「うん、出来ればクラス全員で祝いたかったけど・・・帰った人も多いみたい」


 少し残念そうに言う神咲さん。


 いや、無理だろ・・・普通に考えて。40人で誕生日パーティーとかどんな待遇だよ。逆に気を使って楽しめなさそうである。そして美香、という女子は、彼女たちの友達でいつも一緒に居る組の一人だろう。


「あ、三つ編みちゃんもいるじゃん。行こうよっ」


 さっきからそこに突っ立ていた若山さんに気付いた神咲さん。

 

「えっ、わ、私もですか?」


「うん。多ければ多いほど良いからね」


「え、えっと・・・」


 チラっチラっと俺を見てくる若山さん。はぁ・・・


「神咲さん、そのパーティー何時集合?」


「アッシー来てくれるのっ?」


「まぁうん」


「サンキュー!」


 俺も一緒に行けば、若山さんも多少は緊張がほぐれるだろう。もし彼女一人で行った場合、ずっと隅っこに座り、ジュースをチューチュー吸ってる姿が容易に想像できる。


「三つ編みちゃんも行ける?」


「は、はい大丈夫です・・・」


「ありがとっ、イエーイ!」


 そう言って、若山さんにハイタッチを要求するギャル娘。


「い、イエーイ?」


 これで合ってるのかな?という顔をしながら、手と手を合わせる若山さん。ちぇ、間違わなかったか。グーとか出したら面白かったのに。


「集合は5時に駅前のファミレスね。じゃああとで!」


 そう言って教室を出た神咲さん。



「・・・大丈夫だったの?古瀬さんは」


 彼女は古瀬さんと毎日帰っていると思っていたのだが、案外違うのかもしれない。


「はい、今日は麻衣ちゃん学校お休みだったので」


「・・そう」


 休みだったのか古瀬さん。彼女には何となく健康そうなイメージを持っていたのだが・・・まぁ誰でも体調は悪い時があるか。


「お大事にって言っといて」


「わ、分かりました」


 現在4時半。今から歩いていけば、ちょうどいい時間に着くだろう。


「一緒に行く?若山さん」


「え?あ、はい・・」


 そんな驚いた顔しないで欲しい。俺となんかと一緒に行きたくないとかかな?・・・流石に若山さんはそんなこと考えていないと思いたい。


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 ファミレスに着いた時には、既に沢山の同級生が集まっていた。道中、親に連絡をした。今日は遅くなる、としっかり伝えておいたので、あの日の二の舞にはならないだろう。


 みんながワイワイと談笑していたお陰か、誰にも気づかれずしれっと輪の中に入った俺と若山さん。なんであいつらも来てんの?的な視線を無事免れた。ふぅー。



「じゃあ5時になったから、入るよー」


 5時寸前になり、続々と人が集まってきたところで、主催者の神咲さんが皆に声を掛けた。

 だがしかし、なんか他のクラスの人達も来てるんですが。これが俗に言う陽キャ網、か・・・・流石は陽キャである。



「それじゃみんな、今日は私の友達の美香のために集まってくれてありがと!美香は今日が誕生日だからじゃんじゃん祝ってあげてねー!じゃあカンパーイ!!」


「「「カンパーイ!!!」」」


 みんなが席に着いたタイミングで、神咲さんが乾杯の音頭をとる。

 すごいな・・・何人くらい居るのこれ?ざっと40人は居そうである。なぜここまで人を集めれるのかが分からない。そして何故、俺がこの場に居るのかが一番分からない。

 ふと、右隣に座っている若山さんを見てみると、


「か、カンパーイっ・・あ、カンパーイ。あ、ありがとうございます・・」


 隣、又隣の人達とジュース入りのコップを合わせていた。案の定、あわあわと動揺していた。うんかわいいかわいい。

 そして、左隣には、


「カンパーイ武流君」


「・・乾杯」


 絵里奈が座っている。


「武流君がこういうのに参加するなんて意外だね?」


「まぁ・・半ば無理やり連れてこられたんだけど」


「・・そうなんだ」


 もちろん、断ろうと思えば断れたが、なんか場の雰囲気に流されてしまった。不覚・・


「で、でも、偶にはこういうのもいいんじゃない?楽しいと思うよ?」


「そうか」


 確かに、ちょっとウキウキしてる自分が居るのがわかる。こうやって友達同士で集まり、パーティーをするなど初めての事なのだ。仕方ないでしょ。


「誕生日おめでとー美香っ」


「ありがとー!」


 声のする方へ顔を向けると、神咲さんがプレゼントを手渡ししていた。それへ続く形で、続々とプレゼントを渡し始めた周囲の人たち。


「あ、私も美香に渡してこなくちゃ」


 絵里奈が気づいたように声を上げ、席を立つ。


「・・・・」


「・・・・」


「・・・若山さん、もちろん」


「「買ってないよね(です)・・・」」


 ・・・これは仕方ないよね。ていうか、俺らに貰っても、誰?みたいな反応されるだけだし。今日誘われて、今日プレゼントを持ってくるというのも可笑しな話である。

 それに、俺の財布は今圧倒的に寂しい。千恵にプレゼントしたからね。ここはしれっとしておくのが得策とみた。



 一通りプレゼントを渡し終わり、皆食事に移っていった。ここはバイキングらしいので、結構楽しめそうだ。というか、バイキングなんて小学生以来な気がする。


「ねえ君、美南ちゃんの友達?」


 黙々と食事にがっついていると、絵里奈に声を掛けてくる生徒が居た。

 見たこと無い顔だな。ぱっと見、チャラチャラしてそうな印象を受ける。イケメンだけど。他学校の生徒も来てたから、その中の一人だろう。


「うん、そうだけど?」


「へぇーそうなんだ、俺らも美南ちゃんに誘われてきたんだけど、どう?たのしんでる?」


「うん、楽しいよ、友達の誕生日パーティーだから」


 ・・・・これは俗に言う、ナンパという奴だろうか。絵里奈は結構浮くからね、このイケメン男子君は早速手を出しに来たのかな。


「へぇーいいね・・・・ごめんちょっとそこどいて?」


 俺と絵里奈の間に座りたいのか、俺を奥にずらそうとするイケメン君。


「あ、はい」


 俺は素早くずれたのだが・・・・


「・・・何してんんだ?」


「武流君がずれる必要ないよ」


 俺が横にズレた分だけ、こっちにズレた絵里奈。それだと彼が入れないでしょうが・・・・


「えっと・・なに?」


 ほら、彼戸惑ってるじゃんか・・


「私今、武流君と話したいんだ。ごめんね?」


「・・・・ッち、分かったよ」


 そう言って去っていったイケメン君。こいつ俺を盾に使いやがった・・・


「ごめん武流君。ああいう人、多くて・・」


「・・・そうか、大変だな」


「うん、正直疲れる・・」


 絵里奈くらいになると、ナンパされる数も多いんだろう。絵里奈は可愛いからね。うちの高校でもトップに入る綺麗さだと言われているらしい。古瀬さんは美人って感じだが、絵里奈は可愛い感じだと勝手に思ってる。


「・・でも、イケメンだったぞさっきの男子。いいんじゃないか?」


「・・それ、本気で言ってるの・・?」


「っ・・・・冗談だよ」


 こわっ・・・そんな目で俺を睨まないでください。ほんと、やめてよね・・。


「あ、あの、お二人は、お、お知り合いなんですか?」


 そんな会話をしていると、若山さんが会話に入ってきた。


「・・・小中学校が同じだっただけ」


「っ・・・そう、だね」


「と、という事は幼馴染、なんですか・・・?」


 なんでそんな悲しそうな目で聞いてくるのだろう。なんか変なこと言ったかな?


「いや、俺は幼馴染ってほどじゃないけど、絵里奈の幼馴染はうちのクラスに居るよ」


「え、じゃあだれ、ですか?」


 別にこれくらいは言っていいだろう。それに、若山さんは決して言いふらすような人じゃない。


「祐樹。川添祐樹って知ってるか?」


「・・・・川添祐樹さん?」


 知らないか・・・だったら、


「前列に座ってる、前髪ぱっつんで眼鏡かけた変態野郎だ」


「っ・・・」


「えええっ!?」








~あとがき~


 少しでも面白いと感じて頂けたら、感想・評価をよろしくお願いします!


 出来れば、【感想】を頂けると嬉しいです。


 そして今後とも『青春=ぼっちの男』を楽しんで頂けたら幸いです。

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