第3話 学校という名の牢

 教室に入り、数人がこちらに目を向けてすぐ視線を戻す。すぐさま自分の席に向かう。席に着いた時、隣の席にいた男子が声をかけてきた。


「おはよう」


「ああ、おはよう西条」


 こいつは西条幸人ゆきと。陽キャと陰キャの中間くらいのヤツ。要するに脇役。ぼっちの俺に時々話しかけてくるが、友達かどうかは知らない。

 買い物行った時に先に買い物してるクラスメイトを見た際、ちょっと入店しにくくなる。そんな感じのクラスメイト。うん。友達じゃないね。


「お前相変わらずのシスコンぶりだなー」


「いや、違うから」


「でもいっつも妹と一緒にくるじゃん」


「どうしても、どうしてもっていうからね」


「・・・」


 ちょっと冷たい目で見られた。ひどい。


「にしても芦田の妹ってまじ可愛いよなー」


「お前に千恵はやらんぞ」


「安心しろ。年下は守備範囲外だ。やっぱり年上の女性だよなー。あの包み込んでくれるような抱擁感っ」


「そうですか」


 君の好みは聞いてません。


「芦田は彼女ほしくないのか?」


「俺にできると思ってるのか?」


「いや?」


 グサっっ。ライフポイントが減った。


「じゃぁ聞くな」


「わりぃわりぃ。芦田みたいなやつでも彼女とか欲しがるのかなぁと思ってな」

 

「みたいなやつですいませんねぇ」


 こいつ、しれっと悪口言ってきやがる。まぁ悪意はないっぽいけど。


「ははっ。芦田やっぱりおもろいな(笑)みんなも芦田と話せば気に入ってくれるとおもうけどなぁ」


「いや、今のままでいい」


「うん?普通友達が多い方がよくね?」


「確かにそうかもしれないけど、一緒に居て疲れるのは友達とは言わないだろ」


特に陽キャとか。あと陽キャとか。それと陽キャとか。


「だから友達はいらないと?」


「いらないとは言ってない」


「じゃあさ、俺はどうなんだ?俺は芦田の友達か?」

 

 うーん。西城は確かに話しててそこまで疲れない。ただ、友達と呼ぶには関係が浅すぎるような気がするような・・・


「・・・分からん」


「えぇー、ひどっ俺は芦田のこと友達だと思ってるよ。だって芦田と話すのおもしろいからな」


いつも一方的に話しかけられて、相槌を打ってるだけと思うのは俺の勘違いですか。

そうですか。


「そうか」


「ああ、そうだ」


 けど、こうやって物をハッキリと呼べる性格は、少しだけ尊敬する。俺は陰キャでジミーズだから発言の場はそんなに多くないけどね。

 自分の思ったことを言う。これがどれほど難しいことか。休み時間や授業中に、うるさいやつを注意できる奴は少ない。ましてや陰キャの俺にはできっこない。時たま注意してくれる人はほんとにすごい、少し拝みたくなる。


 そんな調子で話していたら、教室の入り口から数人の女の子グループが入ってきた。


「おはよー!」


 ロリコンが居たら鼻血を出して卒倒するであろう、その容姿はロリと言って間違いない。

 これはこのクラスの朝のルーティンか。毎朝元気のいい声で挨拶するロリっ子。


「おはよー萌香」「相変わらず元気だなー」「あーロリ神様ぁっ」


 若干一名、犯罪者予備軍が居たが気にしない。

続々と入ってきた女子たちの最後に一際綺麗な女子がいた。ちらっと目があった気がしたが、俺はすぐに目をそらす。

 

「ッ」


「なんか絵里奈さん落ち込んでね?」


 隣の西条が目ざとく言ってくる。観察能力高いね君。


「そうか?」


「うん。守ってあげたいぜ・・俺同い年だけど、絵里奈さんだけは別だな」


 さっきから君の好きなタイプをいちいち言わないでほしい。こっちになんの需要もない。


 

 それからすぐに、先生が入って来てLHRが始まった。




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