設定資料集


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【アウスターカップ辺境伯領】Markgrafschaft Austerkap

 同盟北東部の領邦。人口110万人。外様。

 領主はジーレンフリーデン=アウスターカップ家。領主の居城はグルークベルク城。

 中世の東方植民期に当地を占領していたシュバルツクロス騎士団の団長(当時のジーレンフリーデン伯の三男)が世俗化し、大君より辺境伯の爵位をもらったことから始まる。のちにジーレンフリーデン本家が継承し、ジーレンフリーデンとの同君連合が成立した。

 東方植民によりゲム系を入植させると同時に現地人を同化させた成功例と、過去に列強の傭兵に国土を荒らされた反省に由来する「列強と戦える戦力作りのための人口増加策」から、積極的に移民や難民を迎え入れている。十五年戦争以降、厳格な徴兵制度を元に軍拡を推し進め、同盟北東部において確固たる地位を占める。


【アラダソク王冠領】Áradások Koronájának Országai

 東奥の領地。ドナウ川沿いの平原地帯。ヒンターラント盆地の東側に広がる。

 9世紀・10世紀に奥州を荒らし回った遊牧民の末裔が暮らす。


【イル=ド=トリスケル】Île-de Triskele

 ライム王国の首都。美食の街。


【異教徒】Heidnische Gläubige

 新教徒・旧教徒以外の宗教を信じる者。トプラク帝国を指すことも多い。


【ヴィラバ人】Vyhráva

 同盟東部の住民。古代末期の民族移動時代にゲム族を追いかけてくるような形で移住してきた民族。近隣のストルチェク人とは兄弟関係にあたる。なおヴィラバとは同盟人による他称であり、ヴィラバ東部方言に由来する。ヴィラバ人たちは自分たちをヴィハラと呼ぶ。


【ヴィラバ王国】Království Vyhráva

 同盟東部の領邦。同盟系貴族により現地人ヴィラバ人が支配されている。

 地元の不満は根強く、15世紀の神学者の影響で新教派が多いこともあり大君同盟の不安定要素となっている。


【ヴェスト=ゾンネベルク両州大守】Landmeister von West-Sonneberg

 大君同盟の宮廷称号の一つ。ヴェスト州長官とゾンネベルク州長官の兼任者。転じて称号保持者のトーア家当主を指す。


【エーデルシュタット】Edelstadt

 ヒンターラント大公の居城。人口数万人の巨大城郭都市。


【エレトン家】Haus Errettung

 同盟諸侯。旧教派。家格は外様。

 ゲム族の奥州進出以来、エレトンの地を支配してきた大領主。初代大君の遠征に抗うなど独立心が強い。


【エレトン公領】Herzogtum Errettung

 同盟南部の領邦。領主はエレトン家。

 山がちな地形。塩や宝石の鉱山を有する。

 6世紀の定住化以来、ゲム系エレトン氏族の居住地として存続する。同盟の中では独特の風習を持つ。将兵は戦う前に雄叫びをあげ、長剣で甲冑を叩き割る、酒席では火縄銃で度胸試しを行うなど。


【奥州】Europa

 ユーラシア大陸西部の広域地名。イベリア半島・クレロ半島の周辺を指す。

 古来より民族混交の地。


【オエステ王国】Reino de Oeste

 イベリア半島の王国。クエンカ王家(=ベッケン家の分家)の領地。

 ハルシュタット人やカルブ人の土地を古代帝国が支配し、帝国滅亡後にゲム人やスカンジナビア人の進出を受け、中世前期には異教徒に占拠された混乱の地。半島統一戦争後、大西洋を越えて新大陸に進出し、巨万の富を得た。強大な海軍・眼福の艦隊を有する。


【階級】Dienstgrad

 軍隊の階級。中世期の奥州においては兵営司令官・梯団指揮官・部隊長といった役職自体が社会的地位を示していた。

 十五年戦争以降は各地で軍隊組織の急拡大に伴い、実際には梯団を指揮していなくても相応の人物であれば梯団指揮官=大尉と呼ばれるなど役職名が称号化していった。

 その後、兵営司令官代理(=中佐)や兵卒のまとめ役(=下士官)など実際の運用に合わせて階級の細分化が進んだ。


【ガトリング砲】Gatling-Waffen

 回転式機関砲。複数の銃身を持つ。

 手回しで回転させることで装弾・発砲・排莢を繰り返す、独特の機構が特徴。

 南北戦争期にキーファー公妃の発案で生み出され、低地製の試作型がヒューゲル兵営に配備されたが、排莢の失敗による故障が相次いだ。

 ガトリングという名称の由来は不明。


【眼福の艦隊】Hermosa Armada

 オエステ王国海軍の主力艦隊。新大陸航路の財宝船団を護衛する。史上最大の艦隊。


【キーファー家】Haus Kiefer

 同盟諸侯。旧教派。

 家祖は初代大君の異母弟シュテルンビルト。初期大君同盟の大宰相を務めたことで知られる。晩年に隠居料として与えられたシュバルツァー・フルスブルク辺境伯領はのちにキーファー公領となった。

 家祖の死後も北部諸侯の代表格としてトゥーゲント家を支え続けた。

 十五年戦争で同族対立を引き起こした末に御家断絶の危機を迎えたが、トゥーゲント本家から婿を迎えたことで難を逃れている。これにより家柄も親藩となった。

 ヨーロッパアカマツの木を紋章とする。かつてシュテルンビルトの軍旗であった。家名の由来でもある。家風は頑固で保守的。南部の人間からは痩せ我慢のキーファーと揶揄される。


【キーファー公領】Herzogtum Kiefer

 同盟北部の領邦。人口40万人。領主はキーファー家。

 初代大君の異母弟シュテルンビルトのシュバルツァー・フルスブルク辺境伯領を原点とする。

 寒冷な風土で耕作に向いておらず、人口当たりの穀物生産高は他の大領主に劣る。北部のバルト海沿いに港湾を有する。


【旧教】Alte Lehre

 奥州における「宗教」のうち教皇府の傘下に組み込まれている教会および教派のこと。中東を起源とする。古代帝国の末期に国教となり、帝国滅亡後も奥州において支配的な教派となっている。広義の旧教には中世期に分裂した諸教派も含まれる。


【宮中伯】Pfalzgraf

 爵位の一つ。


【教皇府】Curia Clero

 旧教会の頂点。クレロ半島のコンパス市所在。


【クエンカ家】Familia Real Cuenca

 オエステ王家。ヒンターラント大公ベッケン家の分家。

 15世紀末の大君並立期、イベリア半島に出征したベッケン家の八男・カルステン将軍がオエステ女王と結ばれたことで成立した。

 本家とは家長の座を巡って対立しており、折り合いは良くないが、いざという時には助け合ってきた。


【クッヒェ家】Haus Küche

 同盟諸侯。新教派。ヘレノポリス近郊に男爵領を持つ。

 ヒューゲル家とは縁戚関係にある。


【ゲム族】Gem

 奥州中央部の主要民族。大君同盟の住民の大半を占める。

 元々は東方から攻め寄せてきた「蛮族」であり、古代末期に奥州に住みついた。古代帝国との交流により「文明化」されたとする見方がある。古代帝国の滅亡後、アライン支族から初代大君が現れ、ゲム族の統一=大君同盟の結成を行った。


【公爵】Herzog

 爵位の一つ。王・大公の下、侯爵の上。


【侯爵】Fürst

 爵位の一つ。公爵の下、伯爵の上。

 元来は大君議会に参画できる身分(=等族)の総称だったが、のちに称号として使用されるようになった。


【古代帝国】Kompass Kaiserzeit

 古代のクレロ半島を中心に地中海沿岸を支配していた超大国。

 七王の時代に半島の政治的統一を果たし、共和政期には奥州各地に進出開始。初の終身独裁官(大君)が元老院に選出された時代に絶頂を迎えた。

 その後は繁栄と混乱と分裂を繰り返し、経済的な要因と異民族の流入により本格的な衰退期に入っていく。五世紀末、ゲム族の族長に最後の大君を殺され、帝都コンパスが焼かれたことで「帝国」としては滅亡したとされる。

 奥州各地には今も古代帝国の遺産が眠る。また言語・文化・制度・宗教などあらゆる分野で足跡を残す。


【近衛】Tycoon Wachen

 大君の身辺警護役。および部局。長官は近衛大将。

 中世前期に形骸化し、一部の封臣に与えられる称号となった。


【三職・七頭】Drei Minister und Sieben Hauptmann

 選定侯。大君指名選挙の選挙権保有者。

 三職はウビオル大司教、ヴィラバ国王、フラッハ宮中伯。七頭は大君即位時に新大君から任命される。


【侍衛親軍】Gardes Lime

 ライム王国の王室親衛隊。


【ジーレンフリーデン伯領】Grafschaft Seelenfrieden

 同盟北東部の領邦。人口40万人。外様。

 領主はアウスターカップ=ジーレンフリーデン家。

 事実上アウスターカップの一部とされている。


【ジーレンフリーデン=アウスターカップ家】Haus Seelenfrieden=Austerkap

 同盟諸侯。新教派。アウスターカップ辺境伯。ジーレンフリーデン伯。

 源流のジーレンフリーデン家は大君同盟の成立後に取り立てられた新興家門。奥州先住民族の戦士長の子孫として『ガエサタエの長』を称し、当時の大君より同盟北東部の防衛を担う城伯に任じられた。のちに領地の名からジーレンフリーデン伯を称する。

 十四世紀、当家の三男坊がシュバルツクロス騎士団長となり、世俗化して騎士団領をアウスターカップ辺境伯領とする。辺境伯の母親がストルチェク王家出身だったことから、当初ストルチェクとも君臣の関係を結んでおり、以後は大君同盟とストルチェク、スカンジナビア帝国の間をコウモリのように渡り歩いた。

 その後、最後の騎士団長の孫にあたる娘がジーレンフリーデン宗家に嫁入りし、その子供が両方の地位を継承したため、ジーレンフリーデン=アウスターカップ家が成立した。


【州】Land

 古代帝国が属州の下に設定した行政区。帝国崩壊後は実体を失い、広域地名として伝わる。


【十五年戦争】Fünfzehnjähriger Krieg

 1625年から1639年まで続いた宗教戦争。新教派ヴィラバ人の反乱から始まる。大君同盟内部および諸外国が旧教派と新教派に分かれて戦い、時に陣営を鞍替えする諸侯まで現れた。終戦後のヘレノポリスの和議(1640年)により各領邦ごとの信仰の自由が認められた。

 大君同盟の国土を焼き尽くした戦争は、深刻な食糧難と人口減少を招いた。


【ジューデン家】Haus Süden

 同盟諸侯。新教派。

 初代大君とは共通の先祖を持つが、初代大君の即位後に家臣に列したため家格は外様。部族時代からバルト海沿いに領地を持つ。同盟有数の名門貴族。

 近隣のフォアハーフェン伯は分家の一つ。本家とは非常に仲が悪い。

 家紋は二対の鉄鶴。


【ジューデン公領】Herzogtum Süden

 同盟北東部の領邦。領主はジューデン公。

 バルト海沿いの広大な領地は旅人から「三日月が丸くなるまでジューデン公領」と呼ばれた。かつてはフォアハーフェン伯領も領地であったが、反乱により独立を許す。

 北部の寒冷な土地にあって、住民の生活は貧しい。


【首都節度使】Gouverneur militaire de Île-de Triskele

 ライム王国の官職。首都イル=ド=トリスケルの防御指揮官。


【シュバッテン家】Haus Schbatten

 同盟諸侯。旧教派。家格は外様。

 近隣のヒューゲル家やストルチェク系領主と紛争を繰り返した。菱形の山羊を紋章とする。


【シュバッテン伯領】Grafschaft Schbatten

 同盟東部の領邦。領主はシュバッテン家。

 西のヒューゲル公領、東のストルチェク連合共和国と隣接している。領内にはゲム=ストルチェク街道が存在する。


【シュバルツァー・フルスブルク】Schwarzer Hrusburg

 キーファー公領の城郭都市。およびキーファー公の居城。近郊を流れるシュバルツァー・フルスという河川に由来する。


【シュラフタ】Szlachta

 ストルチェクで政治参加を認められた身分。貴族。


【新教】Neue Lehre

 奥州における「宗教」のうち十六世紀の宗教改革以降に生まれた教派の総称。

 旧教派教会の腐敗や、いわゆる「後付け設定」的な教義に対する抗議運動をきっかけに、論争と紛争を巻き起こしながら奥州各地に広まっていった。

 十七世紀時点では同盟北部に信徒が多い。基本的に聖書を重視する。


【城代】Vizebürgermeister

 城主不在時の留守役。および城郭や都市の代官。


【初代大君】Rudolph der Grosse/Raulmagne

 ルドルフ・デア・グローセ。古代帝国の崩壊後、内紛と外敵に脅かされていたゲム族をまとめあげた伝説の英雄。

 その功績を記すには余白が足りないため、ここでは割愛する。

 彼の子孫はライム王家、トゥーゲント家など奥州の名族として知られる。


【神聖大君同盟】Heiliges Tycoon Bund

 奥州中央部の諸侯連合。約300の領邦で構成される。

 住民はゲム系アライン族が中核を占める。

 二代目大君の子供世代に分割された領域のうち三男が継承した東部領が原型となっている。大宰相シュテルンビルトにより国制が定められた。

 初期には君臣の絶対的な主従関係が成り立っていたが、力なき大君の出現により大君の権限は削り取られていった。

 ゲム族の伝統から、初代大君の嫡流が絶えて以降は選挙王制となっている。


【親藩】Verwandte der Tycoon

 大君の親戚。または親戚が治める領地。家格の一つ。

 大君が別の家に変わった際には、諸侯の家格もまた様変わりすることになる。


【スカンジナビア帝国】Skandinaviska imperiet

 スカンジナビア半島の帝国。首都はロードヴィク。

 皇帝は神聖大君と同様に古代帝国の後継者を称する。

 ヨルゲン帝の時代に軍事大国となる。十五年戦争に介入するも皇帝の戦死という結果を招き、以降は軍事的介入を控えるようになった。


【ストヴェティ人】Stovėti

 奥州北東部の民族。バルト海沿いの地元民。独自の言語を話す。


【ストルチェク連合共和国】Najjaśniejsza Rzeczpospolita Storczyk

 奥州東部の国家連合。人口1400万人。ストルチェク王国とストヴェティ大公国の同君連合からなる。法治国家・民主国家であり、人口の1割を占めるシュラフタ(貴族)が王権より強力な政治力を有する。平坦な国土は穀倉地帯として奥州の胃袋を支えてきた。有翼騎兵が有名。住民の大多数は旧教派である。中でもマリア信仰が盛ん。首都はスレンカ。他にスワフニなどの都市がある。

 中世末期に黄金期を迎えたが、17世紀以降は外国勢力の政治的干渉を受け、中央政府と議会が機能不全に陥る。地方では五大老(=マグナート)が政府の代行者としてふるまい、下級シュタフタを抑圧した。


【ストルチェク人】Storczyk

 古代ゲム族を追いかけるようにして奥州に入り込んできた東方民族のうち、スワフニ周辺の平原に住みついた部族の末裔。ストルチェク語を話す。


【節度使】Gouverneur militaire

 ライム王国の官職。中世初期には辺境部の軍事指揮官が任じられた。

 13世紀以降、首都節度使を除いて貴族の名誉職となる。


【セルヴヌマ王国】Kongeriget Cbrevnummer

 ユラン半島の王国。漁業と畜産業で有名。

 大君同盟の北に存在する。古代から中世にかけて漁民集団(=ヴァイキング)が奥州各地で海上交易を担い、時に略奪に及ぶこともあったことから「渡来の海賊」と恐れられた。遠征を行った漁民の中には現地人の家来になる者も現れ、奥州の名族には海賊の子孫を称する家柄も多い。


【選定侯】Kurfürst

 大君指名選挙の選挙権を持つ者。

 三職・七頭の十名からなる。


【属州】Provinz/Provincia

 古代帝国の行政区。本土以外の征服地に設置された。

 行政区としては道の下、州の上にあたる。

 帝国崩壊後は有名無実と化した。


【梯団】Bataillon

 戦列歩兵の部隊。約600名~800名からなる。

 大君同盟においては一般に一個以上の梯団を保持できる領主が「諸侯」と呼ばれる。


【トーア家】Haus Tor

 同盟諸侯。旧教派。

 初代大君以前のゲム族首長に仕えた古代帝国の官僚を家祖とする。中世盛期に領地の大半を取り上げられたことからトゥーゲント家に恨みを持つ。家紋は一剣二鍵。


【トーア侯領】Fürstentum Tor

 同盟西部の領邦。人口50万人。領主はトーア家。

 西部有数の大国であり、エレトン公などと「雄侯」と並び称される。家風は極端な旧教絶対主義で知られる。


【トゥーゲント家】Haus Tugent

 初代大君の子孫。本家嫡流。旧教派。

 歴史的には分家から何度も養子を迎えており、同門の中には「嫡流」の正統性に異議を唱える者も存在する。

 初代大君の血脈を残すために領地の兄弟分割相続を繰り返した結果、本家の領地が不安定なヴィラバ王冠領のみとなってしまったことは、中世以降に「力なき大君」の出現を引き起こした。

 なお、必ずしも当家の当主が大君になれると決まっているわけではない。歴代では選定侯の投票によりベッケン家やエレトン家などが大君に即位している。


【トゥルジャバ】Тврђава

 東奥州南部の地域名。トプラク帝国の支配下にある。


【外様】Neuer Vasall

 家格の一つ。新大君の即位後に家臣となった家柄を指す。大君が別の家に変わった際には、諸侯の家格もまた様変わりすることになる。中世以降は初代大君の即位時に家臣ではなかった家柄を指すようになった。


【トプラク帝国】Toprağın İmparatorluğu/Toprak

 奥州と東方大陸にまたがる異教徒の帝国。トプラク家の君主はスルタンと尊厳者を併称する。首都は同盟語ではカイザーブルク。現地名ではカリニスなど。チューリップが名産。銃砲の扱いに秀でた奴隷歩兵隊を持つ。

 元々は極東の草原地帯から西進してきた遊牧民。中東に住みついた支族が異教を受容し、15世紀中頃に古代帝国の末裔イポリス朝を滅ぼした。以降、奥州に手を伸ばしつつある。


【伯爵】Graf

 爵位の一つ。侯爵・辺境伯の下、男爵の上。

 なお大君同盟には子爵という爵位は存在しない。


【バンブス家】Haus Bambus

 同盟諸侯。初代大君と共通の先祖を持つ。旧教派。

 中世盛期に反乱に加担して流罪となった経緯から外様扱いとされる。

 流罪先の北部で勢力を拡大し、北部有数の大領主となった。


【バンブス公領】Herzogtum Bambus

 同盟北部の領邦。領主はバンブス家。美人が多いことで有名。


【ヒューゲル家】Haus Hügel

 同盟諸侯。新教派。

 初代大君の家臣ランゲを家祖とする。家格は譜代。


【ヒューゲル公領】Herzogtum Hügel

 同盟東部の領邦。人口16万人。領主はヒューゲル家。

 クルヴェ川沿いのラミーヘルム城近辺。ほとんどが起伏のない平原である。

 初代大君の家臣ランゲに与えられた辺境伯領を原点とする。中世盛期に兄弟で分割相続を行い、最盛期の領地の半分を失った(=未回収のヒューゲル)。十五年戦争では新教派につき、各地を転戦する。


【ヒンターラント大公領】Erzherzogtum Hinterland

 同盟東南部の領邦。人口220万人。ベッケン家の本拠地。

 内陸部の盆地。農耕、鉱業、塩業、金融業が盛ん。大公の居城はエーデルシュタット。南方の異教徒の進出に脅かされている。兵士のジュストコールは白色。


【フサリア/有翼騎兵】Husaria

 ストルチェクの黄金時代に発展した重騎兵。甲冑の背中に大型の羽根飾りを備える。長槍を中核とした多数の武器と衝撃力により連合共和国の発展に大きく寄与した。伝説の類ではあるが、10万人のトプラク帝国軍をたった2500騎のフサリアが打ち破ったという逸話も残る。近年はシュラフタ階級の没落により金のかかる騎兵隊を維持できる者が減少しており、一部を除いて絶滅の危機に瀕する。


【譜代】Alter Vasall

 家格の一つ。新大君の即位前から従ってきた家柄を指す。

 大君が別の家に変わった際には、諸侯の家格もまた様変わりすることになる。

 中世後期以降は意味合いが変わり、初代大君の即位前から家臣であった家柄を指すようになった。


【フラッハ家】Haus Flach

 同盟諸侯。新教派。古代帝国の大君の末裔を称する名門貴族。

 初代大君と天下統一を争った英雄ギルベルトの子孫。大君同盟成立後、初代大君の側室となったギルベルトの娘の連れ子により御家再興が果たされた。以降、宮廷管理人として宮中伯と三職の地位を世襲する。初代大君の死後はライン川流域の領主となる。エレトン家から婿養子を受け入れ、同族となった。

 1625年、当時の当主マルセルがヴィラバ国王に推戴されたことが十五年戦争の発端となった。


【フラッハ宮中伯領】Pfalzgrafschaft bei Flach

 同盟西部の領邦。領主はフラッハ家。首都はフェルゼンベルク。

 ライン川の中流付近を領地とする。ライム王国との国境地帯にあたる。


【フロイデ家】Haus Freude

 同盟諸侯。旧教派。辺境の騎士が古代帝国の名族から入婿を受け入れて同盟諸侯となり、のちに本家の地位を相続した家柄。親族や家臣団の勢力が強く、古くから御家騒動が絶えない。


【フロイデ侯領】Fürstentum Freude

 同盟南部の領邦。人口45万人。領主はフロイデ家。

 領内に鉱山を持つ。侯爵家専属の鉱山技術部門を有する。15世紀には他国に先駆けて異教徒の巨砲の模造に成功した。以来「砲撃侯」と呼ばれる。


【ベッケン家】Haus Becken

 初代大君の傍系子孫を称する。母系で古代帝国の貴族パトリキや大君の血を引く同盟屈指の名門氏族。

 中世初期には山岳地方の小領主にすぎなかったが、トゥーゲント家の内紛で一時的に大君が空位となった際に、初代大君の五世子孫であることから大君候補に担ぎ出された。大君選出後、東部のヴィラバ人を打ち倒し、のちにヒンターラントと呼ばれる領地を獲得する。以降、本家はヒンターラント大公を称した。

 また婚姻外交によりオエステ国王など外国の指導者を輩出している。

 敬虔な旧教派として知られ、子弟には教会関係者も多い。


【辺境伯】Markgraf

 爵位の一つ。扱いは侯爵に近い。伯爵の上。

 初代大君に辺境の守りを任された家柄。


【マウルベーレ家】Haus Maulbeere

 同盟諸侯。旧教派。

 初代大君の家臣を先祖に持つ。家格は譜代だが、十五年戦争後に縁戚のキーファー家から入婿を迎えたことから親藩扱いとなった。


【マウルベーレ伯領】Grafschaft Maulbeere

 同盟北部の領邦。人口13万人。領主はマウルベーレ家。

 ライン川流域のマウルベーレ市のほか、飛び地として河口にアイヒェカップ港を持つ。


【五大老/マグナート】Magnat

 ストルチェクの有力家門。コメダ家、チャプリンスキ家、アダムスキ家、ポニャトフスキ家、シンボルスキ家の五家を指す。小規模領主の多いストルチェクにおいては例外的な大領主。封建支配のあり方をめぐって中小シュラフタや国王と対立してきた。17世紀以降、領内の不輸不入を主張して国内に「小国家」を形成しつつある。


【マスケット】Muskete

 ライフリングを施されていない先込め式の歩兵銃の総称。奥州では火打石を用いた火打ち式の小銃が普及しているが、不発の少ない火縄銃も併用されている。

 戦列歩兵の主力装備であり、銃剣の発明以降は槍の役目も担うようになった。


【魔法】Zauber

 世界の理を捻じ曲げる技術。

 体内の魔力を使用する。魔力の源泉は経口摂取した栄養であるため、原則的にはたくさん食べればたくさん魔法を使用できる。

 魔法の習得法は現状不明である。新大陸の先住民族では部族内の長老が、魔法使いの選別・技術指導を行うとされる。

 使用法や道具など部族ごとの差異が大きく、今後の研究が待たれる。


【魔法使い】Zauberer

 超常現象を引き起こす存在のこと。宗教的な迫害対象である魔女とは厳密に区別される。

 新大陸の発見に伴い、旧大陸との間で交換された物品は多岐に渡る(馬・銃火器・トマト・タルトゥッフェルなど)。中でも魔法使いは旧大陸では生産できないことから、新大陸の先住民族にとって希少な輸出品とされる。

 もっとも交換が必ずしも公平な対価をもたらすとは限らず、奴隷商人による拉致が横行している。


【ライム王国】Royaume de Lime

 奥州の王国。大君同盟の西に位置する。オエステ王国とはピレネー山脈を境界線としている。王家はバーミリオン家。兵士のジュストコールは白色。国章は龍。首都はイル=ド=トリスケル。

 二代目大君の子供たちに分割相続された領地のうち西部領を起源とする。

 内紛と対外戦争を繰り返した末、大君同盟とは対照的に国王の中央集権国家となった。歴代に美食家の国王が多く、宮廷料理が発展している。

 バーミリオン王家はトゥーゲント家と同様に初代大君の血脈を保ち、自らを正当な大君と位置付けている。

 ライム語は古代帝国の方言を引き継いでおり、隣国でありながら同盟語とは成り立ちが異なる。


【ローセ分領公国群】Роса лордов

 奥州東部の小規模国家群。各々の元首はクニャージと呼ばれる。ヴァイキングの子孫が治めていた旧オスノーニ大公国の分裂後、政治的なまとまりを形成できずにいる。


【野戦砲】Feldkanone

 主に正規軍同士の野戦において使用される小型・軽量砲の総称。基本的に対人兵器である。対要塞用の大型攻城砲とは区別される。

 牽引用の車輪を備え、戦場を移動できる。

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