第64話 神々の国

 魔物の倒した後疲れたユウヤ達が船の客室で休んでいた。

 しばらく、雑談をしていたユウヤが思い出したようにレイラに視線を向けて問いかけた。


「そういえば、前にレイラの障壁は特殊と言っていたが、どういう意味なんだ?」


 ユウヤの問いにレティシアとマユリも話が気になったのか黙ってレイラに視線を向けた。

 レイラは全員の視線が集まったことを確認して、話していないことを思い出して話し始めた。


「そういえば、話していませんでしたね」

「特殊って普通の障壁とは違うの?」

「ええ、私の障壁は固有魔法なの。普通の障壁とは違って頑丈なのよ」

「固有魔法?」


 レイラの話に出て来た聞きなれない単語にルクス以外は首を傾げて問い返した。


「固有魔法は大きく分けて二つあるわ。一つは人が自分に合うように作った魔法。もう一つは私のように生まれつき持っている魔法」

「生まれつき持っている?」

「たまに魔法の才能を持っている人の中にいるのよ。原理が分からない生まれつき魔法を扱える人が、それが生まれつき持ってる魔法」

「そんな魔法もあるんだな」


 レイラの説明にユウヤは感心したような声を出した。

 レイラとユウヤの話を聞いていたレティシアは、レイラに問いかけた。


「私が使う魔法も固有魔法に入るの?」

「ええ、それが常識の魔法として広まらない限りは固有魔法の扱いで良いはずよ」

「そうなんだ」


 レイラの説明にレティシアは納得したように頷いて、帰ることをしようと考えた。

 それから五人は雑談に戻り、少し時間が経つと船が目的地に着いた。

 船が島に着くと、船長が五人の休んでいる客室にやってきて着いたことを教えてくれた。

 五人は船長の案内で船を降りた。


「ここが神々の国か」


 ユウヤは呟きながら目の前に広がる町を見た。

 町は木造建築の建物が並び、大通りを歩いてる人の多くはユウヤが羽織っているものと似たような着物を着ている人が歩いていた。


「取り合えず、日が暮れ始めてるし宿を探すか」

「そうね」


 ユウヤ達が町の大通りに入ると、ユウヤはどこからか内側を覗き込むような視線を感じて刀の柄に手をかけ周りを見渡した。

 急に周りを警戒し始めたユウヤにレティシア達が疑問に思い首を傾げて問いかけた。


「どうしたの?ユウヤ」

「お前らは何も感じなかったか?」

「?特に何も感じなかったけど……」


 ユウヤの言葉の意味が分からずにレティシア達はお互いに顔を見合わせて首を傾げていた。


(俺だけに向けた視線だったのか?どうして?)


 ユウヤはレティシア達が気づかないで自分にだけ向けられた視線の意味が分からずに考えながら視線が向けられ場所を探した。

 しばらく、辺りを見ていると視線が向けられた方向の予想がつきそちらを見ると山の頂上付近に大きな木造の建物があり、その建物まで長い階段が続いていた。 


(あそこか……)

「取り合えず、宿を探すか」

「ええ、そうね」


 ユウヤの態度を不思議そうに見ていたレティシア達がユウヤの言葉に頷いて大通りを歩き始めた。

 しばらくの間、歩いて宿を見つけ部屋を取ると宿の食堂でそのまま夕食を食べた。

 宿で夕食を食べた後、それぞれ部屋に入るとユウヤは同じ部屋のルクスに話しかけた。


「ルクス、悪いが少し出かけてくる」

「ん?ああ、どこに行くんだ?」

「ちょっとな、何かあったあいつらのこと任せたぞ」

「?おう、分かった」


 ルクスはユウヤの言葉に戸惑いながらも返事をし、それを聞いたユウヤは宿から出て行った。

 宿から出ると、ユウヤは先ほど見つけた山の上の建物に向かって歩き出した。

 建物に繋がる階段は石で作られていて夜のため暗く見えにくかったが、階段の上にある建物には明かりがついていた。

 長い階段を上がり、しばらくするとユウヤは階段を登り切って建物の前に着いた。


「すごい大きな建物だな。それに……」


 ユウヤは大きな木造の建物に驚き、そして今まで感じた魔力や霊力とはまた違った強い力を感じ警戒しながら建物を見た。

 建物を見ていると、一人の黒髪で長髪の白い着物に赤い袴と巫女装束を着た女性が建物から出て来た。


「こんな夜中にどうなされました?」

「……」


 ユウヤは出て来た女性を何も言わずに警戒しながら見つめていた。


「あの……どうなされましたか?」

「お前だろ、俺が町に入った時に見てきたのは」

「……やっぱり、気づいてたんだ」

「ああ、それでお前は何者だ?」

「私は少し強いただの巫女ですよ」

「……」


 女性の言葉にユウヤは呆れたような顔をして女性を見て軽くため息をついて話しかけた。


「お前から感じる力は魔力でも霊力でもない。それどころか一度も感じたことがない力だ。お前は何者なんだ?」

「そんなことも気づいていたんだ」


 ユウヤの言葉を聞いて女性は少し俯き顔を上げると、先ほどまでの優しそうな目から鋭い目つきに変わり警戒するようにユウヤを見つめてきた。


「私はイザナミ。神と呼ばれる存在の一人よ」

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