第83話 チケット

 -花村鉄工所-


「日高に別れ話された」

『ええっ‼︎』

 二人は、のけぞって驚いた。

「先輩と後輩の関係に戻したいって言われた」

「そんで、はる、何て言ったの?」

 めいが言った。

「絶対嫌だって言って、断固拒否した」

「したら?」

「ごめんって」

「そっか」

 連ちゃんは頷いて、めいを一度見て、

「うちらだって、二、三回あるよ、そういうの」

「えっ、そうなの?」

『ある、ある』

 って、二人は、顔を見合わせて笑った。

「はるさ。一回壊れたものを、また元に戻すのは難しいんだよ。でも、壊れて修復した、その直した箇所が自然に見つめられるようになれれば、それでいいんだよ。少なくとも、私はそう思ってる」

 連ちゃんが言った。

「自然に……かぁ」

「うん」

「好きで一緒にいれば、いろいろあるよ。みんな疵だらけだよ。大丈夫、乗り越えられるから」

「うん。ありがと」

「そんな、はるさんに、これ、あげる」

 めいが、ポケットから、チケットを二枚出した。

「これ、妹からもらったの。今年、文化祭六月にやるんだって。で、チケット制になったんだけど。はるにもあげる」

「へー、れいちゃん、うちの高校行ってるんだ」

 受け取って、はるは日時を確かめた。

「明日じゃん」

「うん。渡すの、忘れてた。でさ、日高先輩と行ったら? 売れっ子だから、無理かもだけど」

「一応聞いてみる。ありがと」

「ねえ、はる」

 連ちゃんが、不敵な笑みを浮かべた。

 それは。

 本当に久しぶりに見る表情だった。

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