焼きそばパン大戦争

序章 紅く染まる

　荒さを増していた呼吸がおさまっていくのがわかる。落ち着いたのではなく、呼吸をする力すら損なっているのだ。

　静まりかえったこの場所ではその僅かな呼吸すら反響していた。

　ぼんやりする意識の中、空を見上げれば一面の紅葉。僅かに射し込む夕陽に照らされ濃淡が鮮やかに広がる。

　何も来ない。

　微動だにせぬ紅葉の様にそんなありえない事が頭を過る。

　誰も来ない。

　打ちつけた背中の痛みに顔を歪めながらそんな叶わない思いが蒸し返す。

　ふと、倒れ込んだ神社の階段に血が染み込まないか心配になった。物心ついた頃から御世話になっている場所だ。汚れてしまうのは申し訳ない。

　いや、生まれる前から関係のある場所か。

　嘲る様な否定を頭に浮かべ、彼女はその身を起こそうとする。

　細身のその身体は言うことを聞かず動くことはなく、代わりに全身に痛みが走る。

　小さく呻き、鋭く息を吐いた。

　自分の身体が一体どんな状態なのか？　それすら曖昧になるほど全身に痛みと痺れが蔓延している。

　もう無理かもしれない。

　諦めが心を支配していく。

　耐えていた恐怖に堪えきれず瞳から涙が零れた。頭から流れる血と混じって赤い涙が地面に落ちた。

「あーあ･･････お腹すいたな･･････」