双つ影

桐生細目

序章 独白

 あぁわかっている。

 オレだ。オレが悪いんだ。


 詰まるところはオレが首を突っ込みすぎたって事だろ?

 引き際を誤ったってやつだ。


 最初は注目間違い無しのスクープだと思っていたんだ。

 なんて言ったって、荒廃都市新宿で頻繁に起こっている殺人事件の犯人らしき人物を見かけたんだ。端くれとはいえ記者のオレが見逃す理由がないだろ?

 判っている。あぁ判っているさ。そんなオレの情報にコバンザメのように付いてきた別の記者の男が変死体で発見された辺りで引くべきだったんだ。だけど引かなかった。だからこのざまだ。


 崩れたビルのガレキで通れなくなった道路を背中に、オレはそのガレキに背中をあずけて、やけに冷静になってここ最近の出来事を思い出す。どうせなにもやる事はない。行ける場所は今ここまで走ってきた通路だけで、その通路の向こうからは奴が向かってきているんだ。まったく、運が無いぜ。

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