第596話 放置
「災害……だと?」
「俺達が戦えばって、どういうことなんだよっ!」
康生の発言を受けて、異世界人側も人間側も各理解出来ないといった反応を示す。
「簡単な話ですよ」
だが康生はそれでもあくまでも冷静に皆を見渡して、全体に響くように声を張り上げる。
「魔法を使えば魔力が大気に放出させる。そして行き場のなくなった魔力がこうして集まるんですよ。それがこの塊になるんです」
懇切丁寧に康生は説明をするが、しかしそれでも皆はまだ理解出来ていない様子だった。
「そもそも魔力によって出来るのなら、どうして昔にあった大戦では何も起きなかった!あの時は今よりももっと大量の魔力が使われたはずだっ!」
そんな異世界人の何気ない言葉に他の者達も同様に賛同を示した。
確かに、昔行われといわれている大戦では、今よりも多くの人が戦いに臨み、そして多くの魔法が使われた。
ならば康生の言うように、魔力の塊が生成されなかったのは明らかにおかしいはずだと主張する。
しかし康生はそんな意見を真っ向から否定する。
「あの時は確かに今以上の魔力が放出された。だが魔力の塊は作られなかった。何故か?それは簡単な話だ!あの時の魔力は全て大地や自然に吸収されたんだよ!結果、地球の大地は枯れ果てたんだよっ!」
少し感情的になりながらも康生は真実を告げた。
そう。大地が汚染されて自然がなくなったとされている原因は、なんと魔力によるものだったのだ。
あの時はどこにも自然があり、水や草木が綺麗だった。
しかし大気中に魔力が放出され、それが吸収されることで自然が汚染され消滅してしまったのだ。
「そ、そんなこと……」
だが突然そんなことを言われたとしても、そうそうすぐには信じられない。
だが数人の人間達、特に指揮官達は康生の言葉にわずかの動揺を浮かべていた。
「あんた達はよく知っているはずだ。なにせあの魔力の塊を一時とはいえ使いこなしていたんだ」
そんな動揺している指揮官達に向かって康生はすぐに声をかける。
それにより、少しでも周りに信じてもらえると思ったのだろう。
実際、指揮官達、特に国王はあの塊について詳しく知っているので、すぐに康生の言っていることが嘘じゃないと気づいたのだろう。
先ほどから何も言わないのがその証拠だった。
「……まぁ、いいです。信じるかどうかは皆さんにお任せします。ですが、この塊を今後放置すると皆さんの国に多大な被害が及ぶので忠告だけはしておきますね」
そう、康生が言った瞬間。まるで示し合わせていたかのように魔力の塊がゆっくりと大きく拡大しながら動き出したのだった。
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