第494話 強力

「――報告します。たった今兵器が作動しました」

「なんだと?」

 指揮官の手によって兵器が作動した直後、その情報は王の元へと届けられる。

「まだ時間的には早いと思うが?」

 紅茶を机に置き、王は時間を確認する。

 当初、計画していた時間よりも早いことを確認し、眉を潜める。

「はい。報告によれば例の子に想像以上に手こずったようで、兵器を破壊される前に作動してしまったということで……」

 報告を聞き、王はぷるぷると腕を震わせる。

「ふざけるなっ!!」

 怒りに任せて思わず瓶を投げ捨ててしまう。

「す、すいませんっ……」

 自身のせいではないにしろ、報告を終えた兵士は王の怒りを沈めるためにひたすら頭を下げる。

 しかしそれでも怒りは収まらないのか、イライラした様子で立ち上がる。

「指揮官共を今すぐ呼んでこいっ!」

「は、はいっ!」

 王に言われて、兵士は慌てて馬車を出て行く。

「くそっ!余計なことをしよってっ!」

 兵士が出て行ってなお、まだイライラが収まらないのか立ち上がったまま、うろうろと動き回る。

「やはりあのガキは早めに始末しておかないといけないっ!くそっ!奴らめ、とんだ負の遺産を残しおってっ!」

 やり場のない怒りを拳に込めて壁を殴る。

 無造作に殴られた壁はわずかにへこむ。

「……ふぅ。だがいい」

 壁を殴ったことで少しは落ち着いたのか、王はゆっくりと息を吐く。

「兵器が作動してしまった以上もう我々の勝利は確実なのだ。後はあのガキをどうやって始末するかだが……」

「失礼します」

 そのタイミングで馬車の扉が開かれる。

「おう、よく来た。すでに状況は知っておるな?」

「はい。完全ではない状態で兵器が作動してしまったと、そういうことですね?」

「あぁ。そうだな。そのことについて今後の作戦の見直しをするぞ」

 そう言って王の召集で集まった指揮官達を馬車の中に招き入れる。

「兵器の充填はいくらほどなんだ?」

「はい。報告によれば70%ほどと」

「ほう、結構溜まっているな」

「なんでも、兵器が作動する直前に奴らから魔力を吸収していたようで」

「なるほどな」

 70%とは恐らく兵器に溜まっている魔力の割合だろう。

 康生達からの魔力供給があり、すでに兵器にはそれほどの魔力が溜まっていた。

「さらに兵器が作動するまで少しの時間があります。その間にも魔力供給があれば恐らく100%がでるかと」

「だが、兵器の元には奴らがいるのだろ?問題なく作動するのか?」

「はい大丈夫です。今、奴らの元には強力な力が立ちはだかっていることでしょうから」

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