第492話 無機質

「くそっ!どけよぉっ!」

 ザグ達が魔法の包囲網を突破しようと踏ん張る。

 しかしちょっとやそっとでは突破出来ない。特に魔法が使えないザグ達は困難を極めていた。

「くそっ!間に合えっ!」

 ザグ達が苦戦しているのを見ながら康生はすぐに風の力を使って全力で兵器の元まで移動しようとする。

「待てっ!貴様は私が相手をするっ!」

 動き出そうとする康生を見て、指揮官はすぐに前に立ちはだかる。

「今はお前の相手をしている場合じゃないんだよっ!」

 血反吐を吐きながら指揮官は康生に向かって剣を振り下ろしてくる。

「邪魔だっ!」

 だが指揮官は致命傷を負っている。

 その体で康生に攻撃を与えることは不可能に近かった。

「間に合えっ!」

 風の力を全力で使って康生は兵器の元まで移動する。

 魔法を使ってない以上、敵も康生の対処に戸惑っているようだった。

 その隙を見計らって空中から兵器の元へと一気に近づこうとする。

「死ねぇっ!」

「なっ!?」

 兵器の元へと移動しようとした康生の背後から突然、炎の塊が迫ってくる。

「くっ!」

 咄嗟に回避しながらも、それでも兵器を発動させまいと康生は移動しようとする。

「皆の者!奴を絶対に通すなっ!」

 指揮官の攻撃を受け、兵士達は一斉に空中へと攻撃を繰り出す。

「ちっ!」

 攻撃自体は回避することは容易い。

 しかし空中で回避することで風の力を余計に使ってしまう。

 少しでも節約して兵器の元へといかねばならない以上、こんなところでとどまっている場合ではない。

「康生っ!俺達に任せてお前はいけっ!」

「分かったっ!」

 最終手段として、ザグ達は一斉に魔法を展開させる。

 このまま兵器を発動させてしまったら不味いと判断したのだろう。

 とにかく兵器を阻止するため、魔力をとられてでも康生を行かせる選択をしたのだ。

「てめぇらは大人しくしとけやっ!」

 今まで我慢していた分の反動からか、ザグ達の魔法は自然と強力になっていく。

 流石にそれだけの魔法相手に敵兵はすぐに対処できるはずがなく、攻防が一気に逆転してしまう。

「間に合えぇっ!」

 その隙に康生は手をのばして兵器へ近づこうとする敵兵を視界に捉える。

 重力の力も合わさり、康生の体は斜めに向かって一気に急降下していく。

「いけっ!兵器を発動させろっ!」

 遠くから指揮官の怒鳴り声が聞こえる。

 その声に合わせて、敵兵も必死に兵器の方へと手を伸ばす。

「させないっ!」

 しかし康生の方がわずかに速かった。

 兵器へと手がかかる寸前に、康生は敵兵を止めることに成功する。

「よしっ!」

 無事に阻止することができ、康生はすぐにザグ達の方を振り替えり報告しようとする。

 だがその瞬間、


「はっはっはっ!これでお前達は終わりだっ!」


 指揮官の叫び声とともに、辺り一帯に無機質な機械音が鳴り響くのだった。

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