第490話 視線
「黙れっ!」
指揮官に煽りに煽られて康生の感情がとうとう爆発してしまう。
つい感情的になってしまい、冷静さが欠け必要以上に大袈裟な動きになる。
「落ち着け康生っ!」
康生の異変を察知してすぐにザグが駆けつける。
「こいつは俺がやるっ!」
「いいから一度落ち着けっ!」
ザグが間に割り込んで指揮官の相手をしようとするが、康生はすぐにザグをどけようと肩に手をかける。
今の康生を放っておいたら何をしでかすか分からない。それだけの力が康生にはある。
だからこそザグは必死になって止めようとする。
「おやおや?喧嘩ですかっ?」
二人の様子を見て指揮官はさらに微笑む。
そしてその隙を狙って火の魔法を飛ばす。
「うっせぇ!邪魔すんなっ!」
ザグは咄嗟に風の魔法を放って打ち消す。
「ふふっ、いただきましたよっ」
しかしその魔法はあっという間に吸い取られてしまう。
「ちっ!いちいちうざいなお前はっ!」
指揮官の不気味な表情にザグも心なしか感情を荒立たせる。
「だからこいつは俺がやるって言ってるだろっ!」
攻撃を仕掛けてくる指揮官に向かって康生は対抗しようと身を乗り出す。
「だから落ち付けって言ってるだろっ!冷静になれ!」
「落ち着いてるよ!でも!そいつは両親をバカにした!なのに黙ってられるかよっ!」
「あぁもう!それは分かってるっ!むかつくのは分かるが今は冷静になれ!今は目の前の戦いに集中しろ!あの兵器のことだけを考えろっ!」
あまりにも暴れようとしている康生を見てザグは一発叩く。
それで少しは落ち着いたのか、康生の動きが止まる。
「……分かってる。とにかく魔法は使わなければいいんだろ?」
「あぁ、そしてあの兵器を止める方法を考えるんだよ」
流石に少しは冷静さを取り戻したのか、ザグの話をゆっくりと落ち着いて聞く。
「分かってる。だからまずはあいつのことは任せてくれ。必ず兵器の情報を引き出してやる」
暴れはしないものの、指揮官に殺意とも思えるような鋭い視線を向ける。
「分かってればいいんだよっ。くれぐれも私情ははさみすぎるなよ。この戦いはお前にかかってるんだ。だからしっかりしてくれよっ」
「……分かってる」
ザグに諭され、康生は一度深呼吸して心を落ち着かせる。
「ったく。しっかりしろよ。お前が俺達のリーダーなんだからよっ。英雄って呼ばれるぐらいにはそれに見合う男になれっ」
「努力はするよ」
完全にいつもの調子に戻った康生は再び指揮官に視線を向ける。
「どうしました?もう終わりですか?あなたの力はその程度なのですか?」
指揮官はそんな康生を見て、さらに煽ってくる。
「待ってろ。今お前のその減らず口を閉じさせてやるよっ」
康生は鋭い視線を向けながら康生は指揮官に突っ込んでいった。
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